パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

王妃の館 ★★★.5

2015年04月28日 | アクション映画ーア行
直木賞作家・浅田次郎の長編小説を、テレビドラマ「相棒」シリーズなどの橋本一監督が映画化した笑いと涙あふれる人間ドラマ。「王妃の館」と呼ばれるパリでも屈指の伝統と格式を誇る超高級ホテルの知名度を利用して、倒産しそうな旅行会社が企画したパリ旅行に参加したツアー客たちが繰り広げる騒動を描く。それぞれに問題を抱える一筋縄ではいかないツアー参加者の中でもとりわけ個性の強い作家・北白川右京を、『相棒』シリーズの杉下右京役でおなじみの水谷豊が演じる。

<感想>浅田次郎原作の映画化である本作は、日本から花の都パリに出かけた2組のツアー客たちが繰り広げるシチュエーションコメディである。倒産寸前の旅行会社が主催したのは、ルイ王朝時代から続く最高にゴージャスな歴史的ホテル「シャトー・ドゥ・ラレーヌ」に、日本から2組のツアーが訪れる。
ひと組は、売れっ子小説家・北白川右京が参加する、セレブのみ参加できる御一人様の代金200万円の超豪華ツアー。そして、もうひと組は、29万8000円の超格安ツアーだった。
ワケありツアー客の10人と、一人の天才作家。これは、倒産寸前の日本の旅行会社が企んだ、まさかの「ツアー二重売り」ホテルまでがグルになって、巧みに滞在、観光時間をずらすことで、おなじ部屋を共有するという、とんでもない代物だったのです。

観客は、それぞれに問題を抱える2組のツアー客10人と、ひとりのセレブな小説家が繰り広げるスリリングな駆け引きにドキドキしながら、同時に、天才ゆえの気まぐれと自由奔放さで、作家が生み出すルイ王朝時代の物語の世界をスクリーンで目撃するのであります。
圧巻だったのは、ヴェルサイユ宮殿での撮影でしょうか、なんと1日貸切で、朝イチで宮殿いりしたキャストにスタッフたちのテンションは上がりっぱなし状態だったそうです。
撮影セッティング中、通常だと歩くのもままならないほど観光客で込み合った宮殿内を、悠悠と歩き回るキャストの姿があちらこちらに、右京さんに至っては、早い段階からすっかり宮殿の一部になったように溶け込んで、「ここに住んでいるような気がして来た」なんて言う水谷さん。
それに、本人はいたって真面目なのに、おかっぱ頭で前髪にメッシュが入った知的な大人の雰囲気。そして、ブルーのジャケットにベスト、鮮やかなカラータイツ姿に半ズボンという姿と、たたずまいだけで笑いを誘う主人公の右京さん。その他にも、女性のスーツのようなビビットな花柄の上着にシャツの取り合わせとか、着替えが何回もするんですから。でも、お似合いでした。
ホテルの部屋では、ゲロゲロとリアルなカエルの鳴きマネを披露するシーンがあるが、大のカエルフリークという設定で、机の上にカエルの置物があり、愛用の万年筆からペーパーウェイトまで、全て可愛らしいカエルたちが並んでいる。小説のアイデアが湧くと、コップの水を一気飲みする癖がある。だからというわけでもないが、部屋の絵画を取り払い、そこへ持参してきた滝の絵が描いてある掛け軸をかけて、水の繋がりがあるというふうに。それに、大の甘党で、スイーツが毎回出てくるのが美味しそうです。

谷豊さん演じる右京さんを筆頭に、絵に描いたような成金カップルで、派手派手な目の覚めるような全身真っ赤なコートに、良く見るとパンツには金の龍の刺繍が踊るという緒形直人、そんな貫一に負けず劣らず派手な服装での、恋人のミチルには安達祐美が、とはいえレトロな60年代ふうのファッションのような感じがした。それに、失恋旅行OLの吹石一恵さんたちが200万円コースでリッチなツアーの羨ましいことといったらない。
それでも、29万8000円の超格安ツアーコースには、堅物警察官(青木崇高)とショーパブの女装家、クレヨンの中村倫也、流暢なフランス語を話す謎の老紳士に石橋蓮司。右京さんを追って、出版社の社員2名などなど、ひと癖もふた癖もある面々が登場。もちろん、たっぷり笑った後には、泣けて心も温まるという嬉しい展開が待っている。

舞台やミュージカルが好きだと言う観客にも、のめり込める要素が本作には詰まっているんですから。パリを訪れたツアー客の姿が描かれつつも、並行して、右京の描く小説の世界、17世紀の世界なんです。右京が妄想して小説を書くシーンと、現代がドラマチックなリンクをするという。

右京が執筆している中世フランスを舞台にした物語=ルイ14世と、離れて暮らすことになった愛する女性と、息子との壮大な絆の物語が描かれているのだ。こちらのパートはまさに「レ・ミゼラブル」のような映画の世界。安田成美、石丸幹二、山田瑠璃の舞台経験者が顔を揃えて、舞台やミュージカル好きにはたまらない華やかさたっぷりの、堂々たる演技を披露している。ちょっと褒めすぎかも。
主人公たちが優雅に朝食を食べるのが、このセーヌ川でのクルーズ。水谷と田中麗奈のフランス語の長ゼリフにも注目あれ。そして、マルシェ・ベルネゾン。曲がりくねった裏路地が雰囲気たっぷりな伝統あふれるのみの市。本作は“裏パリ”の魅力もしっかりと堪能できます。
ルーブル美術館では、ダ・ビンチの「モナ・リザ」やミロのヴィーナスが所蔵される全世界憧れの美術館。来場者は年間800万人だというから凄い。

登場人物の全員が集合するシーンの「ベルサイユ宮殿」。煌びやかな鏡だらけの回廊とシャンデリアのまばゆいばかりの光。普段なら絶対に会ってはならない両ツアーたちが、一堂に会する貴重なシーン。上の写真は、私が10年前にフランス旅行してヴェルサイユ宮殿で撮影したものです。

彼らは鉢合わせを防ぐために、ストレスで常に腹を下し続けながら顔面蒼白状態の添乗員の戸川。彼のハイテンションな芝居に、笑いが起きるどころか引いてしまった。そして、右京の自由すぎる行動にヤキモキする旅行会社の女社長である田中麗奈も、コミカルな芝居で魅せている。実は、この旅行会社の女社長と格安ツアーの添乗員の男とは、夫婦で会社の倒産を防ぐために、ダブルブッキングをしてまでツアーを強行してしまったという話。
編集者の二人のドタバタ芝居や、女装家のクレヨンと警察官の青木たちもドタバタと演技する。というか、この映画は右京さん演じる水谷豊さんの映画ですね。「ル・パビヨン・ドゥ・ラ・レーヌ」映画のメイン舞台“王妃の館”として登場するのがこのホテル。浅田次郎は実際に宿泊して原作を書いたそうです。
原作を読んでないので、これから読もうと思っています。
2015年劇場鑑賞作品・・・87映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング