画像提供:リュバン☆さん
※親サイト、ニコ酒競馬コーナーより転載。
リンカーンって、どんな馬だっけ。
そんな問いにスラスラと答える私。競馬ファンだって、きっと答えられる。人それぞれに思い入れや、期待値や、それとも馬券でお世話になったとかで答えは微妙に違ってくるが、リンカーンって、どんな馬だ?ってみんな答えられる。ディープインパクトみたいに驚異的な走りで魅了するでもなく、しかし、GIに出てきて買おうか買うまいか頭を悩ませるくらいの存在。誰もが答えられるリンカーンは、こんな競馬の常識で語られるようになっている。
思えば、リンカーンは2004年の春、天皇賞で1番人気になっていたのだ。阪神大賞典を武豊で勝って、多くの競馬ファンは、リンカーンを競馬の常識で1番人気に押し上げた。
「きっと、無様な競馬にはならない」
「ユタカが乗るし、比較的賢い馬だからまず連はカタいぞ」
「血統的には長距離は合ってるはずだ」
みんな、そう思っていた。
だが、終わってみれば、13着に惨敗。
「押し出されるように人気になったようなものだからなあ」
「GI2着2回とはいえ、両方とも完敗だったからな」
「新聞に載ってるユタカの『ここが試金石』ってコメントを読んでりゃあな」
競馬というものはこういうものである。負けたら、言い訳の常識が成り立ち、それが酒の肴となる。でも、それはリンカーンがどんな馬なのか、を徐々に形成していくのだ。汚名を返上しようとした宝塚記念は3着。天皇賞・秋は体調不良で惨敗。
「おい、リンカーンはどうする? 買うのかよ。うーん、迷うな」
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私はリンカーンのそんな常識が形成されるのと同時に、別のリンカーンが形成されていくのを感じていた。
母親のグレースアドマイヤに惚れて、焦がれて、リンカーン。SS産駒で期待の星。気付けば、喉の疾患もなんのその、グレースアドマイヤが出れなかった春クラシックにだって挑戦した。秋にはGIでも勝負できるようになっていた。
「グレースアドマイヤの仔も凄いな」
その仔が、どうにか勝てば、それだけで勲章。親仔二代の贔屓は競馬のロマンであって
、密かな自分の誇り。どうして勝つかを真剣に悩み、どうにか勝ってくれと祈ったりしてみた。そして、件の惨敗の天皇賞・春へ。
期待して、勝って、いろいろ夢をみて、そして、ふと気付くとそこにはもうリンカーンだけが存在していた。グレースアドマイヤの仔リンカーンではなく、グレースアドマイヤはリンカーンの母だった。存在の比較でなく、リンカーンという馬が独立して心に刻まれた感じがした。これも親心ってある意味、いうのだろうか。
グレースアドマイヤはリンカーンの後、順調に、健康に仔を産みつづけた。すぐ下にはグローリアスデイズという牝馬を、更に妹にはプリンセスグレースを産んだ。私は勿論、この妹たちの活躍を楽しみに観ている。グローリアスデイズはこれまた頑張り、GIにまで出れるようになった。プリンセスグレースも無事にデビューした。
グローリアスデイズがオークスに出れば、母親の無念を思ったりもした。もうちょっとで重賞に手が届くとなると興奮した。プリンセスグレースがデビューすると聞くと、どうやったらオークスに出走できるかを考えたりした。先日なんて、福島にグローリアスデイズが出ると聞いて、ちょっと観にいってみようと旅もしてみた。
だが、リンカーンのように勝つために身悶えなどしないのだ。本当に無事に走ってくれることが一番だと思ったりするだけなのだ。それは思い入れがリンカーンよりもないのでなく、~まさにグレースアドマイヤに思うのと同じように~ 無事に長く活躍してほしいと思っているだけなのだ。グレースアドマイヤだって、母となってから随分と頑張っているのだから。
ただ、リンカーンはグレースアドマイヤの仔であって、それ以上の存在なのである。
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シンボリクリスエスでもなく、ゼンノロブロイでもない。ましてやディープインパクトなどではないリンカーンだが、私は身悶えするほどにGIの勝利を望んでいる。
おい、リンカーン。もう、すでにグレースアドマイヤの仔とか、バレークイーンの一族の牡馬だとか、そんな肩書きだけでは通用しないよ。そうやって、無事に過ごすのは妹たちでいいじゃないか。世間の競馬ファンや馬券師は
「GIにちょいと足りない馬」
だとか
「前哨戦でアイポッパーに差し返される相変わらずパンチの足りない馬」
だとか思われてるぞ。
おまけにオーナーの旦那は勝機ありとみて牝馬まで送り込んできたじゃないか。
相変わらず調教で全力を出すこともないようだが、それでいいのかよ。
馬には無理をしたって輝かないといけないときがある。それが1回だって、名馬みたいじゃなくたって、いいじゃないか。混戦だとかメスまで参加してしまった天皇賞・春だからって嫌味言われても、きっと心に残るファンがいるはずなんだ。
何より、常識を覆すのが血統的な宿題だろ?