12月14日(日曜日)。☀☀。夜の間かなり揺れたけど、朝には波も穏やかで、気温も上がって来た。ニュージーランド南島の南端をぐるっと回って東側に出る途中で、今日も1日中海の上。でも、私たちの船室がある左舷の遠くに陸地が見える。朝ご飯のときは右舷にも島が見えたし、左舷の陸地には灯台のある町が見えた。地図によると、だいたい南島とさらに南にあるスチュアート島の間の海峡を通過中。次の寄港地のダニーディンまではまだずいぶんあるなあ。
ニュージーランド北島沖の火山島が噴火したときに島にいた47人のほとんどがその朝タウランガに着いたクルーズ船の乗客で、船会社がセットした1人3万円だかのツアーに参加した人たち。4日にシドニーを出たと聞いて、あ、私たちがシドニーに着いた日にサーキュラーキーに停泊していたあの船。私たちが乗っているSilver Museを持つシルバーシーの親会社であるロイヤルカリビアンのOvation of the Seasで乗客数最大4900人。あの日サーキュラーキーの公園を散歩していてすれ違った大勢の人たちの中にあの船に乗った人たちがいただろうし、もしかしたら噴火の犠牲になった人がいたかもしれない。運命と言ってしまえばそれまでなんだけど、警戒レベルが上がっているときに火口原に行ったのは火山をまったく知らなかったからだろうな。
近ごろの特に若い人たちは警戒心と言うか、危険なものを危険と判断する能力が欠けているような気がする。母親世代が子供の周りから心身を脅かすものをやみくもに排除して来た結果、子供たちは痛い思いをして危険を学んで身を守る知恵を蓄える機会を持たずに育ってしまって、どんなことをやっても大丈夫だと思い込んでいて、危ないことをしてケガをしたら真っ先に「責任者」探し。やってはいけないことをやってケガをしたのに止めてくれなかったヤツが悪い。どこを見ても普通に育ったいい子が遊びでドラッグをやって死んでしまったのは政府の規制が緩いせい。誰かに何か言われて傷ついたのは社会が悪い。近ごろのニュースメディアはそういう話でいっぱいという感じ。
水平線しか見えない大海の真っただ中にいると、人類は太古の時代から想像ばかりが先立つ未知の世界にありったけの知恵と勇気を振り絞って挑戦して、知識を積み重ねて進化して来たんだなあという感歎が湧いて来る。でも、技術の発達やソーシャルメディアの隆盛でその莫大な知識を有効に活用する知恵が退化し始めたんじゃないかという気がする。この世界には人間の思考力ではどうにもできない底知れない潮の流れがあるような気がするから、そういう宿命なんだとすればそれまでだけど、まったく新しい意味での「大航海時代」が来なければ、人間は頭でっかちのデータバンクでしかなくなってしまうかもしれないな・・・なぁ~んて。