波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

  オショロコマのように生きた男   第45回

2011-11-11 15:41:32 | Weblog
村田に頼まれた初めての経験は宏にとっても貴重な経験にはなった。元来女性には自分から近づくと言うことを含めて、自分でも円が無いと思っていたし、第一縁結びのような事が自分の柄ではないと思っても居なかったことだ。
だから今回のように自分でも思っていない展開の流れになって、それが人の一生に少しでも影を落とし、影響するようなことになるとすれば責任を持たなければならなくなると考え、今までの自分を振り返りながら少なからず、責任を感じていた。
とは言いながら、今までの自分の考えを帰ることは出来ないだろうなあと思いつつ、いつものように普段の仕事に戻っていた。
「野間君、いよいよ君に仕事をしてもらうことになったよ。少し時間がかかったがね。」突然、木村専務から話が出た。
「どんな仕事ですか。」何も聞かされていなかったこともあり、突然なことで見当もつかなかった。しかし専務は宏の考えを聞き、していることを静かに観察し、それとなく根回しをし、社内の調整を図っていたらしい。
「前にも話したようにうちは長野に工場を持っている。その敷地の一角に新しい別会社を作り、そこで君が今まで開発してきた樹脂マグネットの成型をやってもらおうと思っているんだ。すべてを一任するので、君の考えどおり進めてくれ、うちにはこの仕事を理解できるものは居ないし、よろしく頼むよ」如何にも技術屋らしい専務の言葉であった。
ここまで信頼されていると思っていなかったし、こんな死後をさせてもらえるとは思っていなかった。自分の会社でなくてもある意味、自分の夢がかなったような気持ちでもあった。
「ありがとうございます。責任もってやらせてもらいます。」紆余曲折があったとしてもこうして、具体的に実現させてもらえたことは自分がやってきたことが間違っていなかったことを示していると自信も出来た。
長野には大きな工場が二棟ありかなり大量生産されていた。主にスピーカーに使用されるマグネットだったが、音響機器の需要の拡大とともに注文も旺盛であり、対応に追いつかない状態だった。専務とすればこの時期に乗じて、次の製品を手がけたいとの思いがあったのだろう。
野間は早速現地へ飛んだ。敷地の一角に新しい建屋を建てそこへ新しい設備を運び入れた。この日のために彼の頭にはすでに青写真のようなものは出来ていた。計画はスムーズに進み工場建設は順調に進んでいた。
ここからは外交のワークである。早速宏は今までの業界のユーザーをリストアップすると、注文をとるために動き出した。

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