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経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

1-3月期GDP2次・成長とイノベーション

2024年06月16日 | 経済
 1-3月期GDP2次速報では、名目成長率の前期比が+0.1%からゼロ成長に下方修正された。寄与度では、設備投資が-0.0から+0.1に上がり、在庫が0.2から0.1に下がっている。2次では総資本形成の内訳が分かるが、輸送用機械だけでなく、その他の機械設備等も下がっており、知的財産生成物だけが坦々と伸びている状況だ。自動車生産のアクシデントがあるにせよ、輸出も消費も低調で、正直、伸びる要素がない。
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 今週の経済教室では、日本経済復活の条件ということで、吉川洋先生や福田慎一先生が登場したが、お二人ともイノベーションに頼りすぎだと思う。成長率を高めるには、設備投資率を高める必要があるが、外需が輸出産業の設備投資を高め、輸出で稼いだ所得が消費を増やし、消費増が内需産業の設備投資を高めることで実現する。デフレの日本は、輸出が稼いでも、早々に緊縮で消費を抑制し、内需産業の設備投資を妨げてきたのが原因である。 

 設備投資は、イノベーションによってなされるというのは大切な要素だが、需要を満たすべく供給力を高める平凡な設備投資も不可欠である。そもそも、設備投資は、売れると見込まれる分しかなされないものであり、そのため、低成長では低投資、高成長では高投資が続くことになり、金融政策や産業政策では動かせない。外部から与えられる需要だけが設備投資率を高め、成長を加速するのである。

 デフレの日本では、せっかく外需があっても、緊縮で内需の波及を阻んだので、低成長が続いたし、今の米国は、コロナ後の積極財政で勢いがついてしまい、金利を大きく高めても、抑制できたのは引上げ時の住宅だけで、設備投資は高く維持されている。ゼロコロナで成長を落とした中国は、政治的に輸出ドライブを阻まれ、バブルが弾けて住宅で需要を作ることも難しく、苦境から抜け出せないままだ。

 経営者にとっては、リスクが取れないので、需要が見込める分しか設備投資をしないのはごく当たり前の現実だが、それは、利益を最大化する経済学の基本原理に反しているので、経済学者にとっては、まったく見えない現実になる。ゆえに、イノベーションに期待し過ぎてしまう。イノベーションは必要だが、それだけで十分ではなく、イノベーションを体現する設備投資を、需要のリスクを感じずにできるようすることが重要なのだ。

(図)


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 低金利でも設備投資の出ない日本、高金利でも設備投資が収まらない米国。そういう現実を目の当たりにしても、経済学の枠組みでは、金利に調整力がないとは思い至らず、効き目のある財政を調整しようという発想にならない。日本では、金利高騰による財政破綻を恐れ、低所得の若者の負担を重くし過ぎ、極端な少子化を招いて社会を持続不能にしてしまった。役に立たない金利のために、何でも犠牲にしてしまうのである。


(今日までの日経)
 日銀、国債減額「相応の規模」。児童扶養手当、11月に拡充。遠のく利下げ、FRB誤算 金利据え置き。日銀、緩和転換第2段階へ。給食費、自治体3割無償化。


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