6月24日

 金井美恵子『噂の娘』を再読した。
 
 美容院を経営する母親の友人(マダム)宅に預けられた少女が、幼い弟と過ごす夏の日々を描く。それは昭和の雑多な匂いとキッチュな色彩に溢れた、曖昧に錯綜する時間と斑な記憶の中。
 不確かな噂話(情事と凶事の変奏みたいな)ばかりがゆき交う大人たちの空間の隅で、ぼんやりと聞いている内向的な少女の心許なさや不安がふと零れてくるように伝わる。時折それらの場面を俯瞰しながら語る「私」は何処にいるのだろう…と思ったり。

 主人公の読んでいる『秘密の花園』が改変されて挿入される件もお気に入り(詩人になることを夢見たことのある若い感じやすい士官って誰…とか)。
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