尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

五島軒とカール・レイモン-函館旅行③

2015年10月13日 00時03分08秒 |  〃 (温泉以外の旅行)
 どこで食べるか。一泊2食付の旅館泊だと考える必要がない。でも、街中のホテルの食事なしプランだから、食べに行かないといけない。それが魅力なんだけど。一度は行ってみたいなあというレストランは昔からあった。有名な洋食レストランの「五島軒」である。カレーのレトルトがスーパーなんかにも置いてある。スイーツ&デリカショップの案内映像に「五島軒と言えばカレー屋だと思っている人もいるでしょうが…」と自分で言っていた。函館に「レストラン雪河亭」があるのはガイドなどに出ている。どんなところだろう。フランス料理中心で、ドレスコードがあったりしたら困るけど…、ホームページを見ると千円以下のカレーメニューも出てるから大丈夫なんだろう。

 まあ、考えていても始まらない。場所はホテルからも近く、市電の「十字街」停留所からロープウェイ乗り場に向って坂道を少し登ったところ。すぐ判る。入りにくい雰囲気ではない。観光客だけでなく、地元の家族連れが気軽に食べに来ているようだった。カレーで有名という意味でも、新宿中村屋みたいな気取らない町のレストランという感じである。ということで、入ってみると結構いい雰囲気のテーブルに案内された。「函館エゾシカカレー」1200円というのがホームページに出てたから、そこらへんにしようかと思っていたのだが、ついついホームページに出ていない「伝承のロシア料理セット」2200円を頼んでしまった。とっても美味しそうだったので。
   
 まずはボルシチ。これが絶妙の味だった。とても美味しい。付いているのは「ピロシキ」だけど、揚げてない普通のパンに肉のミンチが入っている。ピロシキというのは「ロシア風揚げパン」だと思い込んでいたが、こういうのもあるのか。次は「サーモンとキノコのクリーム煮」(肉か魚か選べる)。サラダはビーツ。デザートに出たのは「クワード」というロシアケーキで、これがまた良かった。これにロシアンティー(イチゴジャムを入れる紅茶。コーヒーも選べる)が出て終わり。いや、思った以上の満足。

 明治初期に、埼玉出身の若山惣太郎と五島列島出身の五島英吉のふたりが、函館で出会ってパンや洋食の店を出した。明治19年にフランス帰りのシェフを雇ってフランス料理店とした。130年以上続いている。五島英吉という人は、本名が宗近治と言う五島藩の武士で、五稜郭で戦って敗れハリストス正教会に匿われたとある。「五島軒」というのは、長崎の五島列島から来ていたとは知らなかった。中興の祖と言われるのが、二代目の若山徳次郎で、帝国ホテルで修業の後、二代目を継いで終生厨房にたった。フランス料理やカレーを大正期に完成させたのも若山徳次郎である。というようなことは、「五島軒歴史散歩」という紙に書いてある。机に敷いてあって、読みながら待つのである。

 ここは奥が深く、レストランは新しいが、隣接して昔の建物が建っている。国登録の有形文化財で、昭和9年の函館大火で焼けた後、翌年に建て直したものだと言う。設計は亀井勝次郎で、この人は文芸評論家の亀井勝一郎の弟。古い建物に入っていくと、売店やメモリアルホール「蘆火野」(あしびの)があり、さらに2階があって個室利用ができるようで、様々なグループが使っていた。「蘆火野」というのは、作家船山馨(ふなやま・かおる)の作品で、五島軒が出てくるという。映像化、舞台化もされたと言うが、今では船山馨という名前も知らないだろう。この売店ではカレーのレトルト以上に、各種のケーキ、デザート類が多い。これも中村屋と同じで、まず美味しいお菓子屋さんである。とても良かったので、次の日もロープウェイから降りた後、また行ってしまった。手ごろなカレーでもと思いつつ、つい「明治の洋食&カレーセット」を頼んでしまった。まあ、これは普通かな。
   
 もう一つ、ぜひ行きたかったのが、「函館カール・レイモン」。これはソーセージやハムの店で、ドイツ人のカール・レイモンが大正時代に来日し、故郷の味を日本に伝えた。元町のロープウェイ乗り場やカトリック教会なんかに近く、もう20数年前に函館に行ったときにガイドを見て食べに行った。ものすごく美味しかったので、北海道のアンテナショップなんかにあると時々買って来る。だから、是非また行きたいなあと思って、今回も2日目に行ってみた。ホットドッグソーセージ盛り合わせしかないから、本格的な食事の場所ではないが、一度は食べたい場所。
 
 ところで、食べて帰ってしまうお客が多いようだったけど、是非2階の「カール・レイモン歴史展示館」も見ていくべきだ。カール・レイモンさんは、1894年に今のチェコのカルルスバードで生まれ、食肉加工を学び、ヨーロッパ各地やアメリカで修業した。帰国途中に日本に立ち寄り、旅館の娘だった勝田コウさんと愛し合い、国際結婚を認められずに、示し合わせて上海に駆け落ち。生家に戻って店を出すが、1924年に函館に戻って正式に結婚、函館駅前にハム店を出した。これだけで波乱万丈なんだけど、その後も満洲に行ったり、戦時中は工場を没収されたり…。戦後になって製造を再開し、添加物の少ない本物の味を日本に伝え、ドイツ政府や日本政府からも勲章を得た。1987年に死去したが、晩年は世界平和や欧州統合を願い、EUの旗をデザインしたという。死後の2004年に、チェコのカルロビバリ市の名誉賞を「欧州統合」への功労で受賞した。動物好きで、子どものために自宅裏に動物園まで作ってしまい、ライオンを飼ったり、晩年もカラスにエサやりしていた。すごい人がいたもんだと改めて感心してしまったです。じっくりと世界平和を願って味わいたいソーセージ。店の前に銅像あり。
  
 多くの人には「海鮮丼」が目当てかもしれない。僕はイクラやウニが苦手なので、まあ市場に食べに行かなくてもいいかなと思う。でも、好きな人にはたまらないような各種どんぶりがズラッとそろっている。ホテルの朝食でも海鮮丼を作れるところがあり、函館グランドホテルは1600円するけど、一日は「海鮮勝手丼」を作って食べた。イクラ、イカソーメン、まぐろ、サーモン、ねぎとろなんかがあった。もちろん、パンや普通のご飯もあるし、各種の惣菜もあるから、まあそのぐらいの値段分はある。でも、毎日ではお金もボリュームも大変なので、3日目は真前のコンビニで買って粗食デイとした。他にも、函館人の「ソウルフード」だというハンバーガーチェーン(だけど、カレーやパスタも出すらしい」「ラッキーピエロ」というのもあった。全くガイドには出ていないが、そういう地元では誰でも知っているところがあるわけだ。「函館塩ラーメン」というのも最近は有名らしいし、「函館ビール館」もある。また行って、いろいろ食べたいなあ。
コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ロマンと哀愁-函館旅行② | トップ | 恵山ドライブ-函館旅行④ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

 〃 (温泉以外の旅行)」カテゴリの最新記事