旅路(ON A JOURNEY)

風に吹かれて此処彼処。
好奇心の赴く儘、
気の向く儘。
男はやとよ、
何処へ行く。

斎藤美奈子

2008年09月04日 01時40分56秒 | Weblog
時間を持て余すと本屋に寄る。今日は広島駅北口(新幹線口)のフタバ図書(古本が主体)に寄った。大規模店なら広島バスセンターの「紀伊国屋」、広島インター近くのフタバ図書「メガ」、広島駅南口前のサンモールにある「ジュンク堂」、手ごろなところで、勤務先近くの「ブックオフ」、食事の後には本通の「金正堂」にもたまに寄る。規模の割には珍しく岩波文庫のワイド版がそろっているのがうれしい。家の近くの「フタバ図書」は新本売場の一角に古本の売り場がある。最近「花いち」の古本の動きが鈍いので足が遠のいている。商品の手入れが悪いことも鼻につく。

新幹線口の「フタバ図書」で30分ほどあれこれ立ち読みをさせていただいて、結局、文庫本を2冊買った。定価の約半額である。ちくま文庫の斎藤美奈子著「文章読本さん江」と岩波文庫のニュートン著「光学」の2冊である。

斎藤美奈子についてわたしは、その軽妙な語り口というか文体というか、非常に切れ味のいい評論家であるとみているし、何よりも斎藤の著作は読んで肩が凝らないのが良い。たとえば「光学」のような難しい本を読んだあとに読むと心が軽くなる。文庫本でちぃと読みにくいが、読みとおすに3時間もかからないであろうから、難しい本を読んだ後の精神安定剤代わりに読もうと買い求めた。

「静かな抗争 副題 定番の文章読本を読む」にざっと目を通してみた。谷崎潤一郎著「文章読本」、三島由紀夫著「文章読本」、清水幾太郎著「論文の書き方」の3人の著者を文章読本界の御三家。本多勝一著「日本語の作文技術」、丸谷才一著「文章読本」、井上ひさし著「自家製 文章読本」を新御三家であると選定するところから「静かな抗争」は始まり、その抗争の顛末を書きあげた挙句、「文章読本というジャンルには、並みいる文筆家を刺激してやまないよっぽどの魔力が秘められているのであろう。」という文でその最後を締めくくっている。

実をいうとわたしは、御三家・新御三家の6名の文筆家が書いた「文章読本」6点のうち、井上ひさし以外の読本は、実際に読んでいる。ところがその内容について比較検討しようなどという大それた気持はおこらなかった。わたしにとって5人の文章はある意味、お手本であった。その文章読本を個別に解剖してみせたうえに、その類似と異質について的確な指摘をしてみせた斎藤美奈子は、やはり只者ではない。

30歳台から40歳の前半にかけて文章読本を遮二無二に読んだ時期がある。本棚には新古併せて100冊近い「文章の書き方」(文章読本の類)がある。本の読み方に関しては加藤周一の「読書術」ほぼ1冊だけで済ませていることと比べると「書き方の本」の数があまりに多い。「文章読本さん江」を読みながら、つい当時の苦境を思い出してしまった。そういえば当時わたしは、取材し書くことを業としていたのだ。