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ヘリステージ財団における 石原慎太郎氏の尖閣発言によって日中関係は突如 悪化したわけですが ジャパンハンドラーの巣窟 ヘリステージ財団が日中 日韓関係を操り 日本を米国の国益にそって動かそうとしている筋書きがよく見えます。
クリングナー論文まとめ
◎(ヘリステージ財団は 2012年にその後の不正選挙の行使とその結果を知っていたとしか思えない。)
◎野田首相はアメリカにとって非常に有用な存在であった。
◎アメリカは小沢が嫌いである。
◎日本国民が中国に否定的な見方をしていることはアメリカにとって望ましい。日本の右傾化・ナショナリズムの台頭は対中国の限定的なものであるから心配するには及ばない。
◎日本に防衛支出を増大させ、集団的自衛権を行使させることはアメリカにとって有益であある。
◎沖縄の普天間基地の代替施設の建設について日本政府に圧力をかけるべきだ。
◎中国との軋轢による日米同盟の再評価は米国にとって喜ばしい。次の段階としては、日本が自国の防衛のみならず、国際安全保障問題への取り組みについてもより大きな責任を負担する意欲を強めることである。こうした新しい動向は、米国の安全保障上の目標と合致するものであるから、米国としてもこうした動きを後押しするべきである。
本文
3年前、民主党は、50年間続いた自民党政権がもたらした政治的停滞に対する国民の怒りに乗じて政権を奪取した。しかし、その喜びもつかの間だった。民主党は、財政の実情からその非現実的経済公約を放棄せざるを得ず、中国と北朝鮮からの脅威の高まりを受けて、甘い外交姿勢を転換させるに至った。経験不足と不祥事に悩まされ、民主党は自民党と同様に政治的無能をさらけ出し、矢継ぎ早の首相交代という轍を踏んだ。実際、民主党初の首相は1年を経ずに辞任し(後任は15か月しかもたなかった)、有権者は民主党に背を向け、自民党の参議院での復権を許した。
民主党はその失策によって、次期衆院選で総理大臣のポストと衆議院の過半数を失うことがほぼ確実である。選挙の日程はまだ確定していないが、2013年8月末までには実施されるはずである(訳注:本稿の発行日は11月14日)。野田佳彦首相は、解散日の設定を可能な限り先延ばしにして、瀕死の民主党をどうにか立て直そうとするだろう。自民党は、このような時間稼ぎに対抗して、立法府運営の膠着を武器に選挙の早期実施を余儀なくさせようとするはずである。
世論調査に従えば、保守系の自民党が次期総選挙で第一党になり、党首の安倍晋三元首相が日本の次期首相に選ばれるという見通しが強い。安倍氏の外交姿勢が保守的であり、日本国民のあいだに中国への懸念が広がりつつあるという状況は、米国政府にとって、日米同盟の健全性維持に不可欠な数項目の政策目標を達成する絶好の機会である。
米国政府は長きにわたって、日本が自国の防衛により大きな役割を担うこと、さらに海外の安全保障についてもその軍事力・経済力に見合う責任を負担することを求めてきた。日本が防衛費支出を増大させ、集団的自衛権行使を可能にし、海外平和維持活動への部隊派遣に関する法規を緩和し、沖縄における米海兵隊航空基地代替施設の建設を推進することになるとすれば、米国にとって有益なことである。
2009年の総選挙によって日本の政権交代は実現したが、民主党は選挙公約を具体的に実行して改革を実現することはできなかった。結果として、政権交代を望む日本国民の声は根強く残っているが、どの政党も国民の信頼をほとんど得ていない。依然として、最も支持を集める候補者は「無所属」である。こうした幻滅から生じた政治的空白に乗じようとしているのが、橋下徹大阪市長の「日本維新の会」である。
野田首相が党首を務める民主党は破滅寸前である。まもなく奈落に真っ逆さまとはつゆ知らず、空中に立つコヨーテ(訳注:漫画のキャラクターWile E. Coyote)のようだ。民主党は存続するだろうが、マスター・プランが大失敗であることが判明して足かせとなるのも、コヨーテと同じである。
尖閣諸島を巡る日中の対立が問題となったのは2010年だが、その頃には、すでに民主党は公約に掲げていた外交および安全保障政策を放棄していた。例えば、民主党はもはや日米同盟を批判することはせず、対中融和、米国抜きの東アジア・コミュニティの創設、そして米海兵隊の普天間飛行場の沖縄県外移設も提唱しなくなっていた。民主党は、対抗すべき自民党の外交政策を事実上受容してしまったのである。
民主党の経済公約も似た運命をたどった。例えば、2009年の選挙戦で民主党は高齢者への年金および医療給付の増額、ならびに4年間の増税回避を公約に掲げたものの、選挙に勝利した後に給付の約束を反故にしたばかりか、野田首相は2011年にならないうちから消費税を5%から10%に倍増することを提案するようになっていた。また、追加徴税分は全額社会保障制度の安定化に充当し、政府部門を拡大する目的には使用しないことを約束した。
不人気の増税法案を推し進めることで、野田氏は民主党政権の墓穴を掘った。川内博史民主党議員が述べたように、「[自民党政権下での]年金問題と社会保障に対する国民の不信と民主党の提案があったから、民主党は政権に就けた。[それが今や]民主党が自民党と化してしまった」のである。
野田首相の支持率は急落しているが、皮肉なことに、野田首相が、(※アメリカにとって)実際に指導する勇気を持った日本の指導者として例外的な存在であることは明らかである。野田首相は、自民党・民主党の5人の前任者よりはるかに有能だった。
野田首相が2011年3月の地震、津波、そして原発事故という3つの惨事の直後に就任したことを考慮すると、その業績は見事と言わざるを得ない。国民がさらなる原発事故の発生を恐れたため、日本の電気消費量の30%を供給していた原発のすべてを停止することになったのである。
野田首相の政治的手腕もまた予想をはるかに超えていた。例えば、2012年初頭に、日本のメディアは彼の政治的短命を予測したが、野田首相は政敵に打ち勝ち,物議を醸した法案の採決を押し切ることができた。さらに、民主党内部からの激しい抵抗と野党の議事進行妨害に直面しながらも、消費税増税法案を成立させることに成功した。また、日本が以前から約束していた武器輸出原則の緩和を実現し、米国政府を説得して二国間防衛協定を改定して米海兵隊普天間飛行場代替施設建設問題の進展という在沖縄米軍5基地返還の前提条件を切り離すことができた。
日本の政治の未来を語る際に驚くほど言及されない人物が、元民主党代表の実力者、小沢一郎氏である。「壊し屋」の異名を持つ小沢氏は、昔から、自らの当選確率を上げるためには自らが参画した政党や政策を見捨てることも厭わなかった。事実、小沢氏の唯一の一貫したイデオロギーは、その時点で有権者に最も人気がある選択肢であれば、中身がどうあれ頑なに信奉するということである。
しかし、小沢氏の人気も、選挙への影響力とともに、衰弱の一途を辿っている。現時点でもなお49人の国会議員の支持を得ているとはいえ、この取り巻きの多くは次期衆院選で落選すると見られている一年生議員である。そのため、小沢氏は目下資金と支持集めに奔走している。同氏が新たに結党した「国民の生活が第一」は、次の選挙では10議席しか獲得できないかもしれない。
先月の総裁選の結果、自民党は安倍晋三氏を新総裁に選出した。世論調査では、石破茂元防衛大臣、石原伸晃自民党幹事長に次ぐ3位であったため、安倍氏の勝利は驚きを持って迎えられた。第一回投票の結果、安倍氏は、地方支部役員や党員にはるかに高い人気を博す石破氏に次いで二位となった。国会議員のみが投票する決選投票で、安倍氏は派閥政治と人間関係のあやによって勝利を収めた。
石破氏が自民党総裁に選出されていたとしたら、来る総選挙での自民党の勝算は高まっていたかもしれない。安倍氏は国民には依然として非常に不人気である。有権者は、安倍氏が総理在任わずか1年で突然無責任とも取れる辞任の仕方をしたことに、まだ怒っているのだ。実際、2007年の参院選と2010年の衆院選における自民党の惨敗の責任を彼に求める声も大きい。
2012年の総裁選における勝利の後、安倍氏は、尖閣諸島に関して中国に対して毅然とした態度を取ること、米国との同盟を強化すること、そして日本がより大きな安全保障上の責任を引き受けることを宣言した。これらの問題に対する安倍氏の姿勢は、日本国内におけるナショナリズムの広がりと同調するものである。しかし、一部の有権者は、日本の最大の貿易相手国である中国に対して、安倍氏が度を超した対決姿勢を取ることを懸念している。
こうした懸念に道理がないわけではない。安倍氏は、前回の首相任期中、第二次大戦において日本軍がアジア女性を慰安婦として強制連行したことを否定し、また歴史教科書への日本の戦中行動の過小表記を可能とする法案成立を強行したことで、中国および韓国との関係に緊張を招いている。しかし一方で、安倍氏は、前任者の小泉純一郎氏がしたような靖国参拝を行わず、自身の最初の公式訪問先を中国とすることで自制を示している。
2012年の総裁選で勝利を収めた後、安倍氏は前述の懸念を和らげようと、次のように発言している。
「尖閣を巡る中国の様々な動きに対して、我々は、まずは、この尖閣、領海をしっかりと守っていくという意思を示していきたいと思います。その上において、私は6年前に総理に就任した際、最初の訪問国として中国を選びました。それは日中関係が極めて重要であるからです。日本は中国に投資をし、輸出をし、利益を上げています。中国の成長は日本の成長に必要です。同時に、中国も日本の投資によって、雇用を作り、日本から日本しかできないような資本財、半製品を輸入して、それを加工して、輸出をしています。言わば、お互いに切っても切れない関係ですね。そのことを認識しながら、両国は国境を接しています。世界中どこもそうですが、国境を接している国、様々な国益がぶつかる場合がありますね。国益がぶつかっても、今言ったようにお互いがお互いを必要としているという認識、これは戦略的に考えながら、そういう事態をコントロールしていこうと。この考え方に今も変わりはありません」
中国の地政学的な挑発が続いていることを受けて、日本全国にナショナリズムが台頭しつつある。その影響は、日本の政界再編に、またおそらくは来る総選挙にも及ぶ可能性がある。ただし、このような変化はほぼ対中国に限定されており、より広い意味での軍国主義の復活を示すものではないことに注意するべきである。
事実、中国の好戦的な態度は日本を従来の自己満足から目覚めさせ、戦後の極端な平和主義を放棄しようとする機運を有権者のあいだに拡大する契機となっている。こうした変化は、世代交代の産物でもある。戦禍を直接体験し、軍国主義を最初に拒絶した戦中世代が少なくなっているのだ。
結果的に、日本政府は、中国の領土拡張主義に対抗し、軍備を増強しようという機運を強めている。2010年の尖閣事件における中国政府の強硬で傲慢に映る態度を受けて、日本は新たな防衛戦略を採る方向に傾いた。世論調査によれば日本国民の70~80%が中国に対して否定的なイメージを持っていると答えたという。民主党は、政権の座に就いてから、外交および安全保障の分野でより保守的な政策を取り入れており、今や主要政党はすべて米国との強固な同盟関係を支持している。
ナショナリズムの覚醒する過程で、日本の軍事的脆弱性に対する国民の懸念が膨らんでおり、今や有権者は中国に対抗しうる強い指導者を求めている。世論調査によると、回答者の25%が軍備増強を支持しており、2009年の14%、1991年の8%から増加を見せている。防衛費支出の増加や集団自衛権および部隊派遣に関する法規解釈の緩和といった長年の懸案事項についても、大衆の姿勢は受け入れようとする方向に以前より傾いているかもしれない。
しかしながら、こうした改革が実施されたとしても、日本は、同盟国が攻撃を受けた場合に同盟国の防衛に参加できるようになるだけであり、アジア地域のメディアはまくし立てるように警告を発しているが、軍国主義の復活ののろしを意味するものではない。世論の右傾化は、日本国内では前例のない水準であるが、広く認識されているほどには、重大かつ危険なものではない。「ナショナリズム」ということばから大日本帝国の負のイメージが呼び起こされるが、日本は、他国が既に有する標準的ナショナリズムを獲得しているに過ぎず、それも最近中国において広範に見られた暴力的な反日抗議行動に比べれば、はるかに非好戦的なものである。
少数派を除けば、日本を軍国主義化し、米国との関係を絶つことを提唱する政党は国内に存在しない。安倍氏は、むしろ日本の安全保障政策を規定する法規に適度な改変を求めるとともに、引き続き日米同盟を堅持しようとするだろう。安倍氏は好んで中国と対抗しようとする姿勢を見せるが、中国政府と良好な関係を維持する重要性も理解している。
さらに、日本のナショナリズムに関して論じる場合、安倍氏の政治家としての経歴を切り離して考えることが重要である。日本の戦中行動に関する安倍氏の修正主義的発言は実に厄介であり、同氏がそうした発言に基づいて行動したり、首相として再びそのような発言をしたりすれば、不必要に地域の緊張を煽ることなるだろう。日本がアジア太平洋地域で有力な指導的地位を築くためには、断つ必要のある政治的関係もあるだろうが、安倍氏は無神経に乱暴を働くような行動は慎むべきである。ただ、安倍氏は、前回の首相任期中にはおおむね挑発的行動を慎んだ実績があるので、米国政府としては、不必要に歴史を書き換えることに政治力を費やすことがないよう、非公式に助言するのが賢明だろう。
日本の次期首相は、景気の低迷、膨れあがる公債残高、少子化、高まりつつある中国と北朝鮮からの安全保障上の脅威、そして薄れゆく国際的影響力など、いくつもの難題に直面する。
予想通り自民党が総選挙で勝利すれば、衆参両院における優位を確定し、過去数年にわたって民主党と自民党とが各院を支配することで生じていた「ねじれ国会」の状態を解消することができる。そうなれば、次期首相は政治的駆け引きに邪魔されずに政策を実行できるようになる可能性が高くなる。しかし、どの程度成功するかは、安倍氏が有能な人材を登用できるか(前回のような「お友達内閣」ではなく)、ならびに明確な政策ビジョンを策定できるかどうかにかかっている。
民主党が既に当初の計画を破棄し、自民党の政策を採用しているので、安倍氏が総理就任後に日本政府の政策方針を変更することはないだろう。新たな指導者の誕生によって、政策の変更ではなく、むしろ政策の加速がもたらされるだろう。この違いは重要である。
● 日本が安全保障分野で新たに採用したプラグマティズムの効果を高めるため、米国は以下のような行動をとるべきである。
1.他国に頼るばかりでは、日本が自国の海外利権を守り続けることは不可能であるということを明確にすること。日本政府は、国際的安全保障上の責任の負担を、大国としての地位に見合った水準まで引き上げるべきである。例えば、日本はシー・レーン(海上交通路)防衛の取り組みを強化することが可能である。
2.自国および同盟国の安全保障上の要求を十分に満たせるように、防衛費の増額を日本政府に促すこと。
3.日本が緊急時において同盟国を防衛することができるよう、集団的自衛権の解釈を緩和することを勧告すること。日本の自衛隊海外派遣隊が同盟国の資源をいたずらに消費するのではなく、効果的な貢献を行うことができるよう、日本政府は海外派遣についてもより現実的な法規を採択するべきである。
4.沖縄の普天間飛行場代替施設の建設について具体的な進展を見られるように日本政府に圧力をかけること。次期首相は支援を約束するだけでなく、日本政府の公約の履行に取りかかるべきである。
5.日韓の軍事・外交分野での協力拡大を奨励すること。例えば、情報共有に関する二国間協定である軍事情報包括保護協定(GSOMIA)を締結すれば、共通の脅威に対する同盟国の抑止力および防衛能力を強化することができる。
6.日米韓三国間の軍事協力を拡大すること。三国は平和維持作戦、テロ対策、核兵器拡散防止対策、麻薬対策、対潜水艦軍事行動、地雷除去、サイバースペース防衛、ならびに人道的支援および災害対応作戦について合同遂行の可能性を模索するべきである。
7.西太平洋地域において米軍の強力な前方展開兵力を維持すること。当該兵力は日本および韓国の軍事組織と緊密に統合するべきである。それによって同盟国共同の防衛力が調うだけではなく、日本の軍国主義の復活に歯止めがきかなくなるのではないかという韓国の懸念も和らげられる。
8.太平洋において米国の同盟国を確実に支援することを表明すること。米国政府は、引き続き相互防衛条約の不可侵性を確認するだけではなく、中国の不安を取り除こうとする取り組みを強調することをやめ、その代わり、米国が行動を起こすのは、中国の脅迫の試みが度を増すことに不安を覚えるアジア諸国から要請があった場合であることを中国側に明確に伝えるべきである。
9.安倍氏に、自身の修正主義的歴史観を押し通そうとしないよう非公式に助言を行うこと。安倍氏が提言するように、日本の戦中行動に関する過去の政府声明を撤回するようなことがあれば、東アジア地域に長きにわたってくすぶっている反感を不必要に刺激する事態になるだろう。むしろ日本政府は、韓国人の感情を満足させ、戦略地政学的な利益のためにこの地域にくすぶる憤りを利用しようとする中国の活動を終息に向かわせるような内容に、その償いと謝罪の声明を見直すべきである。
●結論
皮肉なことに、中国および北朝鮮はうかつにも地政学的状況を自らの不利な方向へ導いてしまったようである。中国が「平和的台頭」の体裁を取り繕わなかったこと、また北朝鮮がオバマ大統領の差し伸べた対話の機会を拒絶したことから、日本国民は、民主党政権の外交政策の甘さに嫌気を催すようになった。その結果、日本政府と国民のいずれもが、この地域の脅威に対する国の無防備さを強く自覚するようになった。
この無防備さに対処する第一歩は、日米同盟の再評価という形ですでに進行中のようである。次の段階としては、日本が自国の防衛のみならず、国際安全保障問題への取り組みについてもより大きな責任を負担する意欲を強めることである。こうした新しい動向は、米国の安全保障上の目標と合致するものであるから、米国としてもこうした動きを後押しするべきである。
日本の直面している難局を次期首相が切り抜けられるどうかは、アジア太平洋地域における米国の権益にとって極めて重要な問題である。近年の日本は、力の弱い指導者が続いて身動きが取れない状況に陥っている。日本の次期首相が主導権を握って、大胆な改革に着手しなければ、日出ずる国は黄昏を迎えることになるだろう。
(翻訳:菊池魁人・佐野円)