経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

10-12月期GDP1次・2018年間はマイナス成長を記録

2019年02月17日 | 経済
 バレンタインデーに公表された10-12月期GDP成長率は、実質年率で+1.3%だった。前期の災害に伴う急落からのV字回復が期待されたが、半返しにとどまり、見た目とは違って、かなり重大な局面に至っている。実際、2018暦年の実質GDPは、前年10-12月期と比べ、わずかながらマイナスとなり、この1年間、まったく成長していないことが示された。輸出の増加が止まり、GDP比1%強の緊縮をした結果がこうであれば、次の2019年は、輸出が減退する可能性が高く、消費増税も敢行するわけで、再びのマイナス成長が懸念される。

………
 10-12月期の実質GDPは534兆円と、前年同期とほぼ同じになり、2018暦年でも534兆円にとどまって、この1年間は、まったく成長できなかったことが示された。一般的な暦年どうしの比較だと、2017年内の成長が影響するため、+0.7%成長となるが、直近の1年間はゼロ成長というのが実態に即した見方となる。そこで今回は、2018暦年と1年前の2017年10-12月期の数字を比較することによって、実態の分析を試みたい。

 まず、輸出は、ほぼ横バイである。2017年は勢い良く伸びていたのが失速した形だ。また、住宅投資も、貸家建設の節税ブームが去って、減少に転じた。さらに、公共投資は、2017年7-9月以来、6期連続の減少を続け、景気の足を引っ張っている。公的需要は、若干の増となった政府消費と合わせても、マイナスに終わり、この1年、成長にまったく貢献しなかった。他方で、税収や保険料が大きく伸び、財政収支は大きく改善している。

 次に、家計消費(除く帰属家賃)は、年の後半に、多少、上向いたものの、微増にとどまった。暦年の238兆円というのは、アベノミクスの始まった2013年1-3月期の239兆円よりも低い数字である。アベノミクスは、金融緩和で円安にして、輸出でGDPを伸ばし、緊縮で財政収支を劇的に改善した一方で、国民の生活水準は、少しも良くできなかった。2018年もまた、政策どおりの結果を如実に表したとしか言いようがない。

 2018年の成長で、一人気を吐いたのは、設備投資であり、1.8兆円増の+2.1%となった。背景には、景気を牽引する輸出が、停滞しつつも、小康を保ったことと、ゆっくりとではあるが、経済活動のレベルが着実に高まり、人手不足が進んできたことがある。景気拡大の段階としては、スターターの輸出等の3需要から自立し、設備投資が先導し始め、消費がついて来るという、在るべき姿に移行している。これを増税で壊すのは、もったいない。

(図)



………
 今後については、10-12月期は消費と設備投資が成長を支えたが、次の1-3月期だと、なかなか厳しいものがある。まず、家計消費(除く帰属家賃)は、消費増税前でさえ前期比+0.4位だったから、今回の前期比+0.65は、さすがに出来過ぎであり、消費総合指数の推移では、反動増の10月が高く、12月には、9月並みに戻ったため、あまり伸びないと見るべきだろう。加えて、1月の消費者態度や景気ウォッチャーが大きく落ち込んでいることも悪材料だ。

 また、設備投資に関しては、先行指標の機械受注は、12月分の公表前ではあるものの、10-12月期は、低下が見込まれる。製造業の設備投資に影響する輸出も、1月は下落する可能性が高い。残るは、鉱工業生産の資本財(除く輸送機械)の予測指数が上向きなだけだ。設備投資の自律的成長は、輸出が増えないまでも、崩れないことが前提であり、これが変わると、緊縮で弱々しい内需では支え切れず、景気の局面転換まで至るおそれがある。

 結局、「アベノミクスは、戦後最長の景気拡大」とされつつも、2018年7-9月期がピークだったことになるかもしれない。今回のGDP速報では、名目の原系列だと、2四半期連続のマイナス成長に陥っている。迫りくる景気後退の中、消費増税に挑むという、極めてまずい展開となりつつある。3月初めに、2019年度予算の衆院通過によって自動成立が確定し、悪い経済指標が出始めたら、緊急脱出プログラムを検討すべきだ。

 こんな情勢では、チャイナ・ショックでも、ハード・ブレグジットでも、避けられないのなら、早く起こってもらいたいくらいだ。誰もが知る目立つ出来事があれば、リーマン並みでなくとも、政治情勢は大きく変わるだろう。野党が面倒な条件を付けずに、増税延期への協力を申し出れば、与党は耐えられないのではないか。思えば、教育無償化が一気に具体化したのも、あの希望の党が増税凍結を言い出したことへの対抗からであった。

………
 アベノミクスの6年間で分かるのは、緊縮の下にある日本経済は、輸出が鈍ると、成長が滞るという単純な事実だ。2018年は、輸出増が停止し、ゼロ成長に陥るという、まさに典型となった。そんな日本経済で、輸出が崩れたら、マイナス成長へ転落すると見るのは、素直な見方ではないか。しかも、消費増税まで背負おうというのだ。日本経済は、いつも、なされた政策どおりの結果を残している。思いどおりにいかないと感じるのは、実際に何をしてるのかを知らないだけのことである。 


(今日までの日経)
 中国企業、ドル調達苦戦。日本の通信23位に転落。中国、住宅市場に変調。内需堅調、輸出に影 1~3月GDP 実質1.3%増。富裕層厚み、高額品攻勢 資産1億円世帯26%増。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2/14の日経 | トップ | 2/19の日経 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

経済」カテゴリの最新記事