今さらめいているけど、選挙制度に関して考えておきたいと思う。選挙が終わると、選挙制度への関心も薄れてしまう。そして負けた側は「選挙制度が悪い」と言ったりする。今回の選挙でも、負けた野党支持者の中には「小選挙区制度が悪い」というような意見が見られる。今回の選挙で、自由民主党は(追加公認を含めて)284議席を獲得した。これは全体の465議席のほぼ57%にあたる。しかし、比例代表区での自民党の得票は33.3%ほどだった。全体の3分の1しか得票していない政党が6割近い議席を占めている。おかしいじゃないかというわけである。
何となく納得したくなるかもしれないが、よく考えてみるとちょっとおかしい。自民党の284議席の中で、大部分を占めるのは小選挙区で獲得した218議席である。そして、すべての小選挙区で自民党と公明党は協力をした。だから、自民党の得票率だけ見て、自民党の議席を論じるとおかしくなる。比例区の公明党は、12.51%を得票している。(「日本のこころ」を含めた)与党合計では、45.93%。では、自民党と公明党は小選挙区ではどのぐらい得票を得ているのだろうか。
今回の小選挙区での自民党の得票率は、47.82%に達している。(追加公認を含まない。)一方、全国で9選挙区に候補を擁立した公明党は、1.5%を獲得した。合わせると、49.32%。しかし、埼玉11区、山梨2区、岡山3区では公認調整がつかず、二人の候補が無所属で立候補して当選した方を追加公認すると事前に決まっていた。だから、その3選挙区の無所属で立候補した2候補は両方とも自民票に加えてよい。ちょっと手作業をしてみると、2689万2457票となり、全体に対しては48.52%、公明票を加えると、50.0%になる。小選挙区で、投票した有権者の半分は自公の与党に票を投じた。
一方、野党側を見てみると、比例代表では19.88%とほぼ2割の支持を受けた立憲民主党だけど、小選挙区では擁立が少なかったこともあって、8.53%になる。小選挙区の野党第一党は、擁立数が多かった希望の党の20.64%。(比例の希望票は、17.36%)。共産党は比例で7.9%、小選挙区で9.0%。このような選挙結果をみると、自民党の議席数は確かに過大ではあるけれど、「自民+公明」の協力を前提にする限り、やはり「与党が国民に支持された」から勝利したのである。
「小選挙区は民意を反映しない」という人が時々いるけれど、これはおかしい。「民意」をどう考えるかの定義にもよるけれど、その選挙区で一番の人を当選とするんだから、これを「民意」と言わずして何と言うのか。アメリカ、イギリス、フランス、カナダなどは小選挙区制度である。それらの国の議会もみな、民意を反映していないと言うのだろうか。比例代表以外の政治制度は一切認めないというなら、それも一つの考え方だと思う。だけど、それで本当にいいのか。
いや、僕は何も絶対に小選挙区を支持しようと思っているわけではない。特に「比較多数」で当選するのはおかしいと何度も書いてきた。もし、小選挙区を続けるなら、フランスのように「決選投票」やオーストラリアのように「順位付け投票」のような制度にした方がいい。僕の考え方は、小選挙区にも比例代表にも問題点があり、最善の選挙制度などはないというものだ。そして、両方をミックスすればいいということで作られた、現行の「小選挙区比例代表並立制」はやはり問題が多い。
まず、比例代表制の問題点だけど、もし今回比例代表だけだったら、どのような結果になっただろうか。その前に言っておくと、今の比例代表は「ブロック制」を取っている。だから、四国ブロックなど議席が少ないところでは、小党が当選しにくい。そのため、自民党の得票率33.3%に対し、比例区の議席66というのは、比例区全議席の37.5%に達している。そういう問題があるわけだが、一応現行の仕組みを前提にして、ただ今回の比例区の当選者数だけで考えてみる。
そうすると、自民66、公明21、立憲民主37、希望32、共産11、維新8、社民1。
合計176だから、過半数は89。自公では届かない。しかし、圧倒的に自民が1位だから、自民中心の政権ができるのが自然だろう。維新を加えると、95議席になる。それで過半数にはなるけれど、議長や各委員会の委員長を出すと必ずしも万全の数ではない。そこを考えると、希望の党を連立に誘い込む方が安全だということになるだろう。もちろん、立憲民主党と希望の党を足すと自民党を上回るわけだが、選挙の経緯を考えると、この両党中心の連立は難しいと考えるべきだろう。
現在の日本のような発展した経済大国では、価値観の多様化や投票率の低下が起こってくる。だから、比例代表制の選挙をしている国では、過半数を単独で獲得する党は出てきにくい。日本でも比例区で過半数を取る党は今後も出てこないだろう。世界で見てみると、宗教的立場が重要視されるイスラエルでは、完全な比例代表制を取る国会(クセネト)120議席の中で、与党連合は61議席になっている。第一党のリクードは、政権党ではあるけれど、たった30議席しか持っていない。様々な右派政党、ユダヤ教正統派などが連立に加わるため、政策の融通性が欠けてくる。どこか一党が連立離脱を宣言すれば、政権が崩壊するわけで政治の安定性にも欠ける。
日本は事情が違うので、比例代表制度を取ると、「保守大連合」が恒常化する可能性が高いのではないだろうか。そして、過半数を獲得するために小党を連立に加わってもらう必要があるから、例えば「維新」がこだわっているような政策、カジノ解禁などが連立合意に入ってくる可能性がある。つまり、比例代表だと議席数だけは「民意」の通りになるわけだが、実際の政権を作る段階になって「民意」とかけ離れた結果になることも多いわけである。比例代表を中心としている国では、例えばドイツのように政党が分立して過半数を形成しにくいことが多い。じゃあ、どうすればいいのだろうか。特に先に「小選挙区比例代表並立制」は良くないと書いたが、それは何故か。それは次回に。
何となく納得したくなるかもしれないが、よく考えてみるとちょっとおかしい。自民党の284議席の中で、大部分を占めるのは小選挙区で獲得した218議席である。そして、すべての小選挙区で自民党と公明党は協力をした。だから、自民党の得票率だけ見て、自民党の議席を論じるとおかしくなる。比例区の公明党は、12.51%を得票している。(「日本のこころ」を含めた)与党合計では、45.93%。では、自民党と公明党は小選挙区ではどのぐらい得票を得ているのだろうか。
今回の小選挙区での自民党の得票率は、47.82%に達している。(追加公認を含まない。)一方、全国で9選挙区に候補を擁立した公明党は、1.5%を獲得した。合わせると、49.32%。しかし、埼玉11区、山梨2区、岡山3区では公認調整がつかず、二人の候補が無所属で立候補して当選した方を追加公認すると事前に決まっていた。だから、その3選挙区の無所属で立候補した2候補は両方とも自民票に加えてよい。ちょっと手作業をしてみると、2689万2457票となり、全体に対しては48.52%、公明票を加えると、50.0%になる。小選挙区で、投票した有権者の半分は自公の与党に票を投じた。
一方、野党側を見てみると、比例代表では19.88%とほぼ2割の支持を受けた立憲民主党だけど、小選挙区では擁立が少なかったこともあって、8.53%になる。小選挙区の野党第一党は、擁立数が多かった希望の党の20.64%。(比例の希望票は、17.36%)。共産党は比例で7.9%、小選挙区で9.0%。このような選挙結果をみると、自民党の議席数は確かに過大ではあるけれど、「自民+公明」の協力を前提にする限り、やはり「与党が国民に支持された」から勝利したのである。
「小選挙区は民意を反映しない」という人が時々いるけれど、これはおかしい。「民意」をどう考えるかの定義にもよるけれど、その選挙区で一番の人を当選とするんだから、これを「民意」と言わずして何と言うのか。アメリカ、イギリス、フランス、カナダなどは小選挙区制度である。それらの国の議会もみな、民意を反映していないと言うのだろうか。比例代表以外の政治制度は一切認めないというなら、それも一つの考え方だと思う。だけど、それで本当にいいのか。
いや、僕は何も絶対に小選挙区を支持しようと思っているわけではない。特に「比較多数」で当選するのはおかしいと何度も書いてきた。もし、小選挙区を続けるなら、フランスのように「決選投票」やオーストラリアのように「順位付け投票」のような制度にした方がいい。僕の考え方は、小選挙区にも比例代表にも問題点があり、最善の選挙制度などはないというものだ。そして、両方をミックスすればいいということで作られた、現行の「小選挙区比例代表並立制」はやはり問題が多い。
まず、比例代表制の問題点だけど、もし今回比例代表だけだったら、どのような結果になっただろうか。その前に言っておくと、今の比例代表は「ブロック制」を取っている。だから、四国ブロックなど議席が少ないところでは、小党が当選しにくい。そのため、自民党の得票率33.3%に対し、比例区の議席66というのは、比例区全議席の37.5%に達している。そういう問題があるわけだが、一応現行の仕組みを前提にして、ただ今回の比例区の当選者数だけで考えてみる。
そうすると、自民66、公明21、立憲民主37、希望32、共産11、維新8、社民1。
合計176だから、過半数は89。自公では届かない。しかし、圧倒的に自民が1位だから、自民中心の政権ができるのが自然だろう。維新を加えると、95議席になる。それで過半数にはなるけれど、議長や各委員会の委員長を出すと必ずしも万全の数ではない。そこを考えると、希望の党を連立に誘い込む方が安全だということになるだろう。もちろん、立憲民主党と希望の党を足すと自民党を上回るわけだが、選挙の経緯を考えると、この両党中心の連立は難しいと考えるべきだろう。
現在の日本のような発展した経済大国では、価値観の多様化や投票率の低下が起こってくる。だから、比例代表制の選挙をしている国では、過半数を単独で獲得する党は出てきにくい。日本でも比例区で過半数を取る党は今後も出てこないだろう。世界で見てみると、宗教的立場が重要視されるイスラエルでは、完全な比例代表制を取る国会(クセネト)120議席の中で、与党連合は61議席になっている。第一党のリクードは、政権党ではあるけれど、たった30議席しか持っていない。様々な右派政党、ユダヤ教正統派などが連立に加わるため、政策の融通性が欠けてくる。どこか一党が連立離脱を宣言すれば、政権が崩壊するわけで政治の安定性にも欠ける。
日本は事情が違うので、比例代表制度を取ると、「保守大連合」が恒常化する可能性が高いのではないだろうか。そして、過半数を獲得するために小党を連立に加わってもらう必要があるから、例えば「維新」がこだわっているような政策、カジノ解禁などが連立合意に入ってくる可能性がある。つまり、比例代表だと議席数だけは「民意」の通りになるわけだが、実際の政権を作る段階になって「民意」とかけ離れた結果になることも多いわけである。比例代表を中心としている国では、例えばドイツのように政党が分立して過半数を形成しにくいことが多い。じゃあ、どうすればいいのだろうか。特に先に「小選挙区比例代表並立制」は良くないと書いたが、それは何故か。それは次回に。