写真上が雲南農業大学構内にある蜂蜜製品の販売店。下が雲南農業大学にある蜂学の建物「蜂学楼」(2005年撮影)。
【蜂学】
そもそも「皇蜜」を調べると開発に力を入れているのが山口喜久二という日本人だったのでした。そして、私が雲南のハチミツを強く意識したのも、昆明市郊外にある雲南農業大学にうやうやしくパネル展示されている山本喜久二氏の白衣姿の大きな写真からはじまったのでした。
ある日、雲南農業大学構内の桜の花がとてもきれいに咲いている、という記事を読んだことから、ふらりと2月末に北郊外の大学を訪れました。
桜の花はカンヒザクラのようで、桃色が濃く、カチッとした蝋細工のような桜が、寒空の中、ポチポチと咲いていました。その桜の下を歩く学生たちは、ジーンズのジャンパーに、ジーンズのズボンといった、ごく普通の大学生の出で立ちでした。女性が意外と多く、中国の大学ではよくあることですが、かつて大学に奉職していた方の一族たちが住むアパートが併設され、健康のためにウオーキングするお年寄りの姿も多い生活感のあるキャンパスでした。
桜も見たことだし、と構内をぶらぶらしていると、隅のほうの蜂の立体模様のついた売店があり、ガラスのショーケースに無造作に蜂蜜が置かれていました。なかなかの賑わいです。
日本の農業大学でも、自家製の食材を売っていますが、中国でも同様のようです。値段は街の蜂蜜専門店よりも流通費分、安いといった値付けで、瓶には大きく「無公害蜂蜜」と書かれていました。
山里にあるから、という意味なのでしょうが、拡がり続ける昆明市にまもなく飲み込まれ、「郊外」でも「無公害」でもなくなるのは目に見えていました。
この売店の横が蜂蜜の研究室でした。雲南農業大には1985年から東方蜂蜜研究所を併設して蜂蜜の研究を熱心に行っていたのです。さらに2005年からは中国国内でも2カ所しかない蜂学部を設置し
(ほかにあるのは福建農林大学のみ。中国のサイト、百度百科の「蜂学」より)、
蜂学楼と書かれた建物は近隣住民のよい待ち合わせ場所ともなっています。たとえば2015年現在もなお、蜂学楼と呼ばれる建物が発着点となるバス路線があるほどです。(http://www.ynau.edu.cn/showart.aspx?id=1368)
東方蜂蜜研究所の所長が同大学の副学長となることからも、その主流ぶりがわかります。
この蜂学部の入り口近くの廊下に「山口喜久二ローヤルゼリー科学研究室」という立体看板と、山口喜久二さんが、2000年から奨学金や多額の寄付を行っています、といった内容の文章が感謝の念をこめて彼の写真とともに掲示されていたのでした。 (つづく)