尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

大阪ダブル選、「維新」圧勝をどう見るか

2019年04月08日 22時58分13秒 |  〃  (選挙)
 統一地方選前半の投開票が4月7日に行われた。東京新聞などは「自民の敗北相次ぐ」などと見出しをつけたが、僕の見るところ「安倍官邸の一人勝ち」だと思う。NHKの世論調査では安倍内閣の支持率が5%もアップしている。「新元号」効果はかくもすさまじい。安倍首相は遊説に出かけず、与野党対決となった北海道には菅官房長官が入った。結果は野党統一候補を全く寄せ付けない圧勝。

 一方、「自民」系候補が負けたと言われる大阪福岡島根も、要するに保守系に負けてるだけだ。島根は負けた方を竹下派や石破氏が支援した。福岡は周知のように麻生副総理の「オウンゴール」。大阪は「反維新」候補を二階幹事長が支えた。表だっては言わないだろうが、菅官房長官のホンネは「自民別働隊」の「維新」を今後の国会運営、改憲論議に向けて「温存」できて満足のはず。麻生や二階、石破が下がれば「菅官房長官」がアップする。

 ところで、大阪で行われたダブル選挙をどう考えればいいのだろうか。少し考えてみたいと思う。「維新」に対して、自民・公明に共産や立憲民主なども加わり反対候補を支援した。これを「野合」という声もあった。しかし、そんなことはないだろう。大阪の争点は「大阪都構想」である。憲法とか消費税ではない。都構想賛成派都構想反対派に分かれて選挙をしたというだけだ。わかりやすい構図ではないか。それなのに、どうしてこれほど差がついたのだろうか。
 (開票速報後の松井新市長と吉村新知事)
 僕が思い出したのは、2005年の小泉純一郎元首相の「郵政解散」である。郵政民営化法案は衆議院では自民党内に反対派もあったものの、からくも可決された。一方、参議院で反対派が多く出て否決された。参議院が問題なのに首相は衆議院を解散した。衆議院での反対派には「刺客」を立てて、「小泉劇場」が展開された。そして国民は熱狂して小泉首相を支持した。郵政民営化されあれば、日本の景気は爆発的に持ち直すとか言いまくっていた人たちは今どう思っているんだろう。

 今回も突然の「ダブル選挙」で、反対派は対応が遅れる。なんとか候補を立てても知名度に差がある。一方、ありえない選挙を行うことで、「維新劇場」が開幕した。明らかに府議選市議選相乗効果があり、府議会では過半数を占めたし、大阪市会でも議席を伸ばした。僕は郵政解散の時に「いくら何でもやり過ぎだろう」と思ったけれど、そうは思わない国民が多かったことになる。同じように、今回の「維新」のやり方も「いくら何でもやり過ぎだろう」と思ったけど、府民、市民はそうは思わなかった。ちょっと昔を思い出してみれば、容易に想像出来たはずだった。
 (検索したら出てきた維新のポスター)
 現職知事、現職市長は圧倒的に知名度がある。だから相手陣営の対立候補が決まらないうちに、突然辞職して選挙をすれば高い確率で勝利できる。こういう戦術を思いついた人が昔かなりいたらしく、それはおかしいと法律が改正された。最初は「辞任した人は同じ選挙に出られない」と決めた。それも大変なので、「辞任して再度立候補した人は当選しても元々の任期しか務められない」ことにした。今から50年以上も前の話である。

 しかし、今回の選挙は「知事が市長」、「市長が知事」と職を変えて立候補した。これは法の規制がない。だから「違法」ではないけど、法の趣旨(現職が有利なように時期を勝手に変えて辞職、再選挙することを制限する)に反している。「脱法」行為だ。ロシアのプーチン大統領が、大統領選に連続2回しか出馬できないので、メドベージェフ首相が大統領に回って自分は首相になって実権を握った。それと同じで、大阪はロシアになった

 「大阪都構想」そのものに関しては前に散々書いたから、詳しくは触れない。大阪市の財源を取り上げて大阪府全体で使おうという話だから、大阪府議会で「維新」が過半数を確保したのも理解できる。しかし、大阪市をなくしてしまおうということだから、大阪市民の住民投票では(仮にそこまで進展したとしても)またもめるだろう。大阪市、大阪府にしか関係しないから、もうあまり書く気はしない。

 今は「維新」と直接関係ないはずの橋下徹氏がテレビで「次の衆院選では公明党の現職議員の選挙区に候補を立てる準備が出来ている」「吉村知事が知事を辞任して衆院選に出るかも」などと発言したそうだ。「脅し」と「私物化」だと思う。しかし、ここまで大量得票したのを見たら、人生をかけて知事選、市長選に出てくれる若くて知名度も高いフレッシュな「反維新」候補者を見つけることは不可能に近い。もう「吉本」にも出る人はいないだろう。ロシアなんだから、怖くてプーチンに逆らえない。
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ザ・デストロイヤー、近藤昭仁、白石冬美等ー2019年3月の訃報③

2019年04月08日 19時46分09秒 | 追悼
 2回目は内田裕也と萩原健一だけ書いたので、他の訃報をまとめておきたい。芸能界、スポーツ界、学界にかなり亡くなった人がいた。スポーツ界というか、半分芸能界かもしれないけど、テレビや新聞の扱いが意外に大きくてビックリしたのがザ・デストロイヤーだった。3月7日死去、88歳。本名をリチャード・ジョン・ベイヤーというプロレスラーである。実は朝鮮人だった力道山に対する悪役レスラーとして来日したわけだが、日本で人気が出て親日家になった。「覆面レスラー」で知られ、「4の字固め」を必殺技にしていた。これは本当に有名で、男の子は皆知っていたと思う。

 プロ野球の大洋ホエールズ(DeNAベイスターズ)で活躍した近藤昭仁が27日に死去、80歳。弱小チームだった大洋は1960年に三原脩監督のもとで初優勝、日本一になった。近藤昭仁はその年に新人として入団し、日本シリーズのMVPになった。しかし、通算安打は1183、通算本塁打65だから、それほどすごい選手だったわけではないのである。同時期の大洋に近藤和彦という「天秤打法」という不思議なバットの持ち方をする選手もいた。名前が似ていて、僕はそれこそ「混同」してしまうことが多かった。現役引退後、横浜。ロッテで監督をしているけど、Aクラスになったことはなかった。
 
 第60代横綱双羽黒(ふたはぐろ)だった北尾光司が2月10日に55歳で死去していたことが判った。この人は「千代の富士一人横綱時代」に「連続準優勝」で、つまり一回も優勝せずに横綱に推挙された。そして親方と衝突して「失踪」してしまい「廃業」届けが出された。後の朝青龍、日馬富士をも超える辞め方である。その後の大相撲に大きく影響する事件だった。その後プロレスに入り、近年は闘病生活だったと伝えられる。

 声優の白石冬美が3月26日に死去、82歳。まあ「声優」であり、「巨人の星」やいろんなアニメを思い出す人も多いだろうけど、僕にとっては深夜放送である。TBSの「パック・イン・ミュージック」で、野沢那智と一緒に「ナッちゃん・チャコちゃん」の名コンビで聞かせた。中学から高校にかけて、ずっと聞いてた。今も声が聞こえてくる気がする。歌手の森山加代子が6日に死去、78歳。70年に「白い蝶のサンバ」が大ヒット、紅白歌合戦に4回出ているという。この歌は当時聞いていたときは、なんと早口の歌かと驚いたもんだけど、何十年かたって懐メロ番組で聞いたらあまりにもスローなのでまたビックリした。世のテンポはどんどんスピードが増していたのだ。
  (前=白石冬美、後=森山加代子)
生活評論で知られる吉沢久子が21日死去、101歳。朝日新聞の「おそうざいのヒント」、NHKの「きょうの料理」などを担当した。僕は読んでないけど、うちにたくさん本がある。
・有機化学者で、動植物の物質を解明した中西香爾が28日死去、93歳。世界的に知られた研究者で、文化勲章受章。
砂川しげひさ、6日死去。77歳。漫画家。
織本順吉、18日死去、92歳。俳優。
ジョレス・アルフェロフ、1日死去、88歳、半導体レーザーの研究でノーベル賞を受賞したロシアの物理学者。
ルーク・ベリー、4日死去、52歳。アメリカの俳優。「ビバリーヒルズ白書」で人気を得た。
バーナード・クリッシャー、元ニューズウィーク東京支局長。1975年に昭和天皇の単独インタビューを行った人。「戦争責任」を「言葉の綾」、原爆投下を「やむを得なかった」発言があった例のインタビューである。その後、カンボジアに英字紙を創刊するなどした。
ハワード・ヒベット、13日死去、98歳。日本文学研究者、谷崎潤一郎「鍵」などを翻訳。
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