遠い森 遠い聲 ........語り部・ストーリーテラー lucaのことのは
語り部は いにしえを語り継ぎ いまを読み解き あしたを予言する。騙りかも!?内容はご自身の手で検証してください。
 



   夕べ、シンガーソングライター秦基博さんのライブをWOWOWで観ました。大ファンの娘は...ぜんぜん違う..インディーズの頃の方が良かった...とぶつぶつ言っています。秦さんの声については以前にも書きましたが、風の歌、木々の歌...のような不思議に胸に響く声なのでした。

   ライブも終盤になってデビューの頃の歌、自作の歌....アサガクルマエニ、ぼくらをつなぐものになったとき、あきらかに声が変わりました。ただ開いて声を出しているように聴こえたのが、ふたつに引き裂かれたような...といったらいいでしょうか....深い底から湧き出るような声と天に向かって祈るような声と両方聴こえるのです。秦さん自身とつながっている....そんな感じの声でした。光と闇が見えます。闇があってこそ光は輝かしい....青春の痛みと甘やかさが伝わってきて震えました。.....語りだな....と思いました。


   我が家は半端なく寒いので家のなかでダウンジャケットを着ています。友人の家にある薪ストーブが欲しいのですが今年は無理のようです。エアコンのようにただ温かいだけでなく燃える炎を見ていたい、身も心も温まりたい。生命のゆらぎのような赤い熾火が遙かな遠い世界にいざなってくれるような気がしませんか。夕べは二階に上がるのも寒くて..リビングで眠ってしまいました。明け方、夢を見ました。なつかしい方が我が家を訪ねてみえて、フローリングの床に座っています。部屋の隅で埃にまみれていた自動ピアノが円形の巨大なグランドピアノになって部屋の中央に鎮座しています。その方は白い指さきですーっと床を撫で、「おそうじなさればきれいなおうちなのに...」と言いました。

   目が醒めると身体が寒さで強張っていたのでお風呂であたたまることにしました。あぁいい気持ちです。湯船に浸かって発声練習をはじめました。低い声から高い声へ幾度も行き来して調整します。低い声が出にくいので丁寧に発声していると、突然語りたくなって”染殿のお后”を語りました。構想しかできていなくて途中でとまっていたのに、物語の最後まで行きました。うたっているとことばがついてきて、わたしの”染殿の后...さくらひらひら”が生まれました。

   わたしはとてもこのものがたりが語りたかったのだ...と気がつきました。ひとにはそれぞれ”テーマ”があります。朗読ワークショップのメインテーマは”献身”だったように思います。つばめの、王子の、パトラッシュの献身、ごんぎつねも龍の子たろうもそうですね。....わたしのテーマのひとつは”戀”です。プラトニックな戀だけでなく肉身とともに燃え上がる戀....そして女が生きる...ということ....。おさだおばちゃん、おとうちゃまのこと、雪女、弥陀ヶ原心中、芦刈、名草姫、マグダラのマリア、両腕に白い花をいっぱい、立ってゐる木、....さまざまなジャンル、さまざまな出典ですか背骨のように一本通っているのは精一杯生きた女のものがたりだということです。ちいさな子どもたちに語るときは、子どものように飛び撥ねますし、中学生に語るときは、隠れた名作をものがたりとして伝えてゆきたい、縄文の語りを呼び起こしたいと思いますが、それだけでは生きてゆけません。

   女としてのわたしとつながっているものがたりを語ってゆきたい...母として、人間としての深奥に女のわたしがいるからです。一挙にいけそうな気がします。懸案だった”エリザヴェート””イシスのものがたり”.....葵の上、以茶のものがたり.....たのしみになってきました。


   

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