去年の12月の日記にも書いていたが、その頃は卒論に苦しんでいて、何か癒しを求めていた時に『一号線を北上せよ』(講談社文庫)という沢木耕太郎氏の本を買った。
別に卒論に追い込まれていようといまいと、沢木紀行文特に『深夜特急』(新潮文庫)に多大なる影響を受けた自分だから、どの道衝動買いは免れ得なかったであろう。
それにしても長い間すっかり放ったらかしにしてしまった。大学生協で購入して半年が経とうとしていたのか。
でもようやく、読む時間を作る事が出来たので、読み進めていった。
何て事だ。文章がより洗練され、そしてより期待感と緊張感を、要は臨場感溢れる展開に圧倒されてしまった。
いや、人によっては、『深夜特急』のような無茶や冒険、そしてなんといっても貧乏を剥き出しにした、沢木紀行文を好んでいた人には、物足りなさを感じるかもしれない。
でも自分にとっては、真似し難い文章表現の巧みさと、描かれる独特の雰囲気に、堪らなく惚れ込んでしまった。
あと個人的な事情として、旅の舞台であるベトナムに、本を買う3か月くらい前に行っていたという事が影響していると思う。いや寧ろ、それがためのような気がしてきた。
高校時代、教科書に「風の学校」という文章が掲載され、物凄く惹き付けられた。それは中学時代の教科書に出た、椎名誠氏の文章以来の衝撃だった。国語の授業に魅力を感じない人間にとっては、実は天変地異に等しい世界の変わり様なのである。
そして高校の図書館で『深夜特急』の陳列を「地理」の書棚で見つけ、何故これが地理に分類されているのか不思議がった第一印象から一転、読み始めれば僅か1週間で1冊のペースで、全巻を読破した。読書嫌いな自分にとってはこれまた快挙である。
それくらい熱中していた高校時代を彷彿させた、いや寧ろ再燃した、今回の読書だった。
読んでいて今までの思い出が一気に蘇ってきた。
高校時代に熱中した、紀行文の乱読。沢木・椎名紀行文を皮切りに、様々の紀行文を求めていたことを思い出した。
そして、今までに訪れた、中国、タイ、ベトナムの暑い日々。あまりにも鮮明に蘇ってきた。これら東南アジアを旅するきっかけを作ったのも、9割がた『深夜特急』の影響である。
読書を通して、過去の旅の思い出にふれ、そしてまた旅をしたくなるアジアの誘惑に誘われる。
これほどワクワクさせる本は、自分にとっては沢木紀行文しか有り得ない。
さぁ、まだまだページは残っている。期待は膨らむばかりで、読み進めていくことが当分の至福の時間である。
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