尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

謎が多いホルムズ海峡タンカー攻撃

2019年06月16日 22時32分59秒 |  〃  (国際問題)
 2019年6月13日、ホルムズ海峡日本の海運会社のタンカーが攻撃された。折しも安倍晋三首相がイランを訪問中で、13日にはイランの最高指導者ハメネイ師と会談した。タンカー攻撃は13日午前6時45分(現地時間、日本時間では13日午前11時45分)で、ハメネイ師との会談はマスコミや官邸HPでも「午前」としか判らない。まあ朝の6時45分に会談するはずはないが、タンカー攻撃の一報が入ったのとどっちが早いかは不明である。(当初は「砲撃」と報じた新聞もあるが、攻撃方法も完全には判ってないので今は「攻撃」としているマスコミが多い。ここでもそう表記する。)
 (炎上するタンカー)
 この事件は謎が多い。「日本のタンカー」とされるが、このタンカーは日本の海運会社「国華産業」が運航しているものの船籍はパナマである。(乗組員は全員フィリピン人。)もう一隻も攻撃されていて、そっちは台湾の会社で、乗組員はロシア人。国旗を掲げていたわけでもないし、攻撃勢力が「日本のタンカー」と認識していたかは不明だ。船籍で言えば「パナマ船」と書くべきなのかもしれない。ただ、どこの国の船であれ、安倍首相のイラン訪問中には間違いないし、「メンツ丸つぶれ」の事態ではある。

 アメリカは13日中にポンペオ国務長官が緊急記者会見を行い、「イランや傘下の武装組織による米国や同盟国への一連の攻撃」と非難した。「イランの革命防衛隊が不発に終わった水雷を除去するところ」とする動画も公開している。トランプ大統領も14日にテレビで「イランがやった」と発言した。一方、イランは全面的に否定している。イラン側に何のメリットもないし、公開された画像は「損害を受けたタンカーや乗員を迅速に助けられることを示しただけ」としている。

 イラン側が乗員を救助したのは確かだ。そもそも攻撃は水雷ではなく、「何らかの飛来物」だと会社側はしている。乗組員も見たという。タンカーはペルシャ湾からホルムズ海峡を通ってインド洋方向に向かっていた。当初は左舷が攻撃されたとしていたが、会社側は14日の会見で「右舷」と訂正した。攻撃地点はイランとオマーンの間だが、右舷だとするとオマーン側から攻撃になるのだろうか。水雷等の爆発物を密かに取り付けて時限装置で爆破させるなら、どっち側からでも可能だろう。しかし「飛来物」だとすると、どうすれば可能になるのだろうか。

 ホルムズ海峡では5月19日にもサウジアラビアのタンカー2隻が攻撃されている。この事件でもイランとアメリカの見解が真っ向から対立していて、まだ完全な解明がなされていない。当然アメリカは衛星などでこの重要地点を常時監視しているはずだが、その能力を完全に明かすわけにはいかないだろう。イギリスはアメリカに同調し、サウジアラビアイスラエルもイランの攻撃としている。しかし、このアメリカ同調国が怪しいとも考えられる。日本は現時点ではアメリカに同調せず、「証拠提示」を求めているという。(東京新聞16日)同時期にキルギスで開かれた上海協力機構にはイランのロハニ大統領が参加し、中国、ロシアはイラン支持を表明した。
 (安倍=ハメネイ会談)
 そもそも安倍首相のイラン訪問自体に解せない点が多い。日本はイラン核合意の当事国ではないし、歴史的にイランと友好関係があると言っても、トランプ大統領との親交を誇る安倍首相に両者の仲介が務まるはずもない。行っちゃいけないとまでは言えないから書かなかったけれど、イラン訪問が浮上してからずっと疑問に感じていた。参院選向けに外交の得点が欲しいのか。アメリカとは貿易問題で「密約」がありそうだし、ロシアとの領土交渉も行き詰まって、キム・ジョンウンとの会談もままならない。これから大阪でG20があるが、それに向け世界的大政治家イメージが欲しかったのか。

 イランにとってホルムズ海峡でタンカー攻撃をする利点が見当たらない。だがアメリカは革命防衛隊をテロ組織に指定しているし、だからこそイランは危険なんだと言うのかもしれない。その場合、イランは安倍首相を無視するだけでなく、コケにしたことになる。しかし、アメリカ側の発表を疑うならば、そもそもイラン訪問を安倍首相に勧めたこと自体がアメリカの謀略だったということにもなる。安倍首相は安易に国際政治家と気取って、国際的な罠にはめられたのかもしれない。僕には今の段階で真相は全然判らないけど、裏に相当大変なことがありそうな気がする。
コメント
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