キャサリン・M・ヴァレンテ、『孤児の物語 ―夜の庭園にて』

 『孤児の物語 ―夜の庭園にて』の感想を少しばかり。
 
 “その詩歌の数は膨大にして、細密に書きこまれたゆえ、わたしの瞼を取り巻くひとつづきの黒玉色の流れのように見えた。だがこれは川と沼地の言葉、湖と風の言葉。” 7頁 
 
 素晴らしい読み応えだった。途方もない世界を駆けめぐり、時には悪夢めく異様な眺めに目を疑った…ので、大好きだ。最後には深々と溜め息を吐いて、掻き抱きたくなる物語だった。次から次へと語り手を変えては、更にどこまでも奥の奥の方へ、めくるめく新たな驚異に捕り込まれる至福の読み心地。耽溺した。
 訳者の後書きにもあるが、特異な創世神話から始まって各々のモチーフに至るまで、まず既視感の殆どないことが、この作品の魅力でもあり凄まじいところでもあった。突然始まるグロテスクな展開に愕然としたり、何故ここでそんな発想が…と唖然としたり。でもその、既知の道理で進んでいかない感じが、一度知ったら止められない味わいだ。無機的な繋がりにひやりとさせられ、鮮やかに裏切られる快感にしびれた。

 “王子なんてものをあてにするんじゃない”と、魔女は言い放つ。女童から老婆、聖女に女海賊に女予言者…と、出てくる女たちが力強いのも印象的だった。
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ジョイス・キャロル・オーツ、『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』

 『とうもろこしの乙女、あるいは七つの悪夢』の感想を少しばかり。

 “なぜ、どうしてって思ってるだろうから教えてやる。髪のせいだよ。” 5頁

 後戻りの出来ない場所に居すくまり、慄き、刺し止められる読み心地は格別だった。七つの悪夢に描き出された、激しい憎悪と狂気の渦。そしてそれらに覆い尽くされた何か…について考え始めると、底知れぬ闇を覗くようだ。どこかで、歪み果てた愛の残骸が瘴気を放っている…と、そんなイメージにも捕らわれた。愛が葬られた土壌には、憎しみの毒の根が蔓延る如く。
 とりわけ、中篇の「とうもろこしの乙女 ある愛の物語」では、彼女にとって何故彼女でなければならなかったのか…という疑問の周囲をぐるぐるしていると、ドツボにはまる。本当はジュードは、マリッサになりたかったのかも知れない(“あの子の髪!”)。絶望の淵で、陽を浴びて輝く金色の髪に狂おしく見惚れつつ、己は真っ黒に染まりながら…。この作品は、“とうもろこしの乙女”マリッサの母親の心情を際立たせる件も素晴らしかった。俄かには理解し難い状況の中、苛まれ続けるリーアの悲痛さに息が詰まった。

 「タマゴテングタケ」は、ポオの作品が出てくるところで、おおおっとなったり。他、滅法面白かったのが「頭の穴」。だだ漏れる狂気と、スプラッタな展開にのけ反った。

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2月25日(月)のつぶやき(読んだ本、『幻想小説神髄』)

@rinakko 08:13
【世界幻想文学大全3 幻想小説神髄 (ちくま文庫)】を読んだ本に追加

 再読も込みで、こちらも大満足。好きな作品ばかりだけれど、とりわけ読めて嬉しかったのは「黄金宝壺」や「ヴェラ」「バブルクンドの崩壊」。
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2月24日(日)のつぶやき

@rinakko 12:44
昼ビール部です。近所のお店(フロイラインにて)。


 前菜。


 だーさんの、“魚介のトマト”。


 私の、“バジリコと白いんげんのジェノベーゼ”。

 ご馳走様でした♪
 

@rinakko 18:24
「わたしの物語」、推し推しww
@rinakko 18:42
めも。異境。
@rinakko 19:28
伊勢うどんは、吃驚するくらい麺がやわい。
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2月23日(土)のつぶやき

@rinakko 09:06
おはよございまず。これからお風呂~♪

@rinakko 09:14
前々から読みたかった「黄金宝壺」を、『幻想小説神髄』で読めたのがとても嬉しかった。本当に、素敵な訳だった。今日は「白魔」。
@rinakko 09:12
話自体が大好きでした。>黄金宝壺

@rinakko 11:15
もういいよ冬。もういいって。寒いのはよくわかった…。

@rinakko 13:04
ビール餃子にゃう。今日は「山頭火」。
@rinakko 13:22
ここのしおらーめんは、マイルドでまいるぞ…。
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2月22日(金)のつぶやき

@rinakko 16:57
【ペルシアの四つの物語】を読んだ本に追加

 ペルシア文学の雰囲気を、少しずつ摘まんで味わう感じ。『七王妃物語』はもっと読みたいなぁ。『王書』の続きも気になる。あと、ペルシア・ミニアチュアを楽しめるのがよかった。
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2月21日(木)のつぶやき

@rinakko 09:10
おはよございまず。お次の本に迷ってる朝。
@rinakko 09:19
@seicom この本、どうしても欲しくてポイントたくさん使いました(笑)。そうそう挿絵も素敵で、読むのが楽しみです。これでⅠだから先が大変ですが、面白そうですよね!
@rinakko 09:28
訳者あとがきによると、ジョイス・キャロル・オーツはアンソロジーの常連。『とうもろこしの乙女・・』は初めて読む作品ばかりだったけれど、私は以前読んだ「ヤギ少女観察記録」の気持ち悪さが鮮烈で忘れられない。凄く短い作品で、『クリス・ボルディック選 ゴシック短編小説集』に収められている。
@rinakko 10:20
@seicom はい、見てすぐに、私の好みっぽい!と思いました^^ 心配ですねぇ、ほんとに。出版されてもすぐに絶…とか、あり得そうで怖い(笑)。
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2月19日(火)のつぶやき

@rinakko 09:31
おはよございまず。儚げな雪片が舞っている。ほんと、北陸の雪とは全然違うわー。

@rinakko 09:34
辛かった気圧病みの症状は、年の暮れから整骨院に通い出して改善してきたけれど、今日は流石に頭いたた…。

@rinakko 20:09
見守り過ぎた豆苗、明日こそ再収穫する。
@rinakko 20:11
@shiki_soleil プルースト本、どちらも素敵そう~♪ 追わせていただきますわっ。
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トマス・ピンチョン、『V.』

 『V.』の感想を少しばかり。

 “「V.の背後と内奥には、人の想像を超えたものが潜んでいる。V.とは誰か、という問題ではない。” 77頁(上巻)

 いやはや面白かった! ピンチョンだからそこそこ構えてはいたものの、よもやここまで詰め込み過多とは思うめえ…。と言いつつ、わくわくとそれを楽しめてしまうのだから本当に凄い。重みと軽みの双方を味わえる作風と言い、誰と誰がいつどこで出会いまた別れ…と、錯綜し合う線を繋いで見えてくる模様のスケールと言い、ただもう圧倒された。

 二つの大戦を跨ぐ歴史のうねりの中、“ただ居合わせているV.”の造形はとても興味深い(命なき物体を取り込むオブセッションに、ぞくり)。そして、全てが収斂していくマルタという場の持つ、磁界のような暗い力にも、強く惹きつけられた。
 “木偶の不器男”プロフェイン側の物語の滑稽さ、螺子が巻き切れたヤンデルレンの空騒ぎ。ステンシルの執念…。私がとりわけ忘れがたいのは、「モンダウゲンの物語」や恋するV.の章だ。「モンダウゲンの物語」に立ちこめる息苦しい不穏さと、共振し合うV.とメラニーから伝わる鏡張りの緊張感には、こちらの神経までびりびりと逆立つようですっかり捕り込まれた。
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2月16日(土)のつぶやき(石橋の「芳月」)

@rinakko 08:38
おはよございまず。外は寒そうだけれど空はからりと晴れ。さ、これからお風呂~♪ 風呂供本は『幻想小説神髄』よ。


@rinakko 13:23
石橋の「芳月」にて。牡蠣バター焼。
 
@rinakko 13:25
寒い日のお好み焼きやさんは、じんわり。
@rinakko 13:58
ミックス焼きうどん。ねぎ焼とビールでお腹いぱい…。



@rinakko 14:00
後ろのカップルの女の子、アニメ声の度合いが凄くて何回もぎくっとする。
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