そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

「テロにはくっしない」というドグマは新たな暴力を産む

2015-02-02 | イスラム
今回の、イスラム国による邦人二名殺害事件で、日本はどのように交渉したのか明らかにされていない。菅官房長官は、「イスラム国と全く接触がなかった」と、空々しく記者の質問に答えている。
後藤氏の奥さんは、昨年から何度もメールの交換をやっている。政府は今頃になって、昨年二人がそれぞれ拘束された時期から、情報収集などを継続していたと発言するようになった。この間にも、後藤夫人は金額の請求を受けている。それなのに日本は全く交渉していないというのか?
これらのことを総合的に考えると、政府は、人命尊重という表の言葉とは裏腹に、交渉を拒否するか金額を値切っていたように思われる。多分前者であろうが、米英に追従した形である。
何よりも、ここで問題が大きくなれば、海外の武力行使への道が開く口実が出来る。かなり強引な理屈であるが、憲法を勝手に解釈する男ならこのくらいのことは何ということない。

安倍首相の、テロリストには償いをさせるとか、法の裁きを受けさせるとか、およそ一国の首相の言葉とは思えない低レベルの発言である。この言葉の裏には、報復してやるという、幼い感情的な意思だけしか見えてこない。イラクに攻め入ったブッシュのようである。
償いなら誰がどのようにやるのか、法の裁きならどこの国の法で誰がやっるのかもない。そのブッシュがイラクに侵攻して、拘束した反米人間たちの中に、イスラム国の”建国宣言”をしたしたバクダディがいた。彼は二度も拘束されたが、その度にイスラムの純化をし、刑務所内に同志を増やしていった。
当初アルカイダの分派であった集団は、イラク第二の都市モスールを、わずか数百人で制圧しその戦闘能力の高さと、残忍性が周辺諸国を圧倒していくことになる。
バグダディは自らをカリフと称し、昨年6月イスラム国の建国を宣言した。僅か8か月前のことである。
フセイン政権下では、負の相互関係がバランスを保って何も起きなかったが、ブッシュがそれらを根底から破壊してしまった。因みに、パパブッシュはクエートからイラクに侵攻することをためらったのは、こうしたことを見て取ったからである。
結果として、イラクをはじめとする中東の歴史的な力のバランスを、アメリカは破壊して今日の混乱を産んでしまったのである。イスラム国もそうした経過で生まれた、極度の暴力恐怖集団である。
アメリカは、イスラム国を壊滅させることを宣言している。無理である。暴力的に壊滅させても、世界中にテロが拡散するだけである。人や殺し武器を取り上げても、世界中に散らばるだけである。テロの本質は、彼らの頭の中にあるからである。

「テロにはくっしない」という言葉も、アメリカの行為そのものがテロ行為である以上、彼らを暴力的に対抗するという意味しか持つことはない。後藤さんのお母さんも奥さんも、彼を支えた多くの友人やジャーナリストたちも、今回のことが暴力の連鎖に繋がらないように訴えている。それは、安倍政権に向けられた言葉でもあるが、日本の軍事化を目指す安倍首相には見えてはいない。
コメント (7)
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