JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

アナログな趣味

2010年01月28日 | 運用スタイルなど
 NHKで、T社の超高画質テレビ開発に関わる技術者たちのことが放映されていました。アナログテレビの熟練技術者もデジタルソフトウエア中心の最先端テレビのトラブルを前に、何らなす術もない姿が印象的でした。同時に、コンピュータ言語の膨大な文字列だけで、すべての動作や性能が決まってしまうというのは何か、空虚な感じも受けました。


 このようなブログを立ち上げてはいますが、本当はパソコンが苦手です。2月号のCQ誌にも「ハムのためのPC入門」なる付録が付いておりましたが、あまり興味がわきませんでした。

 アマチュア無線の良さとは何だろう、と考えるに、私的にはデジタルにはない、アナログの世界があるから、というのが一つの答えです。自分の目の前のアンテナから出た電波が、直接相手に届いているという感覚。その間に何の作為もなく、自局と相手局のロケーション、設備、自然現象、タイミング・・・時間と空間の幾重もの偶然と必然によってはじめて交信が成立する世界・・・・・。

 ネットと違って匿名性がない上に、通信内容を隠したてもできませんね。人も話もすべてオープンです。バーチャルでない、いわば人同士が電波という媒体の中で飛び交っているという感じでしょうか。なので、楽しい交信ばかりでなく、失礼な言い方をしてしまったのでは?などと反省することも多いです。先人たちのそうした経験の積み重ねがあってかどうか、全体としては、控えめで節度ある雰囲気がコミュニティの暗黙の了解となっているようにも思えます。

 当然、趣味なので利害関係はなく、金にもなりません。アワードというものがありますが、苦労してこれを獲得したからといって、賞金がもらえるわけでもありません。1円にもならないことに何年もの歳月をかける人たちが大勢いる、アマチュアとはそういう世界ですね。

 当局が今、夢中になっている山岳運用(里山移動)も、実にアナログな遊びです。電離層反射がほとんど期待できない145MHz帯において、その山頂からどのような電波伝播がみられるのか、それは実際に足を運んで運用してみなければわからないことです。私的には、簡素な手作りアンテナで、遠方や意外なところとの交信ができたときの驚きと充実感で、続けているようなものかもしれません。もちろん、山々を眺めながらQSOできただけでも、それはそれで十分楽しいのですが・・・。




 無線という趣味は、考えるに、目に見えない電波の振る舞いを楽しみ、探求する一連の行為ではないかと思うのです。コンピュータ、デジタル、インターネットと無線の結合・・・・・便利で、クリアにつながり、活用も広がる?のかもしれませんが、趣味としての面白さからは離れていくような・・・。

 先日、一緒に登山をしたOMが、急に懐かしくなって鉱石ラジオのキットを組み立てた話をされていました。「大人の科学」という本の付録だそうです。この方は、昭和40年代に開局されて、自宅にタワーも上げアクティブに活躍されたそうですが、今は無線から遠ざかっています。定年後も技術畑の現役ですが、ふと、昔を思い出して、作ってみたくなったそうです。アナログな技術や遊びというのは、どこか、理詰めで埋めきれない空間があるのかもしれません。プログラムで動く超高画質テレビの映像よりも、鉱石ラジオから聞こえるかすかな音声とはどんなだろうと、興味を惹かれてしまいました。




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萱ヶ崎山にて

2010年01月26日 | 里山 移動運用
 ニューイヤーパーティから始まって、今年この山には既に3回登りました。丸一日時間が取れなかったり、天候不順で難しい判断を迫られる時は、つい、この山に足が向いてしまいます。自宅からは、茂庭台行き直行バスに乗ってしまえば、登山口のあるバス停まで30分程。バス停から萱ヶ崎山頂まで約30分の登山。自宅を出て、約一時間後には山頂に立っていることになります。

 蕃山の中でも萱ヶ崎山は、静かで、めったに人に会うことはなかったのですが、このところ、里山ブームなのか、時折、登山者と出会うようになりました。見晴らしが得られる山頂の鉄塔付近は、送電線の下にも関わらず、数グループが弁当を広げたりする光景に出会うこともあります。

 先日は、出発が遅れてしまい、ちょうど昼時に山頂に到着しました。この日は、穏やかな冬の晴れ間で、珍しく蔵王連峰もパノラマのように姿を現していました。案の定、山頂では何人かが楽しげにお昼を食べており、とてもその側で、無線を始められる雰囲気ではありません。致し方なく、他に運用できそうな場所はないかと、探しまわったところ、山頂から少し下った南斜面に、蔵王を正面に見渡せる笹薮がありました。ここなら、登山道からも離れており、気にせず運用できそうです。





 さっそく、三脚にHB9CVを設置。ハンディ機(DJ-S17)でワッチしてみると、山頂付近にも関わらず、バンド内は水を打ったように静かなのです。ローカルの交信もまったく聞こえません。いつもは送電線からの抑圧を受けて、スケルチがノイズで開いてしまうこともあるのですが、今日はノイズもありません。

 念のため、AA-200でSWRを測ってみると1.2に納まり、アンテナが壊れているわけではなさそうです。メインコールしCQを出してみました。応答なし。再度CQ・・・・・応答なし。やはり、リグかアンテナが壊れているのだろうか?少し間を置いて、再びCQを出したところ、やっと塩釜局に応答いただきました。先ほどから入感はしていたが、近場なので遠慮されていたとのこと。リグもアンテナも正常でした。それにしても今日は日曜日なのに、静かですね、と妙に納得して長話モードになりました。その後は、角田市、山形市、天童市、登米市、名取市、仙台市内などからポツリポツリとお声がけいただき、10局とQSOすることができました。


 当局の場合、スケジュールを組んだり、移動運用を事前にお知らせしたりということはなく、眺めの良い場所が見つかれば、行き当たりばったりでCQを出します。山頂付近なので、相当広い範囲に信号が届いていることは間違いないのですが、タイミング次第ということでしょうか。

 アマチュア無線は、相手がいないことには、趣味自体が成り立ちませんね。そもそも、それまで何の縁もなかった方と話ができること自体が、不思議な世界です。

 特に遠くの局と交信できたわけではありませんでしたが、応答いただける有り難みというものを感じた運用でした。今シーズンも、一山一局の交信を大切に、謙虚な運用を心がけたいと思った次第です。












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HB9CVの改良

2010年01月06日 | HB9CV
 HB9CVロッド式は、軽くコンパクト、性能もまずまずで、山で使うには優れたアンテナです。何度か使ってみて、このアンテナの持つ潜在力をもっと引き出せるのではないか?と感じるところがありましたので、いくつか改良を加えてみることにしました。


1)地上高

 先日の移動運用時に、カメラ三脚のみの場合(地上高1.2m)と50センチの塩ビパイプで持上げた場合(地上高1.7m)の信号の違いを比較してみました。このアンテナだけなのかどうかはわかりませんが、結果は持上げた方がSが1~2程強くなりました。たった50センチの違いですが、3エレ化した時より、むしろ効果が顕著でした。

 当局の運用スタイルは、山という自然のタワーに登って、見晴らしの良い山頂や尾根筋からQRVを始めるというものなので、あえて地上高というのは考えたことはありませんでした。標高そのものが高いのだから、さらに地面からアンテナを上げる必要もないかと・・・。どうもそうではないようですね。いくら標高が高くとも、地面は地面なので、アンテナはある程度、地面から離した方が良いということのようです。その最も効果的な距離とはどのくらいなのでしょうか?固定のアンテナ設置では、建物から1λ以上離すようにと解説されていますが・・・。自分としては面白い発見で、新たな課題となりました。


2)ブームの変更

 地上高を確保するには、まず三脚での安定化を図る必要があります。
このアンテナをカメラ三脚に取り付けた場合、どうしても前方に比重がかかってしまい、パイプで嵩上げするのも無理があります。先日も、運用中に三脚ごと風で倒れてしまいました。幸い、こちらが受信中だったため、急いで、体制を立て直し、交信は何事もなかったように続けることができましたが、冷や汗ものでした。

 改良前は、ブームに50センチの塩ビパイプをそのまま使っていました。今回は、15センチのパイプ2本に分割し、中央を「T型パイプ継ぎ手」で連結してみました。ブーム全長も約35センチとコンパクトになりました。設営は、T型継ぎ手に50センチの塩ビパイプを差し込み、三脚のL型継ぎ手で固定するだけです。重心が真上にありますので、たいへん座りが良く、パイプ2本までなら、継ぎ足して高さを確保できます。その場合少しぐらつきますが、給電部地上高は2.2m、エレメント先端の高さは、約2.7mとなります。


T型パイプ継ぎ手で連結



I型継ぎ手で2本のパイプを連結状態

収納も若干コンパクトになりました


3)エレメント長の最適化

 あらためてエレメント長の微調整もしてみました。このアンテナは、4本のエレメントが導通しており、どれか1本の長さを変えると、全体に大きく影響します。5ミリ間隔で長さを変えながら、いろいろな組み合わせで根気よく調整した結果、前エレメント(給電側)は上下とも40.0センチ、後エレメントは上が46.0センチ、下が43.0センチのところで、もっともSWRが低くベタ落ちとなりました。後エレメントは上下の長さが異なります。また、前エレメントに対して後エレメントが予想よりも長めとなりました。上下同じ寸法でうまく調整できないかと、試行錯誤したのですが、結局、上記の寸法に落ち着きました。この場合パターンはどうなるのか、SWRだけで判断してよいのか、疑問点は残ったままです。


AA-200の測定結果


 また、同軸ケーブルの引き回し方でも、SWRに影響を与えるようで、中央のマストに沿って垂直に引くと良い結果となりました。近くの物や人、ケーブル、さらには地上高・・・・いろいろと影響を受けやすいアンテナのようです。


4)使用レポート

 年末年始、改良後のこのアンテナを試してみました。50センチ嵩上げした状態で、地上高はいづれも給電部で1.7メートル。HB9CV本体(2エレ)のみで運用。リグはいつものハンディ機DJ-S17です。

 まずは、福島市の飯坂温泉の移動。といっても、毎年お世話になっている温泉旅館の室内からの運用です。しかも、川を挟んで道路とほぼ同じ高さ。飯坂温泉駅前に十綱橋というのがあるのですが、その橋を見上げるような部屋なのです。もっと見晴らしの良い旅館やホテルはいくらでもあるのですが、年末年始のかき入れ時に、いつも格安で泊めていただけるありがたい宿なので、贅沢はいえません。窓際に三脚を置いて、HB9CVを設置。手で回しながらの運用です。室内ですが、SWRは1.2に納まりました。


室内窓際に設置


 ワッチしてみると、福島市内や飯舘村、川俣町などの強い信号に混じって、宮城県利府町からのCQが52~55程で聞こえてきました。仙台では何度も交信いただいている局です。ダメもとで声を掛けようとしたのですが、他局との交信が始まってしまってうまくいきません。しばらくワッチしたのですが、そのままQRTとなってしまいました。それにしても、利府町からは約90Kmですが、山に囲まれた温泉地の、しかも旅館の室内にまで届くとは・・・・。

 翌日もワッチしていると、再び利府町のCQが聞こえてきました。まだ誰も呼んでいないようで、向きを慎重に合わせて応答を試みたところ、あっさりコールバックあり。51-55で交信できました。
「今日はどこからですか?」
「福島市の飯坂温泉。旅館の室内です。橋を見上げる部屋の中です。」
「え?飯坂温泉?室内?橋の下?」
「いつものハンディ機ですよ。」
「ハンディ機で?アンテナは?」
「HB9CV 2エレ」
「なるほど・・・でも良く来てますよ」

 こんな感じで、信号は弱いが了解度に問題はないとのレポートをいただきした。相手局は高台のロケーションに加えてFBな設備なのですが、交信できるのかどうか半信半疑、ダメもとで呼んでみた当局の方はもっと驚きました。

 ところがその後、利府局とほぼ同じ強さの信号で山形県米沢局のCQが聞こえていたのですが、こちらの方は、何度呼んでも応答いただけませんでした。スケルチが全然開いてくれない、そんな感触でした。どうもこのアンテナは、ねばり強さを見せたかと思えば、こういうケースも時々見受けられます。


 続いて、ニューイヤーパーティでは、近くの萱ヶ崎山(仙台市太白区)から運用しました。標高370m程の地点から。北は一関市や気仙沼市と交信。気仙沼は大森山移動局で、ハンディ機0.5Wとのこと。59-53。問題なく交信できました。距離約100Km。南は二本松市移動局と59-59。安達太良山駐車場のFBなロケーションで、遮るものがないという感じの信号でした。距離約110Km。西は山形県山辺町固定局と55-59。奥羽山脈を挟んで約80Km。約2時間で岩手、山形、福島、宮城県内の26局と交信いただきました。

 2エレ状態で使いましたが、バックからの信号はかなり切れます。バック方向から51~52のレポートをいただき、QTHを確認してアンテナを向けたら59に変更のケースも数例ありました。ほとんどがこちらからのCQでしたので、今回は聞こえているのに応答がない、という現象はありませんでした。また、この日は風が強かったのですが、倒れるようなことはなく、指向性を確認しながら、安心して回すことができました。

 面白いアンテナであり、使いやすくなったことも確かですが、まだ手応えを感じるとか、使いこなすというところまではいきません。さらに改良を加えていこうと思います。

《追伸》
 エレメント長について、その後、さらに試行を繰り返した結果、前エレメントが上下共41.0センチ、後エレメントが上下共44.5センチ、上下同じ寸法でマッチングが取れました。SWRはバンド内1.1。電界強度計の針は、フロント6~8とさほど変わらず。ただし、バック、サイドともフロントの半分の3程度まで振れます。若干指向性がブロードになったようです。












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