日々遊行

天と地の間のどこかで美と感じたもの、記憶に残したいものを書いています

ベルギーの幻想がBunkamuraに集う

2009-10-20 | 絵画

19世紀末、ベルギーの画家たちは内なる夢想を画布に描き、不滅の美を永遠のものした。
世紀末の甘美な闇、幻影の彼方にたたずむ女性、いずことも知れぬ桃源郷、そこにいる女性たちは幻でありながら猟奇的、観念的、運命的である。                             

Bergitirasi

Bunkamuraのチラシにはポール・デルヴォーの大作「海は近い」がプリントされている。
神殿、室内、月、外灯、木立ちを配した中に女性たちはデルヴォー自身の神話から登場する。
室内と室外は一体となり、ありえない不思議な風景が月の下に存在する。

そしてデルヴォーの連作「鏡の国」はクロード・スパークの小説に挿絵として描かれたエッチング。
死んだ妻を剥製にする男の悲劇を扱った衝撃的な内容を緻密に描いていた。



Beruginunku

ウィリアム・ドゥグーヴ=ド=ヌンク「夜の中庭 あるいは陰謀」。黒と青が溶けるような闇。老婆三人の黒のマントが陰謀めいた暗さをより深める。  「青は信仰の対象にして天上の色であり」の言葉が印象深い。



Bergikunoppuhu


フェルナン・クノップフ「女性習作」は淡い光を内包した究極の幻想を感じさせ、
今回楽しみにしていた画家である。
クノップフは常に端正な装いをしていたことでも知られるが、
外界と遮断して生きた彼自身の中で、理想とする女性への美学は幻想の世界に淡く存在する。
しかしそこには魔術的空気が秘そみ神秘の空気が流れている。




「ブルージュにて 聖ヨハネ施療院」は運河に建物が映っている絵であるが水は暗い。
動かぬ水面は黒い鏡のようであった。

フェルシアン・ロップスは冒涜の夢想を描き、不安でありながら魂の結合を閉じ込める。
ジェームス・アンソール「薔薇」、豊かに咲きそろいすべてが溶けるように濃密な絵。
ルネ・マグリットはモチーフを象徴的に配し、機械仕掛けの風景を思わせた。
「9月16日」は黒い木に細い三日月を描き、シンプルな構図でありながら非現実へと誘う。

    姫路市立美術館から集った「ベルギー幻想美術館」は10月25日まで。