アリの一言 

天皇制、朝鮮半島、沖縄の現実と歴史などから、
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「海兵隊の撤退」に背を向ける翁長知事

2016年06月21日 | 沖縄・翁長知事

      

 19日の「県民大会」の大きな特徴は、タイトルと大会決議に「在沖米海兵隊の撤退」が入ったことです。

 在沖米軍の中で、海兵隊は兵力で6割、面積で7割を占めますが、これをすべて撤退させたとしても、嘉手納空軍基地はじめ重要な米軍基地は沖縄に残ります。「海兵隊の撤退」が「全基地撤去」の代わりにならないことは明らかです。

 同時にしかし、「海兵隊撤退」を「全基地撤去」の中の正しく位置付ければ、当面の措置として大きな意味を持つことも確かです。

 ところが、「県民大会」が決議した「海兵隊撤退」は、その意味が不明確であり、今後のたたかいの具体的な目標にはなりえていません。その状況をつくりだした張本人が、翁長雄志知事です。

 大会名や大会決議の「海兵隊撤退」と聞けば、おそらくほとんどの人が「海兵隊を沖縄から撤退させる」、すなわち「海兵隊の全面撤退」だと思うでしょう。それでこそ「海兵隊撤退」が意味を持ちます。本土のメディアもすべて「全面撤退」のつもりで書いているようです。
 ところが、翁長氏はそうではありません。県民大会への参加を表明した16日の記者会見で、翁長氏はこう述べました。

 「『海兵隊の撤退』という言葉もよく保守の方も使ったりする。『海兵隊の撤退』は『全面撤退』ではないと思う。整理縮小、みんな入っていると思う」(17日付琉球新報)

 そして大会当日の「あいさつ」で、翁長氏はこう述べました。

 「海兵隊の撤退・削減を含む基地の整理縮小…に取り組んでいく不退転の決意をここに表明し、あいさつとする」

 「海兵隊の撤退」と言い切らず、あえて「撤退・削減」としたのです。

 さらに大会後の記者会見で、「知事として(海兵隊)全面撤退を求めるのではないのか」との質問に、翁長氏は、「私の立場は…普天間基地の県外移設、新辺野古基地は造らせない、オスプレイの配備撤回、以上だ」(20日付琉球新報)と答え、「海兵隊撤退」は「私の立場」ではないとしたのです。

 一連の発言で明らかなように、翁長氏は「海兵隊の撤退」、ましてや「全面撤退」には賛成ではないのです。翁長氏にとって「撤退」は「整理縮小」を含み、これまで「保守」も言っていた「削減」を意味するにすぎないのです。

 米国防総省筋は大会決議の「在沖海兵隊の撤退及び米軍基地の大幅な整理・縮小」について、「具体的に何を指すのか。(日米両政府の)現行計画のようにも受け取れる」(21日付沖縄タイムス)と述べていますが、まさに翁長氏の立場を見透かした発言と言えるでしょう。

 「今回『海兵隊の撤退』という踏み込んだ要求を大会決議に加えたのは、県民の怒りが限界を超え『妥協できない』という声が高まったから」(20日付沖縄タイムス社説)です。その「海兵隊の撤退」に背を向け、従来の枠内(「日米両政府の現行計画」内)の「削減」にとどまる翁長氏は、「限界を超えた県民の怒り」を代表するどころか、大会決議の意味を薄め、県民の怒りに冷水をかけるものと言わねばなりません。

 また、翁長氏は普天間基地の「県外移設」を「大会あいさつ」でも記者会見でも繰り返していますが、これは何度も言うように、「オール沖縄」の「建白書」(2013年1月28日)の「県内移設断念」とは違う勝手な主張です。共産党などが主張する「普天間基地の無条件撤去」にも反します。この違いはわめて重要で、けっして見過ごすことはできません。


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