人生のルーキーの時──始発点にいる
経験を先導するコトバをもたない存在として
こどもの君はただ〝感覚〟している
甘さ、苦さ、やさしさ、くるしさ、明るさ、暗さ
心は感覚に導かれて世界の姿をたしかめ味わっている
理解という思考(悟性)が動き出すより先に
後続してそこにコトバが産み落とされる地平を耕すように
こどもの君は世界を感覚し、この世の経験を積み重ねていく
この歩みのなかでさまざまな出会い、交流があって
反応するじぶんの感覚の泡立ちに立ち会い
記憶し、時間を混ぜ合わせ、君は少しずつ世界をマップしていく、
(この地平に荒廃の色が滲むとき人生は苦境から始まる)
安心と不安、期待とおそれ、楽しさ、怒り、悲しみ
後からそう名づけられるものたちは合流して
やがて、ひとつの世界像がくっきりした姿を現わし始める
世界の姿は、同時に、こどもの君が自ら告げる自らの姿
君の生の波形がかたどられた写像の意味をもつだろう
しかしそれだけではない──
それだけではないことを告げる出会いがある
「始発点がすべてを決するわけではない」
「一緒に踊ろうか」
いつか、そう君に語りかける〝友〟と出会う
出会いはこう呼ばれている
「愛の能力を開花させる静かな奇蹟」(サリヴァン)
世界を黙って受け取るだけではない
もはやこどもではない君がいることを友は告げる
苦境を糧として、生きる資源に変換するコトバを産む
この世のあちらこちらに〝友〟がいることを友は教える
友の存在、友のコトバをまっすぐに受け止めることができる
君はみずからのチカラを見出すことになる、そのことは信じていい