普通のおっさんの溜め息

戦前派から若い世代の人たちへの申し送りです。政治、社会、教育など批判だけでなく、「前向きの提案」も聞いて下さい。

首を捻るNHKの視点・論点

2008-07-13 06:10:21 | 情報、マスコミ

 今日はNHKの「視点・論点」で少し気になったことについて書いて見たい。
 それは7月10日に放送された同志社大学教授の朱捷さんによる「イメージが創る国家像」と言うテーマの放送だ。
 実はこの種の放送は普通は後日ネット上の「解説委員室」
でその内容が出る筈がなかなか出ないので待っていたが、たまたまYou Tubeの資料をネット上に見つけたので、時期遅れになならぬうちに取り上げることにした。

 その概要は次のようなものだ。
 現在チベット問題や聖火リレーの問題で、マスコミやインターネットで中国が世界から批判を浴びている。
 それらの情報が必ずしも正確でなく、イメージによる間違った情報も流れていることもあるようだ。
 例えばチベットで警官が住民を救出している画面で、弾圧しているところと説明するような報道だ。
 ワシントン・ポストに中国の詩が報道された。
 「我々にどうしろと」と言うタイトルだ。
 昔アヘンを密輸された中国が自由貿易に参加すると仕事を奪われたと言う→国土を統一の活動をチベットへの侵略と言う→産児制限政策を人権侵害→法律に則して暴力を取り締まっているのを弾圧などなど、我々を理解しているのか、君たちは我々をどうしようと言うのか。
  (中国人は自国の本当の姿を理解しているのか、また理解していてもその事実に眼を瞑っているまたは瞑らされているのではないか。)
 この詩は、外国メディアのチベット問題の報道に対する中国人のいらだちを示したものだ。
 中国は批判されるべき事は多々あるのは承知の上で、ここはマスコミ報道に関連する国家のイメージを取り上げてみたい。
  (外国の人達には、誤解もあるかも知らぬが、例えば言論統制、世界から人道問題で非難されている国への経済支援など多くの事実を通して中国に対するイメージが出来上がっているかも知れぬのにそれを省くのは可笑しい。)
 今中国は急速な経済成長を遂げ、GDPではドイツを抜こうとしている。
 この新参者は外国から快く迎え入れられていない。
 これは日本の成長期にエコノミック・アニマルと呼ばれたように、新参者は先進国から人達から人生観や価値観の違いについてあら捜しをされる。
 人種、国の歴史、宗教観などは違うのが当然なのに。
 直近のことに限って言えば、中国は先進国に追いついても、ソフトパワー、人の価値観など精神的な物を創出していない。
 (中国のソフトパワーには下記のような漢字文化、仏教、中国料理、京劇など多くある)
 つまり価値観の同意を伴わない急成長が問題なのだ。
 英国は経済的、軍事的に凋落しても依然として大国の地位を堅持している。
 それはビートルズ、ハリーポッターなどのコンテンツによる文化の発信力がそれを支えているのだ。
 日本がエコノミック・アニマルと言われたのは遠い昔の話になったのは、アニメや漫画を代表とする日本のポップカルチャーが世界を魅了したからだ。
 (日本はそれ以上に勤勉、正直、愛社心、自主管理活動、日本食など、日本人の価値観や日本の文化が次第に理解されてきたからだ。)
 米国のダグラス・マックレイ国の総合力の尺度としてナショナル・クール、国としてのカッコ良さを提案している。
 それはファツション、文化、食生活、ライフスタイルなどのソフトパワーだ。
 中国がビートルズかハリーポッターのどれかを持っていたら異質に見られることは無かった。
 
(これは中国以外の人から見れば余りにも楽観すぎる見方だ。)
 もう一つの異質的に見られる基本的な原因はその社会主義システムにあるが、それは西洋の産物で中国にとっては舶来品だ。
 (このシステムを導入したのは中国自身の責任だ。)
 中国の近代化は伝統の破壊と西欧文明による国土蹂躙によりもたらされた。
 (伝統には古来の優れた価値観や文化を含んでいるがそれを保持するか、捨て去るかは自国の責任だ、講師は前と同じように、それを判っていると思うのに伝統の破壊の一語で済ましている。)
 冒頭の詩はその歴史に由来する屈折した考え方の色が濃い。
 オリンピックは百数十年痛めつけられた心を癒すイベントだ。
 それが理解されぬいらだちが噴出したのが「我々にどうしろと」の詩だ。
 中国人は経済的に成長したつぎの課題として、先進国と同じ価値観を持つ必要性に気づいている筈だ。
 ビートルズにはインド哲学ととものに道教の影響を受けている。
 中国文明にはベトナム戦争による米国人の精神の荒廃を救うヒントになる知恵がある。
 それを21世紀に生きるためには、中国人自らが如何そのヒントを掘り起こすか、政治システム、ライフスタイル、新カルチャーなどのソフトパワーを創出するか否かにかかっている。

[私の意見]
 この一連の内容を見て今後の中国の進むべき道についての後半は確かに建設的で的を射ているが、読者の多くの方がお気づきになったと思うが、その他は、重要なことの省略、被害者意識と、言い訳に終わっている。
 中国は道教ばかりでなく、仏教を完成させ、孔子、孟子、李白、杜甫などの漢字文化がある。
 そして日本や韓国は大きな影響をうけ、その事実に限っては多くの人達は中国を尊敬している。
 事実、日本人の価値観もかなりの部分は仏教や孔子など中国の偉人からの教えで成り立っている。
 福田さんさえサミットの七夕に温故知新と書いて揶揄された。
 朱捷さんさんはわざとそれを避けて、ビートルズや漫画アニメの小さなことに的を絞って話をしたために話全体が小さくなってしまった。
 もう少し中国の批判されている点を敢えて取り上げ、中国古来からの文化にも言及すれば、中国と先進国それぞれが抱えている大きな問題に迫る、聞き応えのある話になったと思うのだが。

NHKへ
 視点・論点は僅か10分きっかりの話になるので、当然、講師とNHKが原稿を前にしての事前の綿密な打ち合わせが行われる筈だ。
 そのときNHK側からの内容についてのアドバイスは無いのだろうか。
 勿論基本的にな内容の責任は講師にあるので、アドバイスと言うより示唆程度になると思うが、対外的には放送の責任はNHKが取るべきだし、批判も受ける立場だ。
 講師も本国との関係もあっての自身も判っていながらの、首を捻る話になったのだろうが、NHKとしては結果的には中国の弁護ばかりに終始した話をそのまま放送した結果になった。
 この種の外国人による微妙な話題についての放送は日本のため、また「媚中NHK」などと言われ、受信料未払いの理由にされないためにも、相当程度の配慮は必要と思うのだが。(*注記)

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*注記:前記の資料を見た人達のコメント
・中国の思考法と教養の骨格がストレートに出ていますね。
・現代の孔子が誕生する文化的基盤を、中国が保持してきたかどうか?ですね。
 出てきて欲しいですけどね。
・10分間言い訳の喋り通し。
 中国が世界から批判される理由が「余所の国が偏見を持っているから」かよ。自国を省みる事が一度も無い。
 聞く耳も無いこの態度、共産党が崩壊するまで変わる事は無いだろう。