最終5区で力走を見せる園田聖子
第24回高校女子駅伝競走大会の結果を分析しています。本日、取り上げるのは、大会第4位となった筑紫女学園高校(福岡)です。
まず、筑紫女学園高校の概要をおさらいしてみましょう。
筑紫女学園高校は、福岡県にある私立の女子高校です。
所在地は、福岡県福岡市中央区警固二丁目
福岡県下の私立女子高校の中では最大の生徒数を擁し、地元では筑女(ちくじょ)と呼ばれています。浄土真宗の教えにもとづく人間教育を建学の精神とし、「自立・和平・感恩」を校訓としています。龍谷総合学園加盟校で、開校は1907年(明治40年)です。
スポーツ・文化の盛んな学校で、有名大学への進学率も高い文武両道の学校です。特に陸上部は、過去3回の全国優勝の経験がある伝統高です。
福岡県は、全国でもまれな激戦区で、筑紫女学園高校と北九州市立高校(旧戸畑商業高校)が毎年激しく競い合っています。ですから都大路を目指すには、まず県大会を勝ち抜かなければなりません。これが他県の有力校と違うところです。
同校陸上部の卒業生に、稲富有香、高藤千紘(ワコール)、浦田佳小里(天満屋)、田中華絵(第一生命)などがいます。
今大会は、「平常心」でレースに臨み、上位入賞(5位以内)が目標です。
監督は、同校を約40年にわたって指導してきた河村邦彦氏から一昨年バトンを引き継いだ岩元雅輝監督(48歳)です。福岡市中央区の大濠公園で、一日20キロを周回して走り込む選手に並走し指導をしてきました。
全国大会での過去の成績は、以下のとおりです。
平成23年 10位 1:9:35
平成22年 ------- 北九州立高校 5位 1:08:59
平成21年 ------- 北九州立高校 11位 1:10:49
平成20年 6位 1:8:50 北九州立高校 12位 1:9:41 *筑女は北九州代表
平成19年 ------ 北九州立高校 10位 1:09:46
平成18年 10位 1:9:37
平成17年 9位 1:9:50
それでは、もう一度、今年(以下H24に読み替えてください)の記録を振り返ってみましょう。
今年の県大会の記録は、1時間9分28秒でした。
第1区 由水 沙季(2)19:40 区間1位
第2区 山下 未来(2)13:22 区間1位タイ
第3区 楢崎 夏美(1) 9:39 区間1位
第4区 木村 友香(3) 9:54 区間2位
第5区 園田 聖子(3)16:53 区間1位
強敵、北九州市立高校に対し、3区楢崎夏美と5区の園田聖子が圧倒的な強さを見せました。1区・由水沙季は、ライバル矢野栞里にかろうじて勝利しはずみをつけました。
さらに九州大会の記録は、1時間8分57秒で1位でした。
第1区 園田 聖子(3)19:36 区間5位
第2区 由水 沙季(2)12:52 区間2位
第3区 楢崎 夏美(1)9:35 区間1位
第4区 木村 友香(3)9:51 区間2位
第5区 山下 未来(2)17:03 区間6位
2区の由水沙季の走りは素晴らしいものでした。
次に全国大会の結果です。記録は1時間8分14秒で4位でした。
第1区 由水 沙季(2)19:39 区間1位 全体1位
第2区 山下 未来(2)13:26 区間10位 全体5位
第3区 楢崎 夏美(1)9:37 区間4位 全体6位
第4区 清水 真帆(2)9:34 区間11位 全体7位
第5区 園田 聖子(3)15:58 区間4位 全体4位
昨年の全国大会の結果と比べると、1分21秒も早いタイムで、筑紫女学園高校としては近年にない好記録でした。それでは、オーダーを見てみましょう。1区は、今年度1500m日本人1位の記録を持つ由水沙季、2区は双子の妹・山下未来、3区は、1年生で伸び盛りの楢崎夏美、4区は安定感のある清水真帆、5区は監督の期待も厚い園田聖子。高校陸上中距離界第一人者の木村友香は、調子が出ないのか、今大会はキャプテンとして控えに回りました。
それでは、大会の経過をみていきましょう。
1区は、各校の監督が最も重要視する区間です。花の1区とはよくいったもので、各校のエース級が並びます。筑紫女学園高校の由水沙季、立命館宇治高校の菅野七虹、大阪薫英女学院高校の大森菜月、豊川高校の岩出玲亜、興譲館高校の川内理江などです。ほかでも書きましたが、選手同士のけん制によりスローペースとなりました。記録は望めませんが、最後のスパートで飛び出したのが由水沙季、福岡県民は大いに喜んだことでしょう。これこそ、駅伝の醍醐味です。後続との時間差は、5位の豊川高校まで約6秒でした。ここで水をあけられると上位入賞はなかなか難しくなるところです。筑紫女学園高校としては、願ってもない結果でした。
2区は、双子の妹、山本未来です。大阪薫英女学院高校の松田瑞生が快走を見せてすぐにトップに立ちます。テレビの映像には映りませんでしたが、須磨学園高校の横江理沙も15人抜きで10位になり、立命館宇治の岩井朝香も4人抜きで3位に、興譲館高校の矢本桜子も順位を一つ上げ2位に浮上しました。山本未来は、結局4人にかわされ5位に後退し、この時点でトップとの差は22秒に広がりました。1区・2区で波に乗りたいと考えていた岩元監督、この状況を見て、なんとかこのまま上位で踏ん張ってもらいたいと思ったことでしょう。
3区は、1年生の楢崎夏美、区間4位の好タイムでしたが、順位はひとつ落として6位になりました。しかし、この時点でトップとの差は、逆に13秒に縮まり、勝負は俄然面白くなりました。ここでの踏ん張りが、最終結果につながりました。楢崎夏美、来年のエースに間違いないでしょう。
4区、清水真帆は区間11位の9分34秒で、さらに順位をひとつ落とし7位に後退してしまいました。ここで各校の実力の差が出たのでしょうか。3区では13秒差でしたが、4区終了時点で、30秒に広がってしまいました。順位をひとつでも上げたい。最終区に期待がかかります。
最終区5区は、3年生の園田聖子、高校生活最後の大会で意地を見せました。この追い上げは見事でした。神村学園の濱田美蘭、大阪薫英女学院高校の松本彩花、須磨学園高校の前畑有希、の3人を抜いて4位になりました。5位以内という目標を達成した瞬間でした。近年にない好タイムです。1・2年生も大半が残っていますので、来年の活躍がとても楽しみになりました。
次回は、大会5位となった大阪薫英女学院高校を分析してみたいと思います。