経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

出生率の低下は経済的なもの

2024年06月09日 | 経済
 2023年の日本の出生率は1.20人となって過去最低を大きく更新した。こうした大きな低下は、中国、韓国だけでなく、フランスや米国でも見られる。こうした共通性があると、文化や社会の問題というより、経済の問題だろう。生活苦によって、低所得の若者が結婚や出産から脱落したというわけである。むろん、水準に違いがあるのは、社会的にどれだけ支えられているかによる。

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 日本の出生率の低下は、まだ続いていて、2024年には1.15人まで落ちると見られる。直近のピークだった2015年の1.45人からは2割も減る。子世代は親世代の55%になる計算で、子のない者を支えることにはムリがあり、子のない者の老後は、相当に悲惨なものになろう。社会保障が破綻するわけではないが、供給力の制約で大きく下げざるを得ず、他人の子供の温情にどれだけ縋れるかになる。

 子供を持つことは、投資であり貯蓄でもあるので、子供を持たない選択は、蓄えなく老後を迎えるのと同じで、働けなくなった時は死ぬ時と覚悟しなければならない。そんな覚悟で選択している者がどれほど居ろうか。カネに頼ろうとするなら、年金と医療で収入の23%ほどを積み立てる必要がある。結婚が難しい者がとても負えるものではなく、それができるくらいなら結婚していると思うはずだ。

 日本は、低所得の若者でも、税と社会保険料で収入の5割の負担をしている。近年は、奨学金の返済も加わった。これが結婚に影響していないとは、到底、思われない。他方、少子化対策は、子育て支援に大きく予算を割かれている。既に生まれた子供に出しても、その数は増えないので、効果はない。子育て支援は、これから生まれる子供だけを対象にしても、効果は同じであり、そうすれば、当面の予算は、ほとんど必要ない。

 ところが、日本は、効果の薄い政策を選択した。他方、そのための負担は、すぐに低所得の若者にもかかってくる。効果の高い非正規の育児休業給付や乳幼児の保育無料化は見送られてばかりだ。これらをこれから実現するにも、今回の負担増が政治的なネックになる。この失敗は、この国の将来を分けるような取り返しのつかない過ちになった気がして、深く憂慮している。

(図)


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 4月の家計調査では、勤労者世帯の名目の消費支出は前月比-1.6となり、可処分所得の-1.1に引きずられた形だった。賃上げを背景に、実収入が+0.4だったのに、負担増が帳消しにしている。6月からは、定額減税が始まって、こうした状況は変わるのだろうか。そして、来年は、どうする。減税の代わりに、低所得の若者の社会保険料を実質的に減免して、勤労者皆保険を実現し、非正規の育児休業給付を実現するなんてことになるのだろうか。結婚は政策的に増やせないとか言われるが、効果の薄いものばかりを選んでいる。そうなるのは、少子化は生活苦の問題だとは認めたくない心理なのかもしれない。


(今日までの日経)
 「低地に人・企業」誤算。ふるさと納税 消える税収5000億円。初任給上げ8割超で最多。地方は女性が稼げる環境を。ECB、4年9カ月ぶり利下げ。出生率1.20で最低 昨年、東京は1割れ。予算累計66兆円超でも続く少子化。社説・人口急減の克服へ社会の変革急げ。


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