JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

続ログペリアンテナ

2010年10月13日 | ログペリアンテナ
 熊野岳での運用で腑に落ちなかったログペリアンテナの動作。帰宅後、あらためて指向性の実験をしてみました。といっても、いつものトリフィールドメーターでの電界強度の測定です。

 測定の数字に単位はありません。15センチ程のハンディ機付属ホイップ(DJ-S17 145MHz 0.8W)でまったく振れない針がどの程度振れるかの測定。結果は?

◎ログペリアンテナ ELK 2M440L5
 フロント 8.0
 バック  1.5
 サイド  0.0

◎HB9CV(2エレ)比較のため
 フロント 8.0
 バック  1.8
 サイド  1.8

 何度か測ってみての平均値で、このような結果になりました。ログペリは計測器に対して45度ほど回すとほとんど振れなくなり、90度真横にするとまったく振れなくなります。送信に関しては、かなりサイドの切れるアンテナとみてよさそうです。

 次にベランダで受信実験してみました。ログペリとHB9CVを交互に取り替えて、どの程度回すと同じ局の信号が聞こえなくなるか、を聞き比べてみました。ちょうどコンテストで、移動サービス局の弱めで安定した信号が聞こえていました。結果は、やはりログペリの方が聞こえなくなる角度が狭くなります。厳密に測ったわけではありませんが、30度程度。HB9CVはそれよりブロードで120度くらいの範囲で了解できました。その違いは歴然でした。ただし、RSに関してはどちらも同等です。方向をしっかり合わせればログペリの方が良く聞こえるかと思って、何度か試してみましたが、そういうわけでもないです。利得は同等、しかし指向性に関しては2エレと5エレの違いなのでしょうか?

 熊野岳で感じた「受信は広範囲に信号を拾ってしまうが、送信はビームが鋭い?」というアンバランスは、この実験からはわかりませんでした。ただ、送受信ともサイドが切れることは確認できました。このことが、これまでのアンテナとどこか違う「違和感」と感じたのかもしれません。考えてみるとこのアンテナ、受信についてはとんでもなく広帯域なわけで、どのような仕組みでそれを可能としているのか、送信の際、どのエレメント同士がどのように同調しているのか、などわからないことばかりです(英文の説明書が付いていますが解説がありません)。

 さて、ホームでのこんな実験を終えて、2度目の実践投入。

 場所は吾妻連峰の高山(福島県福島市 標高1804m)。ここは、145MHz、430HMzともハンディ機で1エリアと交信できることを確認しています。今回も、ログペリ1本持って、2バンドの電波伝搬を試してみることにしました。リグはいつものDJ-S17(5W)とDJ-S47(4.5W)。

 この日、全国的に好天の予報でしたが、高速を南下中、暗闇に浮かぶ吾妻連峰は怪しげな雲で覆われていました。嫌な予感がよぎりつつも、磐梯吾妻スカイラインを登り詰めると、意外にもガスが薄れてきました。この山はこのパターンが多いです。紅葉まっさかり。道路沿いには多くのカメラマンが日の出を待っていました。


燕谷付近より

吾妻小富士

浄土平付近


 1時間弱の登山。高山山頂着はちょうど午前7時。ガスが切れて、福島盆地が見えていました。安達太良はすっぽり雲の中。

 さっそく、三脚にログペリを設置。まずは430。ワッチするとすぐに、東京都文京区のCQが聞こえてきました。強力な信号です。都内の高層ホテル32階室内からモービルホイップでオンエアだそうで、59-59。たぶん何も遮るもののない見通しなのだと思います。ラグチューモードで交信できました。これで都内向けアンテナ方角がわかりましたので、動かさないようにして、CQを出しはじめました。ところが、まさにそのとたん、突風が吹き付けて三脚の雲台が回転、アンテナは真っ逆さま・・・。雲台の締め付けが緩かったようです。ログペリ本体が約630グラム、これを50センチのパイプで持ち上げているので、当局の三脚で支える重量としては限界ぎりぎりです。





 方角を慎重に合わせて再度CQ。さっそく埼玉県久喜市固定より応答があり、51-51。茨城県つくば市の筑波山駐車場より55-55。モービルホイップ。さらに埼玉県川口市固定より59のレポート。12エレスタックとのこと。同じく川口市固定より55。こちらは15エレシングルとのことでした。いづれも距離にして200Kmから250Kmの範囲で、相手局のロケーション、アンテナ設備が良ければ、難なく交信可能のようです。南に方角を向けたままにしていたのですが、バック方向、山形県南陽市、宮城県石巻市固定からもそれぞれ59のレポート。南陽市は吾妻連峰をはさんで約50Km。石巻市は約100Km。使用感としては、スイスクワッドシングルと同等の実感です。今回は、さほど混信も受けず、福島、宮城、栃木各局にも応答いただき、15局ほど交信してQRT。


 続いて、145MHz。方角はそのままで、CQを出してみました。こちらはなぜか、バック方向から、宮城県大崎市と塩竈市固定から59。仙台市太白区からはハンディ機+モービルホイップで57。フロント方向からは、栃木県さくら市からハンディ機0.5Wとのことで41、同じ周波数で1エリアの局同士が交信中とのことで、混信のレポートもいただきました。どうりで応答がないはずです。相手局は混信の中、なんとか聞き取っていただいて、無事ファイナルとなりました。さらに茨城県桜川市固定と53-51。11エレスタックを向けていただいたとのことで、こちらは混信なく交信できました。桜川市までは200 Km程。今回はこれ以上の遠距離との交信はありませんでした。埼玉や千葉県らしい信号は時々聞こえてはいたのですが、QSOのチャンスはありませんでした。145MHzに関しては、あまり信号が伸びない印象がありました。どちらかというと、430の方がFBです。




 熊野岳で経験したような、どこからともなく混信がはじまる現象は、今回も145MHzで何度か見られました。山の上で運用していると様々なことがあるのですが、その中でも混信にはいつも悩まされます。聞こえすぎてこちらが混信になる場合もありますが、当局には聞こえず相手局の方が混信というケースもあります。こちらがCQを出しても、応答いただきたいエリアでその周波数が使われているというケースも考えられます。今回、ログペリのサイドが切れるとわかっていても、前方と後方の信号だけでも相当なものでした。混信を避ける上では有効なアンテナと思いますが、それも使いこなせて初めてできる話しで、慣れが必要ですね。


 撤収を終わってから、水平、垂直を切り替えての実験を忘れていたことに気付きました。相手局がハンディ機であれば、ホイップアンテナを水平にしてもらってRSの変化をレポートしてもらおうかと考えておりました。またの機会の課題としておきます。






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ログペリアンテナ使用記

2010年10月04日 | ログペリアンテナ
 アペックスラジオから購入したエルクのログペリアンテナ2M440L5。一度だけ近所で試験運用したまま、物置に眠っていたのですが、はじめて山で使ってみました。
 
 このアンテナの仕様をおさらいしておくと
・エレメント 5エレ(上下分割で10本)
・送信可能周波数範囲 135-155MHz、400-530MHz
・受信周波数範囲 110 - 1100 MHz
・ゲイン 144MHz帯8.7dBi、430MHz帯9dBi
・F/B比 20 dB
・ブーム長 約0.61m 
・重量約 635g
・耐入力 200W (FM)
・コネクタ M型
となっています。

 なぜ、購入したかと言いますと、ログペリアンテナそのものの構造に興味があったことの他に、
1)5エレのわりにブームが61センチと短く、ザックに収納できそう
2)エレメントが分割のねじ込み式
3)1本の指向性アンテナでVU2バンド可
など、山での運用に使えるかなと思ったからです。重さもなんとか許容範囲です。

 今回の運用場所は、蔵王熊野岳。土曜日で、応答があるかどうか不安でしたが、ログペリ持って登ってみました。

 リグはモノバンドハンディ機DJ-S17とDJ-S47の2台。共通バッテリーは予備含め4個。三脚、パイプ椅子、登山用具一式、ザックにこれらを詰め込むと、けっこうな重さになりました。当局が使っているのは、モンベルのクラシカルライト(30L)という日帰りには大きめのザックですが、61センチのブーム部分が少しはみ出します。すっぽり収納とはいきません。

 さて、この日は、絶好の登山日和。しかも紅葉もちらほら始まったということで、登山者や観光客らしい人まで続々と登ってきます。広い山頂ではあるのですが、無線をする雰囲気ではなく、少し下った熊野岳避難小屋近くの尾根に移動しました。

 組み立ては色分けされた10本のエレメントをブームにねじ込むだけです。エレメントは黒くて重そうに見えるのですが、アルミ製で驚く程軽量です。しかも太さがあるので、手袋を付けた状態でも難なく取付けることができました。この辺り、よく考えられているように思いました。ケーブル引き回しは、以前に実験したとおり、ぶらりと垂れ下げた状態がベストで、145、430ともSWR 1.2と良好。




 はじめに430MHz、DJ-S47に接続してワッチしてみました。驚いたことに、メイン周辺に空き周波数がまったくありません。いづれもアマチュア無線とは思えないような交信ばかりですが、とにかく何かしら信号が入ってきます。土曜日の午前中、ホームでは1~2局聞こえてくる程度、さすがに山の上はにぎわってますね。VFOを回しながら聞いてみると、主に、福島、新潟の信号のようです。なんとか空きを見つけて、CQを出してみたところ、二本松市、須賀川市など各局に応答いただきました。5局交信したところで、ひどい混信が出てきたので、QRT。受信では多くの信号が入るのですが、応答はいま一つ・・・。

 続いてDJ-S17に接続し直して、145MHz。こちらは430以上にバンド内びっしり。本当に空きがありません。ロケの良さもさることながら、よく聞こえるアンテナではあるようです。やっと見つけた空き周波数で何度も周波数チェックを入れてから、CQを出してみようとしました。ところが・・・。

「この周波数お使いですか?混信妨害与えておりませんか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
メインでCQ。
チェックした周波数に戻ってみると
「○×▽、×○□」(なぜか普通に交信している)
「???」

 というパターンが一度ならず何度かありました。不思議です。

 そんなことを繰り返しながらの交信。まずは南方向。福島県鏡石町、相馬市、本宮市から59のレポート。この山からは、相手局が平地の場合はいつもこの辺りが限界で、今回も同様の結果です。続いて北方向。一関市固定局より51および55のレポート。さらに山岳移動局、八幡平市の姥倉山とハンディ機で59-59。ハンディ機に8本の乾電池を使って電圧を上げているのだとか。5Wと思いますが、強力な信号でした。栗駒山山頂局もハンディ機2.5W、59-59。アンテナを回してみたら、バックでは53程度で入感。指向性の切れもまずまずです。ただ、430同様、聞こえるわりに、送信の伸びは手応えが感じられませんでした。

 交信中も、どこからともなく混信が始まってしまいます。構わず交信を続けてみたのですが、相手局には混信がないようで、なんとか交信はできます。混信の局の方はさぞかし、交信しにくいのでは?と思ったらそうでもなく、平然と普通に交信を続けているのです。妙な気分でした。このアンテナは、受信はブロードで広く拾ってしまうわりに、送信は指向性がはっきりしているのかもしれません。



 
 感想としては、1)145、430共に受信性能は高く、よく聞こえるアンテナ、2)送信については3エレ程度、動作が不明、3)受信と送信の能力(指向性)にアンバランスを感じる、4)癖をつかめば面白いアンテナ? といったところでしょうか。


 今回は時間も限られる中で、想定外の混信に悩まされ、勝手のわからないアンテナを前に一人混乱しておりました。習熟を必要とするアンテナのようです。ツイストマウント方式といって、水平と垂直を簡単に切り替えできるのも特徴で、機会をみて、偏波面による違いなども試してみたいと思います。




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黒いログペリELK 2M440L5

2010年07月05日 | ログペリアンテナ
 アペックスラジオのホームページを見て、以前から気になっていたVU帯の黒いログペリアンテナを購入してみました。ELKという米国メーカーの製品で、外国製は初めて。移動用や軍用アンテナを手がけている会社だそうで、輸入品なので時間がかかるかと思ったら、注文翌日には自宅に着いてしまいました。ログペリアンテナの現物を見るのも初めてです。

 Wikipediaによると、ログペリとはログペリオディックアンテナの略で、対数周期アンテナと訳されるそうです。「使用可能な周波数帯域が広く、鋭い指向性があり、多数のエレメントを持つアンテナである。インピーダンスと放射の特性は励起周波数の対数関数として規則的に繰り返す。八木・宇田アンテナと同じような構造で、隣り合うエレメント同士を逆位相に給電する。隣り合うエレメントの長さと間隔は対数関数的に増加している」。難解で理解不能。緻密な数値解析で設計されるアンテナのようです。八木と違ってすべてのエレメントに逆位相給電されるところは、HB9CVと似てますが、最大の特徴は広帯域という点にあるようです。今回の2M440L5も型番の通りアマチュアバンドの145と430の両方で送信できる仕様です。

 実際のところ、広帯域アンテナの用途って何なのでしょうか。受信用ならまだしも、送信も広帯域が必要な用途?何かの測定とか・・・?アマチュア的な利点としては、1本で多バンドOKなことや、バラツキが少なく安定的に使えるところでしょうか。山岳移動で指向性のあるアンテナを複数バンド使いたいというような時は、広帯域アンテナのメリットはあるのかもしれません。
 
《仕様》
エレメント 5エレ(上下分割で10本)
送信可能周波数範囲135-155MHz、400-530MHz
受信周波数範囲110 - 1100 MHz
ゲイン144MHz帯 8.7dBi、430MHz帯9dBi
F/B比20 dB
ブーム長約0.61m 
重量約 635g
耐入力200W (FM)
コネクタM型


ELK 2M440L5の一式


 パッケージには、給電部の付いた金属製ブーム、エレメント10本、マウント部品、手持ち用のポールが1セットになっています。ブーム長は61センチなので、少し大きめのザックでないと収納できません。重さはラディックスのデイパック3エレより少し重い程度。

 10本のエレメントは、黒いカバーで覆われたアルミ製で驚くほど軽量です。1本1本色分けされて、ねじ込むようになっており、組み立てで悩むところはありませんでした。


色分けされたエレメント

ブームにねじ込んで取付け

給電部

完成


 前方に給電部(MJコネクター)があります。並行した2本の金属ブームを通して各エレメントに給電される仕組みのようですが、それぞれのフェーズラインの構造は、今ひとつわかりません。上下各5本のエレメントは微妙に位置をずらしながら並んでいます。見た目でも八木アンテナでないことはすぐわかります。作りはいかにもアメリカ的で、よく言えばおおらか、どちらかと言うと自作アンテナに近いです。

 続いてELK独自のツイストマウント方式。水平、垂直どちらにも対応します。アンテナ本体の重量を中央で支えることになるので、バランスに優れ、三脚に設置した場合の座りも良さそうです。エレメントの取付け方法と言いマウント方式と言い、常設設置よりも移動運用を前提にしたアンテナと言ってよいと思います。ただ、マスト差込み口の直径が3.3センチあります。固定方法をいろいろ考えたのですが、この部分は三脚への取付けを考えて作り直すことにしました。


付属のマウント部品(上)と塩ビパイプで作り直したマウント(下)


《AA-200での測定》
 ベランダで測定したところ、予想外の複雑な波形になりました。中心も145に合っていないし、SWRもよくありません。広帯域という感じでもないです。コネクターが緩んでいるのでは?と思い、 点検しましたが変化なし。このアンテナ、調整する部分もないので、これではお手上げですね。



 ふと、水平設置ならどうだろうと試したところ、こちらはきれいな波形になりました。145MHzを中心でSWR1.1、+-10MHz程で2.0以下。送信可能周波数範囲135-155MHzの仕様通りでした。

 この時に、同軸ケーブルの引き回しによる変化があるのでは?と思い、垂直に戻して、実験してみました。英文の説明書には、引き回し方のイラストが載っています。またアペックスラジオのホームページにも設営時の写真が掲載されています。最初はこれを参考に、給電部から緩やかに曲げた上で、ポールに沿わせてみたのですが、上記の通りで、よろしくありません。結果的には、何もしないで、ぶらりと垂れ下げて接続するのがベストでした。給電部からある程度の長さを垂れ下げるというのがポイントのようです。この状態で、145MHzを中心にSWR1.2程度、+-10MHz程で2.0以下。これらは秋月電子の青いケーブルでの実験ですが、5DFBではさらに安定しました。ケーブルの種類でも多少違うようです。


この引き回し方はNG

こちらがベスト


上の状態でのAA-200の測定(レンジ違い上中下) 

(中)

(下)

 ちなみに、受信周波数は110 - 1100MHzとたいへん広帯域ですが、送信もこの範囲で可能というわけではなく、145から430まで通してSWRフラットというわけでもありません。それぞれのバンドで個別に同調するということのようです。実際に送信できる範囲は+-5MHz程でしょうか(145MHzの場合)。430についてはアナライザーが未対応なので、別の方法でそのうち試してみます。


《トリフィールドメーターでの測定》
 垂直設置でいつもの定位置から0.8Wで送信したところ、トリフィールドメーターの針は8まで振れました。先日作った3エレ八木やHB9CVと同等。見た目は5エレですが、ログペリというのは5本全てを一つの周波数に使っているわけではないので、利得は2エレ~3エレ程度と考えてよさそうです。この点は、仕様通りの性能が出ているように思いました。


《使用感》
 ベランダで簡易的に設置してIC-910につないでみました。ラディックスの3エレ(固定)と比較しながら受信したのですが、信号の強さは3エレがわずかに上、ログペリの方は信号が弱くともそこそこ了解できる印象です。夜遅く、酒田市鳥海山移動局と59-55で交信できました(相手局10W、当局30W)。

 翌日、設営の手順など練習のつもりで、大年寺山で運用しました。ログペリ本体はけっこう重みがありますが、重心が中央にあり、三脚でもなんとかOKです。さっそくRH770と取り替えながら聞き比べました。さすがに、ログペリの方がSで2~3つくらい違います。方角を合わせると、場合によっては42だった信号が57くらいまで振ってきます。一関市、石巻市などの移動局と0.8Wでも59-59で交信できました。


 簡単に考えていたのですが、同軸の引き回しなど、けっこう手ごわいアンテナでした。米国では水平偏波での使用が多いのでしょうか?






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