森見登美彦さん、『夜は短し歩けよ乙女』

 『夜は短し歩けよ乙女』、森見登美彦を読みました。

 “「出版された本は人に買われる。やがて手放され、次なる人の手に渡る時に、本はふたたび生きることになる。本はそうやって幾度でも蘇り、人と人をつないでいく。だからこそ時に残酷に、神は古本を世に解き放つ。不心得の蒐集家たちは畏れるがよい!」” 89頁 

 まず言いたい。おともだちパンチにロマンチック・エンジンですよ! 兎にも角にも愉快痛快に楽しいですよ!  
 ふふふ、とても良かったです~この作品。大変オモチロウ(借用)ございました。ロマンチックとニヤニヤ笑いが、止まりませんがな…。

 京都で繰り広げられる愉快なこの物語は、二人の主人公による一人称で交互に語られていきます。かたや片思い中の大学生“先輩”、かたやその想われ人の黒髪の乙女です。この二人を始めとして、続々と現れる奇人変人な登場人物たちがすこぶる魅力的なのが、ハチャメチャな楽しさをいっそう際立たせます。 
 そして舞台となる普段着姿の京都が素敵です。観光客側に向けた顔とは一味も二味も違う、古都ならではの懐の深さと妖しさに迷い込んでしまいそう…。例えば第一章の中に立ち現れてくるのは、なんて魅惑に満ち満ちた先斗町の夜でしょうか。うっとり…。こんな京都に行きたくなります。

 流石は日本ファンタジーノベル大賞の作家さんだな~と納得してしまう、めくるめくファンタスティックな仕掛けもテンコ盛りに溢れています。よくある爽やかな青春もの恋愛ものとは一線を画すといいますか、はみ出しているといいますか。
 ず~っと笑いながら読んでいたのに、ラストではじんわりとしていました。オモチロ可笑しくて、けれどもちょっぴりキュン…な作品でありますよ。
 “本が人と人をつないでいく”と言っているところが、何だかいいな~と思ったのです。
 (2007.1.28)

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