旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

候補者

2007年02月12日 00時47分35秒 | Weblog
老市会議員が引退を決意した。甥に当たる人物が当然のこと後継者として立候補するものと思っていた。周りの人間もそのように考えていたようだ。ところが彼は出馬を断念し、代わって衆議院議員の有力な後援者の子息が急遽立候補することになった。

甥っ子に当たる人物が立候補することを決断したらしいと早とちりして、後援会の事務所までのこのこと出かけた。老市会議員は、甥っ子を指しながら「こんなが立ちゃあ、一番ええんじゃが・・・。」と言葉を濁した。

後継者は既に後援者の子息に決定している。老市会議員の後援会の事務所の裏は若き後継者の後援会事務所になっていた。「今からでも遅おないけん立候補を決断しんさいや。」と甥っ子に声をかけた。彼は、中学の1年先輩でともにサッカーをやった仲だ。いいゴールキーパーであった。

知り合いの隣町の町会議員がつめていた。町会議員は甥っ子の相談役だ。昨年、甥っ子の立候補に彼の妻や家族が猛反対していてたいそう気に病んでいるらしいと聞かされていた。甥っ子の中学の同級生である彼は甥っ子の出馬はないとみているようだ。

後援会の運動員が、忌々しそうにはき捨てた。「後継者は○○町内へ住むゆうとるんじゃけえ、ええじゃないか。」老市会議員の後継者は隣町の出身で、隣町で商売をしている。老市会議員は○○町の出身なのだ。

大柄な甥っ子の表情は暗かった。昨年の夏に会ったときと同様に精彩を欠いていた。苦悩の後がうかがえた。市内でも中堅どころの土木工事業者の役員である。10年ほど前に老市会議員がかって代表を務め、当時は娘の夫が経営する土木工事業者は倒産している。

莫大な負債を整理する過程で、この妙な禅譲の準備がなされたような気がしてならない。8年ほど前の選挙に私が応援した候補者を甥っ子は応援してくれた。私が応援する候補者なら応援するという、ただそれだけの理由で。出馬するなら微力ながら彼を支援するつもりであった。私は首を傾げながら老市会議員の後援会事務所を後にした。

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