パピとママ映画のblog

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アイアン・スカイ ★★★★

2012年10月26日 | アクション映画ーア行
月面に逃れていたナチス・ドイツの残党による地球侵略という荒唐無稽なアイデアを映像化したSFコメディ。出演は「青い棘」のユリア・ディーツェ、「ヒトラー 最期の12日間」のゲッツ・オットー。製作費のうち約1億円を一般のファンからのカンパで集め、予告編再生回数が4カ月で1000万回を記録するなど話題を呼んだ。

あらすじ:2018年。アポロ17号以来となる有人月面着陸プロジェクトによって月に送り込まれた黒人ファッションモデルのジェームズ・ワシントン(クリストファー・カービー)は、第二次世界大戦の敗戦からこの地に逃れてきたナチス・ドイツの残党たちによって拉致されてしまう。
新総統コーツフライシュ(ウド・キア)のもと、地球帰還を目指していたナチスは、ワシントンが持っていたスマートフォンに衝撃を受け、地球潜入作戦を計画。彼らの技術を超越するスマホの演算能力があれば、最終兵器“神々の黄昏”号を完成させることができるのだ。
かくして、ワシントンを案内役に、野心家の将校クラウス・アドラー(ゲッツ・オットー)、彼のフィアンセで美貌の地球学者レナーテ・リヒター(ユリア・ディーツェ)が円盤に乗って月を出発。だが、米国との同盟によって総統の座を奪う野心を抱いたクラウスは、ニューヨークに降り立つと、大統領直属の広報官ヴィヴィアン・ワグナー(ペータ・サージェント)を誘拐し、大統領との面会を要求。
クラウスのカリスマ性とレナーテの理想主義が大衆の心を掴むと確信したヴィヴィアンにより、2人はたちまち大統領の敏腕パブリシストとして辣腕を振るうようになる……。数ヵ月後、ホームレスとなったワシントンに再会したレナーテは、彼の説得によってナチズムの危険性とクラウスの野望に気付く。
その頃、クラウスの裏切りを知ったコーツフライシュ総統は、宇宙艦隊を引き連れて地球攻撃に向かっていた。大統領(ステファニー・ポール)によってアメリカ宇宙軍指揮官に任命されたヴィヴィアンは、密かに建造していた宇宙戦艦ジョージ・W・ブッシュ号をナチス艦隊に向けて発進させる。
果たして宇宙の覇権を握るのは、クラウスか、コーツフライシュか、米国か?そしてほんのり恋模様のレナーテとワシントンは、動き出した“神々の黄昏”号を破壊して世界を救うことができるのか……?(作品資料より)

<感想>アブないSF戦争コメディ映画。ナチス帝国は永遠不滅です!・・・月の裏側にはナチスドイツの秘密基地があり、地球への逆襲の機会を狙っている。という都市伝説級のトンデモSF映画なんですから。
ミリタリー&制服フェチに絶大なる人気を誇るナチもの。「ヒトラーは生きていた」などの都市伝説信者もワクワクする内容です。月に移住したナチが作る宇宙船がとてもレトロで感涙!ハリウッド製のSF戦争映画と思いきや、実はフィンランド生まれの社会風刺たっぷりなコメディ作品なのだ。

とにかく、ナチスが月で基地を作っているんだが、美術想像力が結局今ふうのCG映画の範囲を出ていないのが不満なのだ。月の基地を上から見ると鍵十字型で、つまりヒトラーってもっと凄い奴だったんじゃないか、という飛んでもオタ共の妄想を満足させているおもしろ映画。
しかしである、馬鹿映画の体をしつつも高度な政治批判映画になっているところ。大国アメリカのおバカ政治をあげつらうのも見所の一つで、選挙を控えた米国大統領が月面ナチスとの戦争を利用して支持率アップを図るなど、ブッシュ政権以降の米国社会を強烈に皮肉っているのだ。

女大統領は、反オバマの副大統領候補サラ・ペイリンがモデルで、対策会議で大暴れするところも笑うポイントだが、アメリカの政治状況が分からないと笑えないのだ。やっぱ大統領と言うと、一般的にまだオバマじゃないですかね。
アフリカ系黒人を月に送って、そいつが白人にされちゃうとこなんか、人種差別のバカバカしさを笑うとこなんだが、黒人を白人に変身させる肝心のシーンが無いので、頭の悪い人には分からない。つまり、本作はお馬鹿映画の体をしつつも高度な政治批判映画になっているのである。
ビジュアルの壮大さはもちろん、こういう映画にネットだけで一般人から、約一億円ものカンパがあったということが、私には信じられない。その甲斐があって、ナチスの誇る宇宙飛行船ヒンデンブルグ号と、アメリカの宇宙戦艦ブッシュ号が激突する戦闘シーンの迫力たるや、興奮してしまった。
それに英語の映画ということが大きいかも。映画というものはネタがヤバければヤバイほど当る可能性が高い。残酷描写抜きでそれをやるのは、本作のような国家や政治をネタに特化したものになるわけだ。きっと、ヒトラーがフィーチャーされなかった理由もあるだろうし、もっと面白かった部分はカットされたのだろう。
この作品の監督ティモ・ヴオレンソラは、フィンランドのサウナに入っている時に、本作を思いついたと言うが、最初の構想はおそらく映画には到底できない爆笑の内容であったと思う。
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