尾形修一の紫陽花(あじさい)通信

教員免許更新制に反対して2011年3月、都立高教員を退職。教育や政治、映画や本を中心に思うことを発信していきます。

成果がなかった「野党共闘」ー衆院補選と統一地方選

2019年04月22日 23時15分57秒 |  〃  (選挙)
 2019年4月21日に、統一地方選の後半選挙衆議院の補欠選挙が行われた。衆議院補選では、大阪と沖縄でともに自民党候補が落選した。そこで新聞には「自民2敗」と書いたところもあるけど、それは情勢を読み誤っている。日本中さまざまだから、細かく見るといろいろな選挙結果があるが、概ね「変化なし」を日本国民は選んだというべきだと思う。沖縄と大阪は確かに国政与党が敗れているが、もともと自民の体力が弱いところだ。

 沖縄は野党共闘が勝利したには違いないが、もともと勝ち続けてきた共闘路線である。前回衆院選(2017年10月)と比べて投票率が10%以上低かったこともあり、前回の玉城デニー=95,517票が今回の屋良朝博=77,156票と大きく減らしている。対して自民票は比嘉奈津実=66,527票から今回の島尻安伊子=59,428票と減り方が少ない。前回の比嘉は比例で当選できなかったが、同一選挙区で二人候補者がいることになる。(比嘉は今度は参院選に出馬することになって、島尻と入れ替わりになる。)劣勢な沖縄で自民はそこそこ健闘したのだ。
 (沖縄3区入りした野党首脳)
大阪12区の結果は複雑なので後に回して、東京都の区長、市長選の結果について見てみたい。世田谷区では保坂展人区長が自民党推薦の女性候補を破って三選された。三鷹市では同じ保守系ながら元副市長が4回当選の女性現職を破った。いろいろなケースがあるわけだが、大体で言えば自公の支持する現職が圧勝した市区が多い。そして「野党共闘」で臨んだ選挙は壊滅的な敗北を喫した。

 中央区では自公推薦の70歳新人候補に対し、立憲民主、共産、自由、社民各党が推薦候補を擁立したが惨敗した。当選した山本泰人が約2万5千票野党共闘候補が9千票で、突然立ったジャーナリストの上杉隆の1万2千にも及ばなかった。大田区でも同様で、現職の松原区長の13万5千票に対し、4野党共闘候補は5万5千票ほど。前区議のもう一人の候補の5万6千票超に及ばなかった。板橋区でも同じで4野党教頭候補はダブルスコアの敗北。他にも「共産+自由」という組み合わせがいくつかあるが、どこも当選にはほど遠い。
 
 そのことは統一地方選前半の北海道知事選でも言える。今までの選挙では、現職が強いのは当然だが、新人同士の争いの場合なら「野党が共闘すれば勝てないにしても善戦はする」ものだった。今年の地方選挙では「善戦」にもならない。「野党はバラバラ」なのに対し、安倍内閣の支持率は今も高率を維持している。安倍内閣の政策に反発する層もかなりあるが、固定化されていて増えていかない。安倍首相がカムバックしてからすでに6年を経過している。かつての長期政権(佐藤栄作内閣など)では国民の中に「もう飽き飽き」感が充満していたものだ。

 6年経っても高支持率なのは不思議といえば不思議。何度か支持不支持が逆転しても、いつの間にか持ち直した。そしてまだまだ続きそうである。天皇代替わり・改元から東京五輪へと続く中で、世の中には現状維持を寿ぐムードが蔓延していくだろう。そういうなかで「野党共闘」は埋没している。何党がどうのというレベルを超えている。「冬の時代」が続く中で、いつの間にか「転向」する人も増えている。そんな時代に「正気)を保っていたいと思う。

 さて、大阪12区(大阪府東北部の寝屋川市、大東市、四條畷市)。維新藤田文武6万票で、自民党北川晋平4万7千票を振り切った。こうなると、さすが「維新」は大阪ダブル選以来の好調を維持していると思うだろう。ところが藤田は前回2017年衆院選にも出ていて、その時は6万4千票余りを獲得していたから、実は票を減らしている。前回の投票率は47.5%、今回は47%で投票者数もほぼ同じだから、維新が絶好調なら票を大きく伸ばしてもおかしくはない。2週間前の大阪府知事選では(投票率は大体同じ程度)、ここで維新の吉村候補が10万4千票を取っていた。

 それが維新候補が勝利したのは、特に公明票樽床伸二に流れたからだろう。この大阪12区は長年自民党の北川家(北川石松、北川知克)と民主党(新進党)の樽床が対決してきた。小選挙区実施以後、樽床4勝、北川4勝である。強い地盤を誇った樽床だが、民主党政権崩壊後は2回続けて大差で落選した。前回は「希望の党」から比例区の名簿1位で当選した。「希望」の小池都知事と「維新」が協力して「維新」擁立地区に「希望」は立てないということだろう。樽床がそれに反発して立憲民主か、少なくとも無所属で出れば当選できたのかもしれない。一度出馬を見送れば、地盤が荒らされる。今後の復活も難しいだろう。

 そして共産党は現職の宮本岳志を辞めさせて、無所属で擁立した。野党共闘を模索したが、結局自由党だけが推薦した。しかし、1万4千票ほどで惨敗である。これは非常に深刻で、「共産党票しか入らなかった」のではなく、2017年に22,858票を取っていたので共産票も大幅減なのである。それどころか、小選挙区制度になってから9回目の選挙で、最低の票である。宮本は大阪で参院議員、衆院議員に当選し、国会質問でも知名度がある。しかし調べてみると、岸和田市の出身で大阪12区との縁がない。それまでの候補を取り下げたこと対する反発はなかっただろうか。
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