秋の夜長、マグネチックイヤホンを鳴らす実験用ゲルマラジオで毎晩、快適に聴いております。ふと、こんなに聞こえるのであれば、クリスタルイヤホンならコイル単体でも鳴るのでは?と思い、大型バーアンテナをつないで聞いてみました。なんと、かすかにではありますが、アンテナ、アースなしで聞こえるではありませんか。最大限の集中力を傾けて、何を言っているのか分かる程度。バーアンテナの向きを慎重に合わせると聞きやすくなり、窓際では、それなりの音量で聞こえます。スパイダーコイルや逆巻コイルも試してみましたが、まったく聞こえませんでした。これぞバーアンテナの威力?
ものの解説によると、フェライトコアというのは、日本人の偉大な発明だそうで、昭和12年に現在のTDKが世界で初めて製品化したのだとか。空芯コイルより誘起電圧が高くなることから、容易に小型化でき、インダクタンスを確保できるわけです。この発明がなければ、携帯ラジオの普及はなかったと言えるかもしれません。
では、逆にフェライトコアを大きく、長くすれば、どこまでも高感度なラジオができるのか?というと、今度はインダクタンスが増加して中波放送帯に合わず、コイルの巻き数を減らさざるをえなくなる、ということで、単純ではないようです。
そんなわけで、あらためてバーアンテナの実力を再確認してみることにしました。
前作の大型バーアンテナは、直径1cm、長さ16cmのフェライトバーを4本束ねて作りました。今回は、長さ14cmのバーを2本横につないで長くしてみました。直径は1cm、全長28cm。コイルは長さ3cm、リッツ線が巻いてあり、中間タップ付きの市販品を使いました。
材料一式
工作は、2本のフェライトバーを透明ボンドで接着して、コイルを通すだけです。コイルはバーの中央に配置しました。少しなら左右に移動させることが可能。
各タップ間のインダクタンスを測ってみると、
・右―中間 106μH
・左―中間 125μH
・左―右間 397μH
フェライトバーを2倍の長さにしたわりには、変化は少なく、これなら中波放送帯をカバーできそうです。
各タップはラグ板にはんだ付けし、クラシックゲルマラジオに装着してみました。組み上がってみると、28cmの横長バーアンテナはなかなかの迫力です。昔のBCLラジオを彷彿とさせるような・・・でもないか。
クラシックゲルマラジオに装着
みの虫クリップでタップ切り替え
さっそく、アンテナ、アースを付けないで、ゲルマラジオ単体で聞いてみると・・・思いのほか大きな音でNHK第一が耳に飛び込んできました。続いて、かすかながらNHK第二も。東北放送は耳を澄ましても聴こえてきませんでした。NHK第一に関しては、十分な音量。まだ、じっくり比較したわけではありませんが、バー4本を束ねたものと同等、指向性はこちらの方が強いようです。窓際から3メートルほど離れた室内でも聞き取れます。分離も良好。
それならマグネチックイヤホンではどうか、ということで、トランスを接続して聞いてみると、NHK第一のみ、なんとか聞くことできました。ただ、窓際の受信環境の良い所でないと聞こえません。周りに騒音があると、かき消されるレベル。それでも、予想を上回る実力と言えるのでは?
ラジオ少年通販の20kΩ:8Ωトランスに接続
アンテナ、アースなしの無電源ラジオで、マグネチックイヤホンを鳴らしたいという課題は、これで一応クリアできたことになります。でも、満足できるレベルかというと、まだまだ。空中に漂う電波を効率よく誘起電圧に変え、大きな音量で鳴らす、コイル作りの楽しみは続きます。