どんなご縁で、この本に巡り合ったのか思い出せない。
メモ帳に、私の乱雑な文字で、
<東>か<車>か判明し難い文字でメモしている。
名前は<直子>。
本の名前は、『短歌の不思議』。
アマゾンへ、題名で注文し、
著者は、<東直子>さんと分かった。
歌を詠まれる人なら、
みなご存じの歌人に違いない。
私は、歌を詠まない。
歌が詠めたらいいのにと、
長年思ってきた。
が、自作を試みても、気にいる歌ができない。
自己評価して、不合格作品ばかりだ。
ただ、短歌作品や短歌評論を読むのは好きなので、
この本も、早速味読。
東直子著『短歌の不思議』
私は、著者の歌を全く知らなかった。
この本の中に、多数の歌が紹介されていて、初めて読んだ。
かなり個性的な歌人であり、歌風は万人向きではないように思った。
少なくとも、私の好みではない。
が、いいと思う歌もあり、その中から2首引用。
てのひらにてのひらをおくほつほつと小さなほのおともれば眠る
(21 親子を詠む より)
中央線、南北線に東西線、どこへもゆけてどこへもゆかず
(♣️ 著者の一首 より)
歌をよく知る作者の解説は、帯の言葉にあるように、<必読入門書>という表現がオーバーではなく、よく吟味された解説書であり、短歌鑑賞も兼ねている。
話の進め方が論理的でもあり、表現力抜群。
語彙も豊かで、説得力のある文章に感心した。
歌人として著名なだけでなく、作家でもあるという。
この本の、一つの特色は、
<演習問題>が、1〜5まで出ていることである。
たくさんの設問の中で、一首だけ正解することができた。
たまたまその歌を知っていたからにすぎないけれど……。
斎藤史さんの次の歌。
(かなしみの)遠景に今も雪降るに鍔下げてゆくわが夏帽子
( )の部分に入れる表現を考える問題である。
例題を、2首引用しておく。
地図にない離島のような形して( A )誰からも忘れられている < 杉崎 恒夫>
をり鶴のうなじ( B )折り曲げて風すきとほる窓辺にとばす < 栗木 京子>
答は、(A 足の裏) (B こきりと)である。
確かに、「足の裏」は、忘れらた存在である。
歩き疲れて痛くでもならないかぎり、思い出すことがない。
最近、折り鶴を折った経験から、確かに「こきりと」と折れば様になる。
歌人の表現力に脱帽する。
久しぶりに、テストを受けているような気分になった。
知っていることを改めて確認したり、確かにそうだな、と学ぶことも多々ある読書だった。
多くの現代短歌に出会えたのも、大きな収穫であった。