パピとママ映画のblog

最新劇場公開映画の鑑賞のレビューを中心に、DVD、WOWOWの映画の感想などネタバレ有りで記録しています。

トラッシュ!−この街が輝く日まで−★★★★

2015年03月11日 | アクション映画ータ行
ゴミ山に暮らす3人の貧しい少年が、ある財布を拾ったことから絶望の街に奇跡を呼び起こしていくドラマ。監督は『リトル・ダンサー』『愛を読むひと』などのスティーヴン・ダルドリー、脚本を『ラブ・アクチュアリー』などロマコメの名手リチャード・カーティスが手掛ける。過酷な環境でたくましく生きる少年たちには、オーディションで選び出された無名の少年たちを起用し、名優マーティン・シーン、『ドラゴン・タトゥーの女』などのルーニー・マーラが脇を固める。
あらすじ:ブラジル・リオデジャネイロ郊外でゴミ拾いをして暮らす3人の少年は、ある日ゴミ山で一つの財布を見つける。その財布には世界を揺るがすとんでもない秘密が隠されていたことから、警察も総力を挙げて捜索に乗り出す。少年たちは「正しいことをしたい」と財布に隠された謎を解明すべく、警察のしつこい追跡をかわし命懸けで真実を追い求めていくが……。

<感想>南米ブラジルはリオデジャネイロの、ゴミの山で暮らす3人の少年の物語。と言えばつい社会派のリアリズム映画を思い浮かべてしまうのだが、この作品は現代の寓話ともいうべき活気あふれる冒険譚といっていい。
脚本は「ラブ・アクチュアリー」の才人リチャード・カーティスが手掛けている。監督は「リトル・ダンサー」「めぐりあう時間たち」のスティーヴン・ダルドリー。
そして、これら英国勢に製作総指揮として「シティ・オブ・ゴッド」で知られるブラジル人のフェルナンド・メーレレスが加わったのだから、いうことなしの映画に出来上がっているのだ。

撮影地のリオはもちろんのこと、オーディションで数千人の中から選んだという3人の少年もどうやらメーレスの息がかかっているようで、ポルトガル語が飛びかうスクリーンには、間違いなく心地の良いブラジルの風が吹いている。
ゴミの山から見つけた財布をめぐって、落とし主と拾った少年たちと、それを追う警察の攻防戦が展開するスリリングなシーンも見せ所。

学校にもいかないで、ゴミの山の中からお金になる部品を拾い集める毎日。不衛生で、それに生活環境も悪く、親のない子供たちにとっては、生きるための労働源なのだろう。中には、そういう少年を牛耳る大人のような少年もおり、拾ってきた物を集めて、少年たちには食べ物も与えないのだ。
そこで、神父が登場して、彼らスラム街の子供たちに、生きるための教育というか信仰を教え、出来るだけ悪の道に進まないようにと教えているのだ。
肝心の財布は、金は抜き取り友達と山分けして、後の中身のコインロッカーの鍵とか、何か金に結びつくものを取り出す。日本なら、ゴミの山の冷蔵庫の中の札束とか、竹林のビニール袋に入った札束とか、道路のゴミ捨て場に置いてあった風呂敷の中の1億円札束とか、もろもろバブルのはじけた日本ではよくマスコミを騒がした話だが、すべて警察に届ける日本人の生真面目さと、盗むということが出来ない人種なのだろう。

そこに、スラム街の神父「マーティン・シーン」や、ボランティアの女性のルーニー・マーラが絡むサスペンス劇なのだが、入り組んだ筋書きを見事な手さばきで紐解いていく才人リチャード・カーティスの脚本と、テンポの良さに監督ダルドリーの演出で見ごたえ十分で楽しめます。

特に、演技経験のない3人の少年の達者な素人演技には、舌をまいてしまった。
以前観た、メーレレスの「シティ・オブ・ゴッド」でも少年たちの演技には感心しましたが、あちらは少年兵として駆り出されて戦争に行き、人間を射殺するのだが、こちらもそれ以上に名演技を披露してくれる。
彼らは、天性の俳優なのか、それとも名演出あってのことなのだろうか。この映画の背景には、政治の腐敗や貧富の差という極めて重いテーマを掲げていながらも、それでもエンターテインメントに偏りすぎたような気もするのだが、すべては少年たちのリアルな演技が、それを救っているように見えました。

ラストの墓場へと、そして墓を見つけると、そこには墓に名前の少女が出て来て、まるで幽霊のように、でも生きているのだ。彼女の父親が、市長候補のサントスの会計係をしていたことで、汚職や横領といったお金がザクザクと金庫に眠ってあり、それを黒いごみ袋に詰めて持ち出し、棺の中へ隠して墓の中へとコンクリートで密閉するのだ。
その金を見つけた少年たち、スラムの街の人々に札びらをばら撒くシーンは、まるで神の使いといっていい。それと、らすとが、まるで「ショーシャンクの空」のような、海辺で猟師として暮らす子供たちの嬉しそうな顔に元気ずけられる。
ゴミの山や居住するスラム街に、彼らの演技が見事に溶け込んでいるのが最高にいい。これは現場で暮らす彼らでなくては、無理というもの。このあたりメーレス監督を、製作総指揮に引っ張り出した意義があるものだと、大いに褒めてあげようではないか。
2015年劇場鑑賞作品・・・49 映画(アクション・アドベンチャー) ブログランキング