『ぼくらの鉱石ラジオ』という本の中には、多種多様なコイルがイラストで紹介されています。例を挙げると、8の字コイル、クラウンコイル、バスケットコイル、ハニカムコイルなどなど。現物は見たことありませんが、イラストの形を見ると、なるほどと納得させられます。少しでも効率よく聞こえるようにと、先人たちはあくなき追求を続けてきたということでしょう。そんな中で、ゲルマラジオと言えば、もっともなじみの深いのがスパイダーコイルかと思います。自分も数十年前に、「科学と学習」の付録で巻いたことがあります。部品点数の少ないゲルマラジオにおいては、コイル巻きがもっとも興味深くもあり、工夫のしどころでもありますね。
といっても、今回、特に工夫もなく、「スパイダーコイルを巻いてみたい」というそれだけの理由で、作ってみました。巻枠と線材がセットなったものを科学教材社から購入。一式420円。直径9cmの巻枠と0.5mmポリウレタン線(長さ12m?)、固定部品、ネジ、巻き方説明書のセットです。
巻き終えたコイル 固定具、ネジも付属
巻始めと巻終わりは枠先端に取り付け
巻枠は紙製で15本の枠があります。3か所穴をあけて、折れないように慎重に巻きました。巻き方は二つの枠を飛ばして交互に巻いていきます。なんだか懐かしいです。説明書きでは20回目でタップを出すとありましたが、1か所ではどうかと思い、35回目と52回目にもタップを作り、全部で70回巻きました。50回目にタップを出そうかどうか迷っている内に、52回巻いてしまいました。直径が0.5mmの線材なので巻きやすく、タップ出しも楽です。
いつもの通り、LCRメーターで容量を測ってみると
20回巻き 19μH
35回巻き 58μH
52回巻き 168μH
70回巻き 385μH
20回巻きでは、わずか19μHしかないのです。はじめ、何かの間違いかと思いました。そして、巻き数が増えるにつれて、加速度的に容量が増加。巻き数が増えるごとに、1周が長くなるこのコイルならではの現象なんですね。
さて、巻きあがったスパイダーコイル。今回は、これまで作ったゲルマラジオの外付けコイルとして使います。かまぼこ板と角材の上に設置し、色もクラシック調に統一してみました。また、みの虫クリップで接続できるように、各タップをラグ板にはんだ付けしています。
さっそくタップを変えながら聞いてみたところ、NHK仙台第1(891kHz)は52回巻タップで最も強く入感し、塩ビパイプのソレノイドコイルより音量はほんの少し小さめでした。分離はスパイダーコイルの方が良いです。ソレノイドコイルの時は、NHK仙台第1が圧倒的な強さで入感し、バリコンのどこを回しても音声が消えず、一部にNHK仙台第2が混じって聞こえるという状態でした。スパイダーコイルでは、バリコンを回すと音声が消える箇所があり、NHK仙台第2も混信はするもののそれなりに聞こえます。もし、20回巻きタップ1か所だったらこのコイルの評価はもっと下がっていたと思います。3か所のタップで正解でした。昼と夜とでは聞こえ方が異なり、タップの位置を変更することもよくあります。タップは多いに越したことはありませんね。
みの虫クリップを多用し、回路変更やコイル交換が楽にできます
『ゲルマラジオ製作徹底ガイド』という本には、これを巨大化し、なんと直径70cmのスパイダーコイルが紹介されていました。そこまでいくと、コイルというよりもループアンテナと言った方が良いのかもしれません。当然、外部アンテナなしで聞こえるそうで、大型化すれば、それだけの効果はあるようです。
残念ながら我が家の狭いベランダは、すでにアマチュア無線用アンテナで占められ、これ以上のスペースはありません。なので、当面はひたすら小さいコイルでいかにQを稼げるか?ということを考え、先人の足跡に一歩でも近づければと思います。