パピとママ映画のblog

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海にかかる霧 ★★★★

2015年04月24日 | アクション映画ーア行
『殺人の追憶』の脚本を担当したシム・ソンボが初監督を務め、韓国の人気男性グループJYJのパク・ユチョンらが出演を果たしたサスペンス。2001年に発生した「テチャン号事件」を基にした舞台「海霧(ヘム)」を映画化し、中国人密航に端を発するドラマを描写する。脚本と製作を務めるのは、『母なる証明』『スノーピアサー』などのポン・ジュノ。荒々しい海上で船の上に取り残された人々を襲う予想外の事態に言葉を失う。

<感想>霧に包まれた海上で起きた悲劇と、それに直面した船員たちの過酷な運命を描いたサスペンスである。麗水の港を拠点にアンコウの網漁を営むカン船長のキム・ユンソクの貫録に痺れます。その船長に服従的な甲板長のホヨンを演じるキム・サンホ、心優しい機関長のワノのムン・ソングンら個性豊かな面々の中に、純朴な青年のドンシクを演じるのは、JYJのパク・ユチョンで、一番下っ端の見習い乗組員である。
くせもの俳優揃いの濃厚なる力作。80年代までの日本映画を彷彿とさせる熱い切なさと狂気。ロケセットの丁寧な造作などなどに圧倒させられます。
だが、不況に加え不漁が続き、彼らの生活は破綻寸前。腹をくくった船長のカンは、中国人密航の違法な仕事を請け合う。
ご注意下さい:ここからがネタ晴らしとなっています。

嵐の夜、海上にいる中国船から数十人の密航者が引き渡される。その中のホンメ、唯一のヒロインであるハン・イェリに、心惹かれるドンシク。

寒い中、中国船からチョンジン号へ移るさいに、恐怖のあまりに海へ落ちてしまい、ドンシクが海へ飛び込んで助け上げたのだ。それでも、甲板の上で、カップラーメンを振る舞うチョンジン号の船員たち。
温かいお湯のカップラーメンをすする密航者たち。30人はいると思った。女性は若い女のホンメと中年の女の2人だけ。

翌朝のこと、監視船が近づいてきたため、密航者全員を魚艙(魚を冷凍しておく貯蔵庫)に押し込めた乗組員たち。監視員が舟を調べるも、船長が酒と賄賂を渡して追っ払うのだが、その時、船の魚艙から叩く物音が聞こえた。

やがて、監視員も去り、魚艙を開けると、密航者のみんなは息絶えていたのである。冷凍の有毒ガスが漏れ出して窒息してしまったのだ。
乗組員たちは、カン船長の指図で、証拠を消すために死体を切り刻み海へと投げ捨てる。その余りの残酷さに機関長のワノが、亡くなった密航者の霊に話かけて弔うような、ブツブツと言いながら燃やした財布の中から写真とかを出しては涙を流す。

それを見たカン船長は、自分がやってしまったことの口封じとして機関長の頭を殴り殺してしまい、海へ投げ捨てたのである。そのことを、機関室の中で見ていたドンシクが、船長に殴りかかるも唯一生き残ったホンメのことが見つかってしまう。

他の乗組員たちも大騒ぎになり、ホンメを自分の女にしようと喧嘩が始まる。彼女を守ろうとするドンシクなのだが、狂気に支配された乗組員たちが襲い掛かってくるのだ。それに、海は深い霧に覆われて、回りが全然見えない。
大型のタンカーらしき舟が微かに見えるも、その船が衝突したのか大きく船は揺れて、機関室に穴が開いたのか海水が機関室まで入り込んでくる。それに、甲板にも海水が押し寄せて、乗組員たちは全員海へ投げ出されてしまう。

カン船長の鬼のような形相に驚き、ホンメとドンシクは手を繋いで海へ飛び込み助かる。船長は舟を守りたいのだ、だから錨を舟から落とそうと自分の足がロープに絡まって錨と一緒に海へと落ちてゆく。
内容が、密航者の大量死という凄惨な出来事を前にして、なお主人公のドンシクを演じたパク・ユチョンが無垢でいられたとすれば、彼を演じたのがアイドルだからだと思われてならない。少女の救出という英雄譚に回収することでしか幕を閉じられなかったのは、この作品の限界かもしれません。ヒットメーカーが商業映画を意識しすぎた、ラストシークエンスは蛇足ですよね。

作者が、実話であるこの事件に真正面から向き合っていないのが残念。ですが、洋上を舞台にした、骨太な密室劇に仕立てている濃霧の見事な表現と、船長のキム・ユンソクの強固なまでの存在感で、結末まで見せ切っているのもいい。これほど徹底した過激な描写はなく、韓国映画ならではの仕上がりになっていると思います。
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