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映画「硫黄島からの手紙」と硫黄島攻防戦
太平洋戦争を発掘する
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2007年01月08日 11時13分35秒
クリントイーストウッド監督の映画「硫黄島への手紙」を見て、昭和20年2月から3月にかけての硫黄島の攻防の実態を少し調べてみた。
米軍は昭和19年8月の時点でサイパン、グアム、テニアン島などを制圧、B29による日本本土への長距離爆撃を開始したが、途中で日本戦闘機の攻撃を受けるためにB29を護衛する戦闘機用の航空基地が必要となった。
そこで航続距離の短い戦闘機でも、日本本土と往復できる距離にある硫黄島を占領することが決定したのである。
実際に硫黄島まで行って撮影したシーン、後方は擂鉢山
攻めるアメリカ軍は、艦船800隻、航空機4,000機、作戦に動員された将兵の総数25万人という大作戦であった。
栗林中将が勲章をつけたまま指揮をするシーンにはちょっと違和感がある
従って、映画のシーンに出てくるアメリカ軍艦船、航空機、将兵の数よりも実際はもっと凄い物量を動員した作戦だったのであるが、それを表現するには映画制作費が掛かりすぎるということであろう。
一方、守る日本軍は栗林中将以下2万2千名、島を防衛をする艦船は潜水艦が数隻、飛行機も僅かしかなかった。
栗林忠道中将(当時53歳)
この潜水艦と航空機による攻撃も、圧倒的な米軍に対する戦果は殆ど無きに等しいものであったらしい。
硫黄島に対して攻撃が開始された昭和20年2月16日、米軍のスミス海兵中将は記者会見で「攻略予定は5日間、死傷は1万5千を覚悟している」と攻略期間と死傷者数を多めに見積もった説明をしている。
2月19日には空爆と艦隊による砲撃のあと、硫黄島南海岸に上陸用舟艇の第一波が上陸しているので、スミス中将の予定では24日には占領が完了する予定であった。
硫黄島守備隊にいたロスオリンピック馬術の金メダリスト西中佐(当時42歳)を好演する伊原剛志(43歳なので年齢もピッタリ)
2月22日、大本営において秦彦三郎参謀本部次長は「硫黄島の戦闘は今後2週間程度続くと判断する」と3月7日頃には玉砕するという声明を発表。
これを受けて27日、国会の衆議院が硫黄島守備隊に対し感謝の電報を送っているが、硫黄島では米軍が降伏勧告状を送る3月16日まで日本軍の組織的攻撃が続いたのである。
3月17日、栗林中将は大本営に訣別の電文を打電し、アメリカ軍に総攻撃をかけ、千田少将以下多数が戦死したが栗林中将(この日大将に昇進)はまだ生存していた。
電報を受けた大本営は、3月17日夜に硫黄島守備隊は全員玉砕したと発表しているが、栗林中将は3月26日の最後の突撃まで生存していたので中将の戦死は米軍上陸から36日目であった。
その後生き残った将兵は、6月下旬までゲリラ戦を続けており、4月以降に射殺された日本軍将兵の数は米軍の記録に残っている数字だけでも1602名にもなるという。
最終的な日本軍の戦死者20,129名に対して生存者は1033名、硫黄島は生存率僅か4,9%という酷い戦場であった。
一方、米軍の戦死者は6,821名、負傷者 21,865名の合計28,686名に上り、スミス中将が多めに予想したさらに倍の損害を出している。
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