ASAKA通信

ノンジャンル。2006年6月6日スタート。

「永遠の祭礼」

2020-02-09 | Weblog

 

ひとり、まただれかが
なまえを呼ばれ

みえない腕に抱かれ
呻吟の海を渡り
コスモスの闇を抜ける

生きる理由であるもの
超えることのできない誘い

呼ぶ声は心臓深く突き刺さり
肉を焦がし

きよらかな光が凝集し
はかない視覚を洗い

そのまなざしの子宮に
太古の祭礼が屹立する

むせびにふるえ
無限の光が氾濫する

永遠の律動に騎乗し
遠く近く
熱く冷たく

涙がこぼれ
かなしみが溶け出し

未知の分娩を幻視して
祭礼ははるかに駆け上り

夢に濡れた夜に
精霊たちの白熱が貫通する

轟音となった細胞の共振は
緊縛されたセルフを道連れに
陶酔の極北へ加速する

昇天の熱が夢を溶かし
かなしみを埋めた辺境に
せつない嗚咽が木霊し

太古と永遠とむすぶ時のさざ波が
孤独のひだを洗い
ちいさな死がくちびる重ねる

彼岸をめがけるように
喪神の祭壇に踊る
可憐な宇宙の巫女たち

酷薄な刻印をうがたれた
コスモスの生け贄なのか

はかないまなざしの内側を照らす
祝福の閃光なのか

幻想の涙に濡れ
無限の闇が身震いした

永遠をつむぐ祭礼が
忘却の愛撫に抱くように

はるかな時の流れにそって
ひとりひとりの
孤独な小径を刻んでいく

ちいさな心臓を捧げた陶酔に
なんどもわかれの挨拶を交わし

いつか夜の果てにたどり着いたとき
巫女たちは戻るものなのか

みえない戒律にうながされ
惑星のせつない歌とともに
滅びていくものなのか

それともかなしみの向こう側へ
抜けて行くものなのか

巫女たちの祭礼は
しきたりに導かれるように

透明な足音を響かせ
いまも
数億の夜を過ぎていく

 

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