アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
  人権・平和・民主主義・生き方を考える。
   

「コロナ禍」の今こそ差別禁止法を

2020年06月04日 | ヘイトスピーチ・ヘイトクライム

          
 新型コロナウイルスは、私たちに多くのことを気付かせ、要求しています。その1つは、「差別」に対する感覚の覚醒と、その根絶へ向けた取り組みの強化です。アメリカの警察官による黒人男性殺害事件に端を発した現在の事態を、けっして座視することはできません。

 「コロナ」があぶり出したとりわけ深刻な日本社会の差別は、外国人に対するものです。

 「新型コロナウイルス感染症による混乱の中、インターネット上で芸能人(志村けんさん―引用者)の死去を中国人のせいにしたり、朝鮮学校へのマスク配布報道(3月16日のブログ参照。写真左は差別に抗議する父母たち―同)に『出て行け』というコメントが付いたりと、外国人差別が目立っている」(6月1日付中国新聞)

 4年前(2016年)の6月3日、「ヘイトスピーチ解消法」(「本邦以外出身者の対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)が施行されました。日本初の反人種差別法といえるものですが、当初から不十分性が指摘されていました。それは、同法が理念法であり、実効性が乏しいことです。その弱点がこの4年間ではっきりしてきました。

「解消法」施行後もヘイトスピーチ事件はあとをたたず、訴訟も各地で起こっています。

 たとえば、京都朝鮮第一初級学校に対する在特会らによる襲撃事件(2019年12月4日)の被告の1人である西村斉が再び同校(移転)前の公園でヘイトスピーチを行った事件。京都地裁は西村に「名誉毀損・50万円の罰金」判決を下しました(2019年11月29日)。

 また川崎市では、ツイッターで1年半以上ヘイトスピーチを行った者に対し、川崎簡裁が「神奈川県迷惑防止条例違反」で「罰金30万円の略式命令」を出しました(2019年12月27日)

 これらのヘイト事件が「名誉毀損罪」で起訴されるようになったことは一定の前進といえますが、問題点も表面化させました。

 「いずれの判決においても、財産刑の域を出ていないことからして、被害の本質を未だ十分に理解しているとは言い難い。現状のままでは、ヘイトスピーチしても『お金さえ払えば済む』という誤った認識を生じさせかねない。とくに略式命令に至っては、交通事犯と同等の違法性しかないと理解されかねない。

 ヘイトスピーチの本質は、社会的評価としての名誉の前提となる人間であることの保障・人間の尊厳に対する攻撃であり、その否定にあることに着目しなければならない。

 未だ日本の裁判では、人間の中核であるアイデンティティにターゲットを絞って攻撃するという卑劣な差別行為の重大性と、それによる被害者と同じ属性を有する人々に対する社会からの排除を促進させる危険性を看過している」(龍谷大学・金尚均氏、『日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書2020年版』(外国人人権法連絡会編集・発行、2020年3月)

 したがって、「解消法」の弱点・限界性を克服するためには、「人種差別撤廃基本法および差別禁止法など国際人権基準に合致する『差別を禁止し、終了させる』法整備が急務」(師岡康子弁護士、同上「白書」)なのです。

 国連で「あらゆる形態の人種差別撤廃条約」が採択されたのが1965年。日本は1995年12月15日にようやくこれに加入しましたが、それからすでに24年半が経過しています。

 金氏や師岡氏の指摘は、コロナ禍以前のものですが、「コロナ後」の新たな政治・社会のあり方として、その重要性・緊急性はますます大きくなっていると言えるでしょう。

 


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