12月16日(月曜日)。☀☁。うわ、やっと暖かくなった。目が覚めたらもうクライストチャーチの郊外にあるリテルトンに接岸していて、ベランダに出たら、わ、すごく急な斜面に家、家。そのてっぺんに教会の塔があって・・・と思ってググってみたら教会とは全く関係ない「タイムボール・ステーション」と言うもので、塔の上のボールを落として港の船にグリニッジ標準時を知らせていた、デジタル時代以前の航行システム。(ニューヨークのタイムススクエアで大みそかに落とすボールも同じ仕組みで、タイムボールとしてリストされている。)リテルトンのタイムボールはクライストチャーチの大地震で大きな被害を受けて、解体の準備をしているうちに大きな余震で倒壊してしまったそうで、今見えているのはその後7年かけて再建したもの。そういえば塔の頂上に大きな球体が見える。
今日のツアーは午後なので、ゆっくり朝ご飯を食べて、11階のジョギングトラックを8周。ほんとに寒くない。タスマン海を渡ってからずっとこれが夏?ってくらい寒かったから、風が冷たくないのはうれしいね。海そのものが温かな色合いだし。きのうのダニーディンもそうだったけど、ニュージーランドは地図を見ると海岸線が複雑怪奇で、港が入江の奥の急斜面に囲まれているところが多いみたい。日本列島と同様に環太平洋火山帯にあるので、太古の時代の火山噴火で流れた溶岩や降り注いだ灰が大地として固まりきらないうちにどんどん侵食されてこんな複雑な地形になったんだろうな。地球の自然の摂理は人間には目もくれないのだ。気候変動だって、人間の英知で制御できると考えるのは愚の骨頂。温暖化に加担しない努力を傾けることはできても、止めることはできないし、ましてや(ずっとずっと人口が少なかった)昔のレベルに戻そうなんてのは頭でっかちの現代人の驕りでしかないと思う。
市内を巡ると2011年の大地震で激甚な被害を被ったクライストチャーチは今も復興途中で、いたるところに空き地、草地があって、完全に復興するのにまだ20年はかかりそうという話。震源地は私たちの船が停泊しているリテルトンのほぼ直下だったそうで、驚くほどまっ平なクライストチャーチでは液状化で何万戸という住宅が損壊し、市内では大聖堂の塔が崩壊。一番多くの死者を出したテレビ局のビルは倒れるというよりも各階が折り重なるように(パンケーキ状に)潰れたという。犠牲者の名を刻んだ白大理石の壁が川岸の公園を守るように設置されていた。日本人の犠牲者の名前はローマ字つづりに漢字も添えてあるという。
いきなり足元から突き上げて来る直下型地震はマグニチュードが比較的小さくても大きな被害が出るから怖い。でも、液状化が激しかった区域には二度と住宅を建てることはないそうだし、市の中心部の新しいビルには日本から導入した免振装置が取り入れられているそうなので、クライストチャーチはしっかりと教訓を得て将来に備えていることは確か。午後6時、水先案内のボートに送られて、リテルトンを出港。キア・カハ、クライストチャーチ!