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なべ presents

「The PHANTOM of the OPERA」 original soundtrack 05

2005-08-09 21:40:42 | 雑記
ミュージカルをそのまま移植した映画のサウンドトラックでありながら、限りなくロックファンに訴える内容を備えたアルバムが今回紹介する「オペラ座の怪人」である。

何かのインタビューで読んだ“現代のモーツァルト”ことアンドリュー・ロイド=ウェバー(製作・作曲・脚本)の「この作品はロック(いったニュアンス)」という言葉を持ち出すまでもなく、起承転結のはっきりとしている劇的なロックを好む人であれば、この作品に魅了されること間違いなしである。

しかも、強調したいのは今回の映画版のサントラが特にロック的であるということ。悪く言えば俗っぽいのだが、キャストといい、映画のためにクローズアップした曲(後述)といい、実にロック的なカタルシスを味わうことができるのだ。

キャストでいえば、怪人役のジェラルド・バトラー(Gerard Butler)。本人も語るようにこのアルバム(映画)で聴ける歌唱はオペラティックではなく、限りなく荒くザラついたロックのそれ。むしろロックのフィールドの歌手がオペラティックに歌っている、といったほうがニュアンスとしては近いか。実に格好が良い。私は大好きだ。(俗な)パンチ力に優れる分、こんな怪人像が好きだ、という人も多いかもしれない。

ヒロイン、クリスティーヌ・ダーエ役のエミー・ロッサム(Emmy Rossum)の歌唱も、これは「オペラ座の怪人」といえばのサラ・ブライトマン(ウェバー元妻)と比べるとストレートで繊細なテクニックを駆使しない分、ロック色を演出するのに一役買っているように思う。若々しく穢れない役柄という意味では若く初々しいロッサムはぴったりのキャスティングだと評価されるだろうが、純粋にアルバム、音楽としてみてみてもサラ・ブライトマンのような超絶な歌唱をもってくるより良かったかもしれない、と個人的には思う。ロックファンの戯言である。


ストーリー(ウェバー版)は怪人の破滅的で悲劇的な愛を原作よりもクローズアップし美化することでよりドラマ性を増しているわけだが、これがまたロックのアプローチに合う。極端にロマンティックでドラマティックであるのは、一般には嫌われる傾向にあると思うのだが、これがロックには似合う。

曲はすべからくロマンティックなメロディとアグレッシヴでエッヂの効いたパートを交互に用いることになり、これがまさにロック、更に言えばハードロックのアプローチに似る。至極有名なイントロ(ルガンのメロディ)と歪んだギターの絡みは様式美と呼ぶに相応しい(惜しむらくはドラムが実にちゃちな打ち込み)。無意識のうちに泣きを発散するギターソロを待っているくらいの私である(笑)

そして、映画版となり、突如クローズアップされた“Point of no return”。この曲が発散する叙情性は筆舌に尽くしがたい。陰りがありながらも力強く、怪人とクリスティーヌの心の揺れ動きを綴っていく。そのドラマ性は映画の中でもクライマックスであり、アルバムとしてもクライマックスである。名曲と呼ぶに相応しい。勿論、ロックとしてだ。

私はサラ・ブライトマン版の「オペラ座の怪人」のCDも聴いたが、怪人の弱さが目に付いて、あまり気に入ることがなかった。サラ・ブライトマンだけは特別な力をもっているが、怪人があまりにもひ弱過ぎた。

曲のグレードが高過ぎるほどに、“逆に”ロック作品として完成版をつくってほしいなどと、いらぬ希望をもってしまう私だが、ジェフ・テイトあたりなら怪人役として面白いかなあ、なんて妄想にまで到達しているのであった。シアトリカルでドラマティックなストーリーはロックの専売特許なのである。

いやまあ、とにかく(ハード)ロックファンなら聴いて間違いなしの逸品。純粋にこの作品を(ミュージカルとしてや映画として、もしくは原作として)愛している人には斜めからみた感想かもしれないが、私はこうして気に入りましたです。


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