そりゃおかしいぜ第三章

北海道根室台地、乳牛の獣医師として、この国の食料の在り方、自然保護、日本の政治、世界政治を問う

世界酪農こぼれ話

2009-10-06 | 政治と金

今年のイグノーベル賞獣医学賞に、「乳牛を名前で呼ぶと乳量が増える」というのが選ばれた。この研究者の表題は、人と牛の関係が深いほど乳牛の乳量が増えるというものである。その一つとして、常日頃から牛を名前で呼ぶことを挙げているのである。

名前で呼ぶ農場の乳牛の方が25.8リットルも多いと報告されている。専門家の報告ではないので、全体像が見えない。これは一頭当たりの乳量とは思えないが、一日の乳量か、一年の平均乳量かもわからない。論文は人と牛の関係の数値化を試みてはいる。

一般紙は、牛に名前をつけると乳が増えると、面白おかしく報道している。乳牛に不快な音を聞かせ続けると、乳量が減ることも解っている。反対にクラッシック音楽を聞かせると、3%ほど乳量が増えることも報告がある。乳牛はことほど左様にデリケートな動物である。

乳牛は、分娩前の2ヶ月間を乾乳と呼ばれる時期があり、搾乳をしない。この時期に、青草に付けていると、分娩後の病気が多いという日本の獣医師会で報告があった。しかし、青草に付けることは、牛から目を離すことも意味しているのであって、一般管理がおろそかにもなるのである。複雑な飼養条件がある中、一つのことを取り出して、これが良いと単純な判断は間違いを起こし易い。生き物を扱っている畜産農家では、あまりにも多くの条件が複雑に絡み合っているものなのである。

イグノーベル賞に、難癖をつけるような無粋なことはやりたくはないが、名前を呼んだくらいで牛が健康になるとは思えない。

左の写真は、Milkprotest600ベルギーの酪農家がストリートパフォーマンスをやっている、とニューヨークタイムズの記事である。(クリックすると大きくなります)乳価が安いとデモをする現場の写真である。牛乳を警官の盾にぶつけているのである。これは結構難しい技である。日本のおとなしい酪農家に比べ、ヨーロッパの酪農家にはまだ根性が残っているようである。

コメント (1)
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