会派視察二日目午前中は、2010年6月にオープンした〈アーツ千代田3331〉。内山下小学校など、岡山市でも統廃合の結果、廃校となった小学校などの使い方はこれからの課題。ここは、2005年に閉校となった練成中学校を改修した、新しい形の参画交流・領域横断型アートセンターです。
千代田区としては、区民の文化芸術活動の推進、多様な文化芸術の担い手育成の拠点整備と位置づけていますが、区からの指定管理ではなく、民間会社〈コマンドA〉に学校を賃貸借契約をし、アーティスト主導の運営が行われています。
統括ディレクターの中村政人さん(東京藝術大学美術学部絵画科准教授、写真上)からお話を聞きし、マネージャーの佐々木浩一さんにご案内いただきました。
「学校はもともと想いがつまった建物。一つひとつの部屋に工夫をし、そこから活動が喚起される」と。現代アートには馴染みが薄い私ですが、アーティストが改修しているので、素材が生かされ、とてもオシャレで魅力的な空間です。大きな木のある公園へと続き、開放的(^^)。
「心の琴線にかかわることはアートの領域。ここから発信・表現をしていきたい。コミュニティ・アートは、社会的問題を解決する力がある」と。第一線で活躍するアーティストやクリエーターたちが表現を自由に発信する場所、これからの世代が力を育んでいる場所、障がい者への教室・表現・ギャラリー、いきいきとした地域コミュニティつくりへの活動…。
千代田区としては、改修費2億円、年間維持経費300万円、事業委託として、海外からの芸術家を招いてのアーティスト・イン・レジデンス及び障害者アート支援の委託事業(800万円)を通じて、区民が気軽に文化芸術に親しめる機会を提供しています。あとは、〈コマンドA〉による自己運営。 市としては賃料の減額(年間1000万円、通常の1/4)やPR活動などでの支援。教室をギャラリーやデザイン事務所などに貸し出ししたり、イベントなどの事業により運営され、収支トントンでがんばっておられるそうです。水光熱費が大きく、東電の値上げがイタイと。
区の方は、昨年は60万人という、目標以上の来場者。地元の住民の皆さんとの関係はうまくできつつあるが、区民全体が自分たちの施設だと思っていただくことが課題ですと。
〈コマンドA〉の方、区の方双方から、新しい挑戦への気概を感じます。
昼間は100万人にもなるのではないかと言われる千代田区人口49,000人にはびっくり。
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午後は、長野県小布施町に移動して、2009年オープンの〈まちとしょテラソ(小布施町立図書館〉に。小布施駅からすぐ近く、役場と小学校の間に、周りの山にマッチするオシャレな建物がありました。
「交流と創造を楽しむ、文化の拠点」つくり。子育ての場、学びの場、交流の場、情報発信の場と、地域コミュニティとしての図書館をめざしていらっしゃいます。公募による館長である花井裕一郎さんからお話を聞きました。花井さんはテレビ局など映像の世界での演出家としての仕事を長年してこられた方。レクチャーは1時間45分にも渡りましたが、あまりにも興味深く、あっという間でした。
この〈まちとしょテラソ〉は、町民の皆さんとプランを立て、建設後も一緒に運営をと。運営委員会には50人が集まり、運営、建設、電算と3分科会にわけ、2年間かけ18回の会合を重ねたそうです。今も、月に一度、10人による会合が行われています。ユニークなのは、町民以外のメンバーも入っているということ。外からの視点が大切というのは聞くと当たり前だけど、なかなかできていないことですね。
「テラソ」は、世の中を照らそう、子どもたちの足元を照らそうという意味。オープン時間は、午前9時~午後8時と夜も開館しており、灯りがガラス張りの建物からこぼれてくる構造です。開館時間を長くし、図書館の質を変えることで、今まで来館が少なかった働いている人・男性の来館者も多くなっていると。また、年末年始開館も行っていて、日に300人の来館者があったそうです。とにかく、町民が主役、「本が好き<人が好き」と、町民に「おもてなし」の視点で運営したいと徹底していますが、その分、経費削減や職員配置のやりくりに知恵を絞っておられます。
また、臨時の職員の方も含めて13人のなかで司書資格を持っている人は5人。あとは学芸員であったり、映像編集者であったり、プロのアーティストであったり。
図書館のなかも、いろんな工夫があり、感心することしきり。また、小布施町には本屋さんが一軒もないということで、まちの中に100の棚を作ろうと「まちじゅう図書館」計画中。“わくわくな場づくり”を合言葉に小さな図書館が豊かなコミュニティ作りの拠点にと。
旧図書館の時の一日平均来館者数は78人(2007年度)、〈まちとしょテラソ〉になって391人(2011年度)。開館時間は2304時間から3379時間に。「貸出図書数で競うのでなく、どれだけコミュニティに寄り添うか」と言われつつ、貸出冊数は、35698冊から85391冊に。
刺激を受けたことすべては書ききれません。 「明日は、瀬戸内市から視察がありますよ」と。ホワイトボードには視察予定がたくさん。全国から注目の図書館です。
小布施町人口は11,000人。今回の視察のキーワードは、「その街にあった新しいコミュニティ作り」です。