JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

分割巻きスパイダーコイル

2021年03月28日 | コイル作り


 小学何年だったか、学研『科学』というのがあってその付録で作ったのが最初のゲルマラジオです。子どもにとっては手ごわい付録で、慎重にスパイダーコイルを巻いたことを覚えています。その記憶が懐かしさを思い起こさせるのか、時々このコイルを巻いてみたくなります。平面でかさばらないこと、比較的大きな直径で巻けること、線同士が重ならず浮遊容量が少ないなどの特徴があり、昔の鉱石ラジオの定番でもあったようです。ただ、型枠の羽に交互や2本飛ばしで巻いていくとごちゃごちゃした感じになって見栄えが良いとはいえません。なにか方法はないものか? ふと、自在ブッシュを使って分割巻きにしたらどうなのだろう? 性能的にも期待できるのでは?と思い立ちました。でもスパイダーコイルの分割巻きって? とりあえずものは試し、巻いてみることにしました。


<材料>
厚紙で作った巻き枠 外径12cm 羽13枚(以前に作ったものを再活用)
ポリウレタン線 太さ0.35mm
自在ブッシュ 溝6個
木製台座、取付金具(再活用)




<製作>
 巻き枠の羽の表と裏に自在ブッシュを両面テープで貼り付けていきます。羽の寸法によりブッシュの溝は6個。定番通り羽2枚飛ばしで巻くと途中で混乱しそうなので、交互巻きとしました。溝に沿って表、裏と交互に巻いていきます。初めての巻き方なので、どの程度巻くとちょうど良いインダクタンスになるのか見当つきません。1つの溝に4回巻きで試し、最後に調整することにしました。1周したら同じ溝に合計4回巻いて、次の溝へ。溝に引っ掛ける感じで巻いていきますが、とても巻きにくいです。集中力がだんだん落ちてきて溝を間違え戻って巻き直し、の繰り返し。何回巻いたのかもあやふやになり、途中、5回巻きになったところもあります。タップは2ヶ所で取りました。最後の6個目の溝を4回巻き終わった時点でインダクタンスを測ったところ110μH。少なすぎ。そのまま追加で5回巻いて再度測ったところ155μHとなり、これで良しとしました。合計巻き数はたぶん32回。分割巻きの効果か、インダクタンスは予想したより抑え気味な感じで、1つの溝に6~7回巻きでも良かったかもしれません。













 台座に取り付け、さっそくゲルマラジオ実験ボードにつないで聞いてみました。外部アンテナ、アースなし、コイル単体でNHK仙台第一が聞こえてきました。仙台第二は受信不可。前回作ったロの字ループコイルの鉱石ラジオよりもかなり音量低めです。一番外側のコイル外径で10.5cm、かつ細い線材なのでこんなものでしょう。単体で受信できただけでもまずまずと言えるのかもしれません。本当はリッツ線を使いたかったのですが、ちょうど良い太さのものがなく、ポリウレタン線を使いました。性能はいまひとつな感じですが、スパイダー+分割巻き、見栄え的には悪くないような気がしています。課題も見えてきたので折をみて改良してみます。




 多くの人に作られ、語り尽くされた感のあるスパイダーコイル。それでも、巻き方ひとつとっても試してみるべき方法が残されているように思わなくもありません。線材を変えたり、巻き数を調整したり、巻き方を工夫したり、それによって出来栄えやちょっとした性能の変化につながる、そこがコイル作りの面白さかな、と思います。






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鉱石検波考

2021年03月20日 | ゲルマラジオ


 自らは電源を持たず、細々とした電波のエネルギーを捉え、それをわずかな電気に変え、目的の周波数から音声を紡ぎ出す、無電源ラジオの奥深さにはまってしまうと、なかなか抜け出せない魅力があります。そして、技術の進歩に逆行する鉱石そのものによる検波。もの好きと言われればそれまでですが、実際試してみてやはり捨てがたいものがあります。


 第一に音質の良さがあります。ゲルマニウム単結晶や紅亜鉛鉱(ジンカイト)はとりわけ良好で、調和のとれた厚みのある聞き疲れしない音を聞かせてくれます。いろんなダイオードを試してみましたが、これまでのところ、これら鉱石に勝るものはありません。異なる鉱石同士の接合検波ではさらに高音質が得られ驚かされることがあります。この点は続行中です。


ゲルマニウム単結晶


 第二に感度。当所、1N60や1N270などのダイオードには及ばないとの感触だったのですが、必ずしもそうでもないと思うようになりました。適切な検波位置を探り当てると突如大音量となり、ダイオードに劣らぬ性能の高さを実感できます。定番として知られる方鉛鉱や黄鉄鉱では聞こえることは聞こえますが十分な感度は得られません。シリコン原石や精製品も同様です。自分の経験では紅亜鉛鉱とゲルマニウム単結晶がこの点でも優れています。Vfが極端に低くなる箇所が存在するということでしょうか。


 第三に欠点ともいえるのですが、電波の揺らぎ?が感じられます。鉱石の一点に検波針を当て、かすかな音声が聞こえてきたとします。その状態のまましばらくするとじわりと音量が上がってくることがあります。またその逆もあり、あたかも大きなフェージングに見舞われているような感覚になります。単に表面の酸化によるものなのかもしれませんが、電波の底知れないエネルギーのようにも、あるいは鉱石と対話しているようにも感じられ、先端デバイスにはない独特の味わいがあります。信号が安定しないということでもありますが、これはこれで気に入っています。


紅亜鉛鉱(ジンカイト)


 そして鉱物(石)が検波することそのものの現象、天然の整流作用、その神秘さにはまっています。検波の際、針で探るという行為もなにかのメッセージを受け取る儀式のように思えなくもないです。プロセスを踏まないとメッセージは受け取れず簡単には聞こえてこない・・・ひと手間かけた体験を伴うところに独特の面白さがあります。


 いろいろなものを付け加えて性能を高めるのではなく、どんどんそぎ落として、そぎ落とした中に電波のエネルギーを感じ取り、原初的な音を聞く。先人たちは意外にも感度良く良質な音で聞いていたのでは? こんなふうに遡って追体験してみると、消え去った中にもなにか掘り起こすべきものがあったのでは? などと考えてしまいます。





コメント (2)
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鉱石接合検波を試す

2021年03月13日 | ゲルマラジオ
 検波とは変調の乗った信号から元の信号を取り出し復調することですが、既成のデバイスに頼らず天然あるいは準天然石のみでその作用が得られること自体、驚きがあります。鉱物にそんな力が内在していることに自然界の妙というものをいつも感じてしまいます。異なる鉱石同士を接合させることでより安定して検波することは、以前にも実験したことがあります。鉱石検波の面白いところはいろいろな石を組み合わせて試せるところで、それによって検波が安定したり、音量や音質が変わったりします。





 先日製作した鉱石ラジオを使ってあらためて試してみました。はじめカートリッジ方式の鉱石の上に別の鉱石を載せてみましたが安定感がなく、途中からアクリルパイプを使うことにしました。

 <2種類の接合検波>
 ゲルマニウム単結晶と斑銅鉱
 ゲルマニウム単結晶と紅亜鉛鉱
 ゲルマニウム単結晶と方鉛鉱 
 紅亜鉛鉱と斑銅鉱






 ゲルマニウム単結晶と組み合わせた接合検波は初めてです。どの組み合わせも音量が大きくなるわけではないものの落ち着いた音質に変化する感じがありました。特に斑銅鉱との接合では検波ポイントが探しやすく、一度探り当てると安定した状態が続くようです。方鉛鉱との組み合わせは検波しにくくいま一つでした。紅亜鉛鉱と斑銅鉱の組み合わせは定評どおり良く聞こえます。








 続いて3種類の鉱石の接合検波を試してみました。
 紅亜鉛鉱と斑銅鉱と方鉛鉱
 ゲルマニウム単結晶と紅亜鉛鉱と斑銅鉱

 アクリルパイプに3種類の鉱石を入れ、上から少し強めに針を当てると、意外にも探るまでもなく音声が聞こえてきました。ただし、聞こえることは聞こえますが2種接合に比べ音量は小さめです。3種接合してもかえって損失が大きくなって効果が得られないのかもしれません。


3種接合


 紅亜鉛鉱は斑銅鉱と接合することで音量、音質とも良くなることが今回も実感できました。特に音質はすばらしいです。ゲルマニウム単結晶についてはあえて接合検波にするメリットはあまり感じませんでした。今回の組み合わせだけで言えば単体で十分かな、といったところです。


前作と今回の鉱石ラジオ


 全盛期、先人たちもさまざまな鉱石を組み合わせて試しただろうと想像されますが、接合検波自体は効率やコストなどから十分その優位性が検証されることなく消えていったようです。今更ながらではありますが、まだ未解明な部分があり、鉱石同士の相性によっては思いもよらぬ作用に出会う、なんてこともなくはないのでは?と思ったりもします。






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探り式鉱石検波ラジオ

2021年03月07日 | ゲルマラジオ


 NHK第一放送の前身であるJOAK東京放送局の本放送が始まるのが大正15年(1924年)、それと共に昭和初期にかけて一世を風靡し、瞬く間に消えていった探り式鉱石ラジオ。その開発の過程では少しでも受信能力を高めようと様々なコイルや鉱石が試され、その後のデバイスの進化へとつながっていったのだと思います。今はそれによって効率よく検波できるわけですが、効率優先の中で置き去りにされてきたものもあるのでは? そんな思いから鉱石検波に一時夢中になりました。探り式というのもいかにもアナログで何かの儀式を想起させる古風な印象があります。半導体といっても鉱物そのものなので検波する箇所としない箇所があり、針状の電極で探る必要があるわけです。その針の材質もさまざま研究され、タングステンなどが使われたようです。

 各種ダイオード比較をしている内にふと、鉱石の音を聞いてみたくなり、数年前に作った鉱石検波専用ラジオで久しぶりに聞いたところとても良い音であることにあらためて気づかされました。ただ、小さな銅製カップに鉱石を置いて探る方式のため、接触不良や鉱石自体が動いてしまう問題がありました。探り式はそのままに、アプローチを変えて形にしてみたのが今回の鉱石ラジオです。




 コイルは縦20.5cm、横13.5cm、幅2.5cmのロの字型の木枠を使いました(元は菓子箱)。幅が狭いので普通に巻いたとしてもいくらも巻けません。数カ所に自在ブッシュを貼り、その溝の高さで巻き数を確保することにしました。溝は8つ。はじめ一つの溝に4回巻きとし、合計32回巻いてインダクタンスを測ったところ673μHと予想外に高くやり直し。溝2つに4回巻き、残り6つの溝は2回巻きとしたところ151μH。我が家の環境では問題ないのでこれで良しとしました。一種の分割巻き。この方法であれば、コイル幅にかかわらずインダクタンス調整が楽にでき、悪くないかなと思います。




 続いて検波部。細い銅線(針)で探る部分は同じですが、鉱石側はカートリッジ式としました。電極の銅パイプに各種鉱石を固定した一回り大きい銅パイプを差し込む。これで導通や鉱石が動いてしまう問題はある程度解消されるかと。この検波装置では針で突くというより、銅パイプを上下させたり、カートリッジを回転させることで適切なポイントを探ることになります。とりあえずゲルマニウム単結晶、紅亜鉛鉱(ジンカイト)の2種類のカートリッジを作製しました。





ゲルマニウム単結晶と紅亜鉛鉱(ジンカイト)








 全体の作りはシンプルで、トランスも省きました。コイル、バリコン、検波部、音声出力端子のみです。いつものとおり裏面配線して完成。


 マルチタップトランスにつなぎ、さっそくオーディオイヤフォンで聞いてみました。まずは紅亜鉛鉱を装填。適当に銅線の針を接触させバリコンを回すと人の声が聞こえてきました。NHK第一放送。何度か接点を探るとけっこうな音量で鳴ってくれました。紅亜鉛鉱の場合、音量の大小はあるもののどの箇所でも聞こえなくなることはなく安定して検波してくれます。音質もすばらしく、ふくらみのある落ち着いた音声。






 続いてゲルマニウム単結晶。純度99.999%とか。球状なので針を側面に当てる感じになります。カートリッジ側を回転させて探ると、突如大音量で聞こえてきました。紅亜鉛鉱を上回る音量で、音質も負けず劣らずすばらしいものがあります。これぞ本式ゲルマラジオ?






 小さなループコイルなので性能的には期待できないかな?と考えていたのですが、なかなかのものです。鉱石の検波能力に負うところが大きいと思います。紅亜鉛鉱にしてもゲルマニウム単結晶にしても感度、音質とも既成のダイオードでは得られない領域では?と思ったりもします。時代を完全に逆行する鉱石検波ですが、なにか底知れない奥深さを感じます。2種類とか3種類の鉱石を使った接合検波も試してみたいのですが、もう一工夫必要かもしれません。





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