JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

バランスライト3エレ

2010年06月28日 | 八木アンテナ
 山岳移動に特化した軽量でバランスに優れた3エレ(145MHz)。ラディックスのデイパック八木を参考にしました。通常、このバンドの八木はブームもエレメントも1m前後ですが、デイパック八木はすべて2分割できて、コンパクトに収納できるように工夫されたタイプです。4、5回山で使いました。性能的には申し分ありません。ただ、重さが600グラム以上あるのと、前方に比重がかかるため、三脚とのバランスに難があります。組み立てもいちいち蝶ナットで締め付ける必要があり、ナットを無くしてしまったりしたら、お手上げですね。これら問題点をクリアして、かつ、性能が同等のものをめざしてみました。




《材料》

・全長56センチのロッドアンテナ6本
・塩ビパイプ50センチ3本
・塩ビパイプのT型継ぎ手1個
・ブラスティック仕切り板1枚
・丸端子2個
・同軸ケーブル
・3ミリ径のボルト、ナットなど




《製作》

 基本はオーソドックスな3エレそのものです(略図参考)。一応、手順は次の通り。
・塩ビパイプに3ミリの穴をそれぞれ3カ所あけて、貫通させる。
・ブラスティク仕切り板を3センチにカットして、3カ所に3ミリの穴をあける。
・塩ビパイプの穴に導波器、反射器のロッドアンテナをボルトで固定する。
・同軸ケーブルの芯線、網線にそれぞれ丸端子をハンダ付けしておく。
・プラスティック仕切り板の両端の穴にロッドアンテナ、同軸の丸端子をボルトで固定。
 これが給電部。直接給電。いつものパッチンコアを取付けました。
・給電部の仕切り板を塩ビパイプにボルトで固定。これで輻射器完成。
・あとは2本の塩ビパイプをT型継ぎ手で連結して組み立ては完成。


給電部 プラスティック仕切り板にボルトで固定


給電部取付け 


完成


収納状態



《調整》

 ロッドアンテナの長さで調整します。はじめ、ラディックスとまったく同じ長さに合わせてみたのですが、中心周波数、SWRとも今ひとつでした。同じ寸法でも、エレメントの太さとか材質などで変わってしまうようです。そこで、輻射器は上下49センチに固定して、導波器と反射器の長さをいろいろと試してみました。その結果は、導波器が上下46センチ、反射器が上下56センチで、一応満足できる状態になりました。


AA-200での測定画像



 八木アンテナの調整というのは、きりがないです。中心周波数、SWR、FB比、帯域、パターンに加え、たぶん利得も微妙に変化します。どれを優先させるかは、好みと目的で決めるしかありませんね。当局の場合は、145.100~145.300の間で運用することがほとんどなので、その辺りに中心があって、かつ145.000を含めてSWR1.3以下であればOKということにしています。


《設営》

 T型継ぎ手に塩ビパイプを差し込み、カメラ三脚に取付けるだけです。三脚の真上に重心があり、安定感はまずまずです。また、アンテナ本体に同軸ケーブル2m、ポール50センチを加えた総重量は約400グラムとなりました。


《送受信実験》

 まず送信。いつもの定位置から出力0.8Wにてトリフィールドメーターで目盛を読み取ったところ、8まで振れました。モービルホイップ等に比べると明らかに強いですが、この値はHB9CVやモクソンアンテナと同等です。前方利得は3エレとしては少し弱めかもしれません。続いてベランダで受信。常置場所に設置している3エレ(固定用、こちらもラディックス製)と比較してみました。あくまで耳での感覚ですが、ほとんど変わりなく、違いはわかりませんでした。受信はまずまずかと・・・。


 雨の休日が続いて、なかなか山に行けません。次回の山行までもう少し調整してみます。仙台(旧東北帝大)ともゆかりの深い八木アンテナ、その振る舞いは一筋縄ではいかないようです。






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秣岳 天馬尾根

2010年06月15日 | 奥山 移動運用
 栗駒山から北西に、標高1400m程のなだらかな稜線が伸びていますが、これが天馬尾根です。そのピークが秣岳(まぐさだけ)。標高は1424m。QTHは秋田県雄勝郡東成瀬村。


秣岳山頂より栗駒山


 尾根全体が草原となって、随所に湿原もみられる、静かな山上の別天地。実は、移動運用を始めるに際して、最初に思い浮かんだのはこの山でした。この草原に腰を下ろして無線ができたらどんなにすばらしいか、と・・・。なかなか実現しないでいるうちに、岩手宮城内陸地震が起こってしまいました。

 2週間前、一関市から須川温泉までの道路が復旧したとの知らせを聞きました。地震から丸2年、今回、やっと思いがかないました。

 天馬尾根へは、須川温泉を登山口に、昭和湖、栗駒山への分岐を右折、秣岳を経て国道に下る、そして長い車道歩きで須川温泉に戻る、というコースが一般的かと思います。途中の岩頭からは、栗駒山中の秘境、龍泉ヶ原の湿原も一望できます。変化に富んた秀逸な周遊コースですが、いかんせん時間がかかります。今回は、天馬尾根からの無線運用が目的なので、秋田側から直登することにしました。

 この日は、朝からどんよりとした空模様。一関に着いた頃には弱い霧雨となっていました。どうなることかと思いながら、復旧した山岳道路を上っていくと、徐々に明るくなり、須川温泉では雲一つない晴天に。梅雨時、宮城県は雨、秋田、山形は晴れ、もしくは下界は雨で山上は晴れ、というパターンが多くなります。天気は梅雨モードに突入したようです。

 8時20分登山開始。ブナ林の道を一気に高度を上げて、約1時間で秣岳山頂に到着。尾根の最高地点なので見晴らしは申し分ありません。北に焼石連峰、西に鳥海山、新庄神室連峰、すぐ間近に虎毛山、高松岳。そして正面には圧倒的な存在感で栗駒山。ただ、ここは狭い山頂なので、落ち着いて無線運用するには適しませんね。さらに20分程進んで、天馬尾根の中間地点にある通称「岩のピーク」にて運用することにしました。草原に突き出た小ピークで、雰囲気の良さは山頂以上です。


須川湖方面


岩のピーク


 今回も装備はJ型アンテナとDJ-S17(145MHz 4W エネループ)。

 南東に栗駒山が立ちはだかっているので、どんな反射があるのか、見当つきません。ワッチしてみると、蔵王移動局が聞こえてきました。何度か交信いただいている局で59振切れで入感。後でお声掛けすることにして、さっそくCQを出してみました。北は岩手県九戸村、盛岡市、能代市、横手市、仙北郡など。西は酒田市、山形市、寒河江市、小国町など。南は福島県伊達市、福島市、郡山市。QTH(東成瀬村)が珍しいこともあり、宮城、山形、秋田、岩手県各局からほぼ途切れなくお声がかかりました。



 伝搬としては、まんべんなくどの方角にも飛んでいる印象です。仙台方面は、栗駒山が壁となって良くないと予想しましたが、何の障害物もないという感じの信号でした。こちらの信号も東成瀬村からハンディ機とは思えないとのレポートを各局からいただきました。北もFBです。九戸村(移動局)、盛岡市ともに59。ただ、7エリアのほぼ中央部に位置することや、標高がさほど高くないためかどうか、7以外の遠方との交信はありませんでした。




 この日は、仙台の局と交信中に比較的強い地震がありました。福島県沖を震源として仙台市内でも震度4だったそうです。こちらは地震と言われなければ感じない程度の揺れでした。大きな地震の前後に異常伝搬が起こるという話を聞きますが、今回に限って言えばそういうこともなかったようです。


 下山後、須川温泉下の「くりこま山荘」にて入浴。露天風呂からは、先ほどまでQRVしていた天馬尾根の稜線が、眼前に迫っておりました。



天馬尾根しろがね草原から虎毛山




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蔵王屏風岳 顛末

2010年06月07日 | 奥山 移動運用
 屏風岳。南蔵王の最高峰で標高1817m。QTHは刈田郡七ヶ宿町。宮城県側は険しい絶壁となっており、その名の通り屏風を広げたような形をしています。当然、北東から南東にかけて何も遮るものがありません。

 先日、栗駒山で交信いただいた8の局が、今度は雌阿寒岳からオンエアされるとのことなので、8エリア方向が良さそうな近場の山として、真っ先に浮かんだのがこの山です。何度となく登っていますが、ここに留まっての無線運用は初めてです。というのも、下から見るとたいへん迫力のある姿をしているのですが、実際、登ってみると、長い尾根道の通過点という雰囲気で、「あれ・・・、ここが山頂?」という感じなのです。なのでほとんどの登山者は、少し休んで、南屏風岳や不忘山をめざして先を急ぎます。そんな山頂ですが、無線に関しては、申し分のないロケーションのはずです。


屏風岳全景


 さて、前日は夕方まで本降りの雨でどうなるかと思いましたが、当日朝、雲一つない快晴となっていました。6時に自宅を出発。7時過ぎ、エコーラインから登山を開始しました。尾根に出ると、山形県側は一面の雲海が広がっていました。島のように浮かんでいるのは、朝日、飯豊、吾妻連峰などなど・・・。絶景です。早起きはするものですね。


遠くに朝日連峰


山頂付近


 目的の屏風岳には9時20分到着。二人ほど先客がおりました。軽く挨拶をして、さっそくアンテナ設置にとりかかりました。風もなく、絶好の移動日和。今回は、しばらくぶりに2/3λヘンテナを持ってきました。8の相手局が10エレのヘンテナとのことなので、こちらもヘンテナで偏波面を合わせたらなおFBかと・・・。リグはDJ-S17(4W エネループ)。念のためAA-200で測定してみると、SWRは1.2で問題なし。給電部までの地上高は2m。






 ワッチしてみると、天気がよいこともあって、移動局がちらほら聞こえます。肝心の8が聞こえないか、ヘンテナとVFOを回しながら注意深く耳を澄ましてみました。さすが標高1800mだけあって、ほとんどの周波数が埋まっています。かすかな信号が聞えたと思ったら、0エリアのローカル局だったりします。30分程ワッチして、結局、目的の信号をとらえることはできませんでした。その後、ローカルのOMから雌阿寒岳の移動局が145.04でオンエア中とのネット情報をいただきました。さっそくVFOを回してみると・・・・145.04は地元局同士のラグチュー真最中でした。もちろんフルスケール・・・。以前にも書きましたが、2mFMでDXを試みようとすると、常にこのケースがつきまといますね。お互いの移動地双方で、たまたまその周波数が空いているという希な前提条件があって初めて可能だということですね。もっとも、その条件を満たしても今回QSOできたかどうかはわかりませんが・・・。






 そんなわけで、8はとりあえずあきらめて、CQを出してみました。北は岩手県岩泉町の三巣子岳1182m移動局より応答いただきました。59-55。ハンディ機2Wにラディックスの分解式3エレをお使いとのこと。当局も2、3度使ったことがあるのですが、重さが600g以上あるので最近は物置に眠っています。安定した信号で、また引っ張り出して使ってみたくなりました。交信距離約200Km。南は、新潟県妙高市の関見峠の移動局と51-52(相手局のCQ)。標高1000m近くから5W、モービルホイップだそうです。QSBもなく終止了解度5で安定した信号でした。交信距離約260Km。続いて「・・・/0 長野県」の信号が聞こえてきました。こちらには42程で入感、コールサインなど十分了解できる信号でしたが、「呼んでいただいているようですが、コールサインが取れません。アンテナの耳が今ひとつで・・・」とのことでした。ヘンテナを慎重に合わせて、ねばってみたのですが、交信不成立。


 その後、耶麻郡北塩原村、小国町、尾花沢市、岩船郡関川村(杉ヶ峰にて)など多くの移動局にQSOいただきまたした。その間、時々、バンド内をワッチしたのですが、結局この日、8エリアの信号は聞こえずじまいでした。




芝草平より南屏風岳






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栗駒山 再訪

2010年06月01日 | 奥山 移動運用

標高1627m 宮城県栗原市


 2年前の6月14日朝8時43分、土曜日でしたが、この日は出勤日で仙台市内の路上を歩いていました。突然、轟音が鳴って、突風でも吹いたのかなと思ったら激しい揺れに見舞われました。最大震度6強の岩手宮城内陸地震で、この地鳴りは経験のないものでした。職場に着いて、テレビを見ると、栗駒山周辺の地形が大きく変わっている姿が映っていました。その後、山屋には馴染みの深い駒の湯や湯の倉温泉が濁流に呑まれ、水没していく姿を刻々とテレビを通して見守ることとなりました。

 あれから2年、登山口のいわかがみ平まで車道が復旧し、宮城県側の山開きが行われたことをニュースで知りました。登山ができるようになるまではもう少し時間がかかると聞いていたので、思いがけない知らせで、さっそく数年ぶりに登ってみることにしました。

 朝、目を覚ますと快晴とはいかないまでも、まずまずの天気。8時に自宅を出発、以前の記憶を辿りながらいわかがみ平までの車道を進むと、途中、テレビで見た山の崩落地は、車道のすぐ脇にありました。というよりも、車道のみを残して、すべて崩れてしまったという感じです。

 10時にいわかがみ平に到着。駐車場の半分は残雪で止められません。出遅れたこともあって、すでに7割程の駐車スペースが埋まっていました。


いわかがみ平


 解禁されている中央コースは、以前と変わらず、何事もなかったかのような風景がありました。コンクリートで固めた悪名高い登山道もそのままです。山頂直下の雪原を登り詰め、午前11時20分、数年ぶりの頂きを踏むことができました。登山自体はあっけないものですが、なにか感慨深いものがありました。崩落で山肌が痛々しいと思っていた荒砥沢ダム周辺は、上からは緑に覆われつつあるように見えます。視界も開け、北に焼石連峰、西は鬼首禿岳、新庄神室、そして鳥海山・・・。


東栗駒山方面


山頂直下


秣岳方面


 にぎわう山頂を避けて、尾根筋を進んだところで無線の準備を始めました。運用場所は広いというわけでもないので少し気を使います。目立たないようにJ型アンテナを持参しました。リグはいつものアルインコDJ-S17(4W エネループ電池)。




 電源を入れてVFOを回してすぐ「J・8・・・」のコールが聞こえてきました。さらに「/8」と聞こえました。こちらは電源を入れたばかりで、まだ体勢も整わない状態です。意表をつかれたまま応答したところ、「/7の局、再度どうぞ」とのうれしいコールバック。こちらが栗駒山山頂であることを告げて55のレポートを送りました。相手局は、なんと北海道様似郡様似町の移動局で、先方からも55のレポートをいただきました。「さまにまち」と言われてもよくわからないので、聞いてみたところ、「襟裳岬の近く、アポイ岳590m地点」とのことでした。Wikipediaによると、アポイ岳は日高山脈の南端にある山で、標高810.5m。地名の由来はアイヌ語の「アペ・オ・イ」(火のあるところ)だそうです。当局にとって、145MHzFMハンディ機による8エリアとの記念すべき初交信となりました。相手局は、10エレのヘンテナとのこと、QSBもなく、終止安定して交信できました。交信距離約400Km。そろそろ撤収を考えて最後のCQだったそうで、こちらがあと少しでも山頂到着が遅れたり、別のアンテナを持ってきて設営に手間取っていたら、出会うことはなかったと思います。相手局のFBな設備+双方のロケーション+偶然のベストマッチング。それにしても当局の貧弱なJ型アンテナからの信号がどうしてアポイ岳まで届くのか、不思議な感覚にとらわれました。

 一呼吸おいて、今度は、こちらからCQを出してみました。Xを待たしての運用なので1時間が限度です。北は青森県三沢市の固定局と59-55。秋田県横手市固定局と59-59。岩手県葛巻町移動局とは58-59。よく飛んでくれているようです。西は新庄神室の山々など複雑な反射があるようで、鶴岡市温海町の摩耶山(標高1019m)ハンディ局と52-54。同じ鶴岡市固定局とは51-59。こちらの信号は「カスカスでなんとか」とのことでした。酒田市固定局とは59-59。南は二本松市、標高877mの麓山ハンディ局と59-59。ロケの相性が良いようで、ハンディ機とは思えない強力な信号でした。距離約200Km。この他、岩手、山形、宮城、福島各局に呼んでいただき、後ろ髪惹かれる思いでタイムオーバー、QRTとなりました。ここは、北と南に通りが良く、すばらしいロケーションと思いました。やっと登れるようになった栗駒山。機会をみて、今度はゆっくりQRVしてみたくなりました。





  帰途、濁流に押し流された駒の湯温泉跡まで徒歩で行ってみました。駒の湯に下っていく道は以前のままで、ツツジが見ごろとなっていました。いつもの温泉宿が迎えてくれそうな錯覚にとらわれるのですが、行き着いた先には一面の土砂が広がっているのみでした。緑の山々も自然なら、この荒涼たる姿を作り出したのも自然なのでしょう。いわかがみ平まで車道ができる前までは、駒の湯は登山基地でもありました。Xは学生時代、生物部の合宿で二夜を過ごし、ここから山頂をめざしたそうです。ちょうど宿があったあたりには、立ち枯れの唐松2本が、寂しげに残っておりました。









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