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天野屋利兵衛と赤穂浪士の関係
大阪の歴史探訪
/
2008年11月04日 19時07分23秒
天野屋利兵衛は、吉良邸討ち入り直前、赤穂浪士を支援していたとして大坂西町奉行所に捕縛され、厳しい拷問にあっても、「天野屋利兵衛は男でござる」と啖呵を切って自白しなかった話は、仮名手本忠臣蔵で有名である。
大坂西町奉行所跡東の石碑
天野屋利兵衛については、加賀藩前田家の家臣杉本義隣が、「大坂の商人天野屋次郎左衛門が赤穂義士たちのために槍を造ったかどで捕縛され、討ち入り後に自白した」と吉良邸討ち入り直後に書いたものが残っている。
東側の松屋町筋から見た大坂西町奉行所跡地(商工会議所とマイドーム大阪)
また、赤穂浪士切腹から6年後、津山藩士小川忠右衛門によって、「大坂の惣年寄の天野屋理兵衛が槍数十本をつくって大坂西町奉行所に捕縛され、使用目的を自白させるために拷問にかけられたが、答えず、討ち入りが成功した後にようやく自白した」と書かれた文章も残っている。
西の東横堀川から見た大坂西町奉行所(シティプラザ大阪)
さらに、1772年(明和9年)の随筆「翁草」の中に、天野屋利兵衛がある茶席で、貴人から蔑視された時、同席した浅野内匠頭が、「利兵衛こそまさかのときに役に立つ人物」と救ったことに感激、赤穂藩浪士の武器調達役を敢えて請け負ったと記載されている。
幕末の大坂西町奉行所地図
元禄時代の大坂にいた天野屋利兵衛と大名家との取引記録では、熊本藩細川家と岡山藩池田家のものが現在まで伝わっていて、天野屋の先祖天野屋長左衛門は、備前岡山藩池田家の藩祖と交流のあったことから、代々備前岡山藩池田家の蔵元を務めていたという。
西町奉行所の向かいにあった牢屋敷跡地のビル(右)
また、大石内蔵助の母親は、岡山藩池田家の重臣、池田出羽由成の娘であったことから、池田家の蔵元であった天野屋利兵衛と大石内蔵助とは、何らかの縁があっても不思議ではない。
思案橋の上から見た現在の東横堀川
天野屋利兵衛を裁いた大坂西町奉行は、松野助義(在任1701~1704年)で、吉良邸討ち入り後、利兵衛の義侠心に感銘した松野助義は、死罪を免じ、大坂からの所払いという軽い判決を言い渡している。
大坂西町奉行所跡北の石碑
天野屋利兵衛は、この判決を受けたのち京都に移り、智恩院の近くで悠悠自適の生涯を送ったようである。
大坂西町奉行の松野助義は、のちに江戸南町奉行に栄転しているので、その判決は幕府首脳部にも評価されていたようで、助義は南町奉行職を1717年に有名な大岡越前守に引きついでいる。
本町橋から見た大坂西町奉行所跡
天野屋利兵衛は、万一幕府に発覚したときのことを考え、赤穂藩とのかかわりのある関係資料を一切残さなかったため、仮名手本忠臣蔵の創作として否定する説もあるが、赤穂浪士の武器調達係であった天野屋利兵衛は実在していたと考えるべきではなかろうか。
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