JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

外付け鉱石検波器

2015年09月27日 | ゲルマラジオ


 手持ちの鉱石を使って、1週間ほど取り換えひっかえ検波しながら、聴き比べてみました。シリコン単結晶>シリコン精製結晶>紅亜鉛鉱>方鉛鉱>黄鉄鉱の順で高感度という印象です。黄鉄鉱は聞こえる箇所があまりなく、音量もかすか。他の4つは、検波位置や圧力をうまく探ることができればダイオードと遜色ない音量で聴くことができます。特にシリコン単結晶がすばらしく、鉱石ラジオの受け皿カップに入るよう砕いたものを使いましたが、ゲルマニウムダイオード以上では?と驚くこともしばしばです。しかも、夜そのままにして、朝にイヤフォンを耳に当ててみたら、ほとんど同じ状態で聴こえている、ということもあり、安定度も群を抜いています。他の鉱石では、こうはいきません。

 ただ、ダイオードのように常時同じ音量で安定して聴こえるかというと、そうではなく、大きな音量で聴こえていたかと思うと、突然フェードアウトしそうになり、そのまま消えてしまうかと思いきや、再度ぐんぐん感度を盛り返して、元の音量に戻る、そういう波を伴って聞こえることもあります。ちょうどHFの電離層反射の信号に似ていますが、信号自体の強弱ではなく、あくまで検波の強弱でそう聞こえるということかと思われます。金属皮膜の微妙な変化、針との間のコンデンサー成分の変化などが要因かと。でもこの聞こえ方は鉱石検波特有で、何も手を触れないのに、じわーっと感度を盛り返してくるところなどは、聴いていてクセになりそうです。鉱石検波、やはり奥が深いです。


シリコン単結晶 硬い鉱物で砕くのに難儀します


 さて、せっかくの鉱石ラジオなので、いろんな鉱石で検波してみたい、ということで紀伊国屋の東京サイエンスから何種類か通販で入手してみました。まったくの素人なので、どんなものが検波に使えそうか、事前に鉱物の本を買ってみましたが、当然ながらそういうことはどの本にも書かれてありません。全盛期ならいざしらず、今時、検波目的で鉱石を求める人はいないということでしょう。鉱物や鉱石の分野というのは、経済と直結しているだけあって広大かつ深淵なる世界のようです。研究者やアマチュア蒐集家、製鉄会社関係、アクセサリー・宝石商、はたまた占いや霊感商法までまさに玉石混淆。レアアースの鉱脈ともなれば、国家の趨勢まで左右してしまう。とり憑かれるとたいへんなことになりそうなので、ほどほどにしておくことにします。






 結局、『ぼくらの鉱石ラジオ』を参考に、鉄、亜鉛、銅などの金属を成分とする鉱石10種類ほどを入手したものの、もともと標本なので一つの大きさが2~3cm。鉱石ラジオの受け皿カップには納まりきれません。せっかくの標本を砕いてしまうのも忍びない。ということで、ある程度の大きさのものまで検波できる外付けの検波器を作ってみることにしました。


鉱石接合型検波併用の2方式検波器  

二つの検波針を樹脂板で絶縁

紅亜鉛鉱はもろく、慎重に取り付け(上)
 


 ホームセンターで売っているL字金具を組み合わせ、大小の鉱石はボルトで固定できるようにしてみました。また、検波針は2種類とし、一つはスプリング針、もう一つは紅亜鉛鉱を針に使い、接合型検波実験ができるようにしました。接続は、鉱石ラジオの検波部とミノムシクリップでつなぐだけ。





 形がまちまちな鉱石がしっかり固定されるため、だいぶ検波しやすくなりました。各種鉱石の検波実験は、秋の夜長、これからゆっくり試してみます。







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無芯コイル鉱石検波ラジオ

2015年09月23日 | ゲルマラジオ


 先日の鉱石検波実験の際、銅板だけの簡易装置では、安定して検波する難しさを痛感したことから、単体で受信できる鉱石検波専用の無電源ラジオを作ってみることにしました。構想は以前からあって、『ゲルマラジオ製作徹底ガイド』や『レトロラジオの製作に誘う本』などを参考に、やっと実現をみたというところです。製作にあたっては、これまで同様、1)外部アンテナ、アースなしで受信できること、2)セラミックイヤフォンではなく市販のステレオイヤフォンを使えるようにすること、を課題としました。鉱石の場合、ゲルマニウムダイオードほどの感度は期待できないことを考えると、ハードルはより高いと言えます。





 まずはコイル。石で検波するレトロなラジオなので、リッツ線を使ったバスケットコイルを思い浮かべ、実際、直径10cmのコイルを作ってみましたが、期待したほどのQは得られませんでした(実験ボードで実際聞いてみての印象)。そこで考えたのが、表皮面積のとれる太いポリウレタン線を使い、かつ、直径をさらに大きく巻き、少しでも巻枠の影響を受けないよう無心コイルにしてしまう、という方法。昔のエナメル線と同様のもので、いかにも工作実験という雰囲気があって、鉱石ラジオにふさわしいのでは?と思えなくもありません。巻枠(ボビン)が受信に影響するのかどうかは未確認ですが、無いに越したことはないし、巻枠からフリーになるということは、余計なコストもかからず好都合なわけです。
  
 ということで、太さ1.7mmのポリウレタン線を直径15cmで巻いてみました。いったんパイプに巻いて、あとで外すことにします。太くて巻きにくいですが、コイル巻きは大好きなので苦になりません。巻き終わって、ホットボンドで固定。一晩置いてパイプから外し、今度はコイル内側をホットボンドで再度固定し、外側のボンドは取り除く、こんな手順を踏み、何とか完成させることができました。41回巻き。30回巻きのところに中間タップを一か所。リッツ線に比べ、タップ出しは楽ですね。インダクタンス252μH、中間タップ145μH。891KHzのNHK仙台第一放送メインなので、これで良しとします。



パイプに巻いた状態

パイプから外し無芯に 


 次に、検波装置。『ぼくらの鉱石ラジオ』には、上から針で突くタイプや横から差し込み針を載せるタイプなど様々な検波器が紹介されています。全盛期は、鉱石が動かないよう金属カップに入れてハンダ固定したものが多かったようです。自分としては、様々な鉱石を交換して検波する目的であること、しかし、安定受信のためには動かない工夫が必要なこと、などから、直径15mmnの銅パイプで深めのカップを作り、その中に半固定することにしました。針は3mm銅パイプにボールペンのスプリングをハンダ付け。持ち手部分は基板用のベーク材です。上から突くオーソドックスな形にしました。


こんな感じではんだ付け



 以上でコイルと検波器完成。あとはいつも通り板材に配置、配線ですが、今回は、見た目にもこだわって、裏面配線にしてみました。トランスはラジオ少年の200KΩ:8Ωタイプを使用。今風にならないよう基板は使わず、板材に穴を開けて直に固定。こんなことができるのも板材ならではです。タップ切り換えも1か所のみなのでスイッチ式とし、木片で固定。


完成

正面から

検波部

検波器、切り替えスイッチ、トランス配置

検波器上部

トランス取り付け

コイル部取り付け 銅パイプで補強

裏面配線


 実際製作を始めてみると、考えていた通りにいかなかったり、逆に作っている最中に新たなアイディアが浮かんで変更を加えたり、今回は想定外のことが多く、時間ばかりかかってしまいました。丸2日を要し完成。

 はたして結果はいかに? 鉱石での受信の前に、ミノムシクリップでダイオード(1N270)を接続し、受信感度の確認および同調を取っておくことにします。窓際に置いてステレオイヤフォンで聴いてみると、NHK仙台第一放送が十分すぎる音量で聞こえてきました。第二放送もメリット5。直径が同じリッツ線を巻いたコイルと遜色なく、むしろ今回の方が低音良好で野太い音質。この無芯コイル、Qの高さはなかなかのものです。



 そして本命の鉱石検波。方鉛鉱をちょうど良い大きさに割り、検波器にセット。針を突くと、すぐに人の音声らじきものが聞こえてきました。何度か突いていると、突然、大音量に。1N270には及びませんがかなりな音量で、かつ前回の実験時と違って、すぐに聞こえなくなるということもなく、安定した受信状態が続きます。石の固定のみでなく、スプリング針の微妙な接触、圧力加減がポイントのようです。黄鉄鉱でも試してみたところ、こちらも実験時より格段に検波しやすくなりました。ベランダに出て、手持ちで動き回ってみても、受信できなくなるということもなく、受信感度、安定度とも、十分な感触が得られました。ただし、日中その状態でも夜に聞いたら、同じように受信できるわけではありません。針の微妙な動きに伴うコンデンサーの変化や熱や光による抵抗値の変化が影響しているのだろうと思われます。なので、受信を始める時は、必ず「探る」という作業が必要となり、ここに操作のし甲斐と面白さもあるわけです。また、コイルの中に手を差し込むと感度がアップするということを経験しました。原因は不明ですが、あちこちにコンデンサー成分が潜んでいるのかもしれません(感度アップのみで同調は変わらない)。


鉱石ジャストフィット

動き回っても良く聞こえる



 鉱石検波で外部アンテナ、アースなしの単体受信、そしてステレオイヤフォンで聴ける、という課題は一応クリアできました。無芯コイルの手ごたえを感じられたのも収穫でした。より高感度にするために、回路を見直してみるとか、検波針をタングステン製や他の材質にしてみるとか、ループコイルを追加し磁界誘導を図るとか、まだまだ工夫の余地はありそうです。

 なんにしても、このラジオで、まだお目にかかったこともない世界中の各種鉱石を、検波してみたいものです。






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続・探り式鉱石検波

2015年09月20日 | ゲルマラジオ



 『ぼくらの鉱石ラジオ』によると、JOAK東京放送局(現在のNHK第一放送)の本放送がが始まった大正14年(1925年)頃、国内の受信機の7割は鉱石ラジオだっとのことです。それから、90年、現在の高度な集積回路への変貌を思うと、「鉱石検波」というのは、偉大な発見だったのだな、とあらためて考えさせられます。ラジオに限らず、鉱石や鉱物というのは、いつの時代も資源として役立てられたり、多くの元素が発見されたり、はたまた争いの種になったりと、人類と深い関わりを持ち続けてきたわけです。鉱物は世界に約4700種ほどあって、今でも毎年数種類の新鉱物が発見されているのだそうです。

 さて、数年前、磐梯山登山の帰りに寄った資料館の売店で方鉛鉱を入手し、鉱石検波の実験をしたことは以前に書いた通りです。「石」で検波できることに素直に感動した記憶があります。その後、しばらく遠ざかっていたのですが、鉱物とか鉱石にまた興味がふつふつと涌いてきて、今回、いくつかの新たな「石」を入手し、検波実験をしてみました。

 <鉱石>
 ・方鉛鉱
 ・黄鉄鉱 
 ・紅亜鉛鉱
 ・シリコン(ケイ素)単結晶
 ・シリコン精製結晶(製造加工品 純度99.9999%)





 方鉛鉱と黄鉄鉱は、前回使ったものです(産地不明)。 『ぼくらの鉱石ラジオ』で、最も高感度と紹介されている紅亜鉛鉱は、どうしても試してみたかった鉱石の一つで、今回入手したのは、天然ではなく、ポーランドの亜鉛精錬工場の煙突内で、偶然に生成した酸化亜鉛の結晶です。厳密には鉱物とは呼べませんが、組成としては紅亜鉛鉱と同じもの。
 
 もう一つは、ミズホ通信研究所で領布されていたシリコン結晶2種。現在の半導体原料の主流をなす物質なので、ある意味、検波できて当たり前、という感じもしなくもありませんが、興味が涌いたので、入手してみました。

 ゲルマラジオ実験ボードに簡単な鉱石検波装置(ただの銅板)をつなぎ、実験開始、今回は、検波器の針を、1)縫い針、2)ノック式ボールペンのスプリング、3)針穴の糸通しの3種類で試してみました。


検波器具

検波器の針各種 (昔ながらのスプリング式がベストでした)


 実験の前に、ゲルマニウムダイオードでNHK仙台第一放送に同調をとっておきます。これをしないと、永久に針で探り続けることになります。鉱石ラジオ全盛期は、同調をとりつつ、検波したことを考えると、当時の苦労と根気は並大抵ではなかったと思います。


 はじめに、方鉛鉱と黄鉄鉱。どちらもうまく探り当てると、かなりの音量で聞こえてきました。針を手持したこともあって、安定して受信するのは難しく、大きな音量で聞こえたかと思うと、すぐに聞こえなくなったり。突然、さらに大音量で聞こえてきたり。この唐突感が探り式の楽しいところでもあります。どちらかというと、方鉛鉱の方が、探るのも楽で、感度も一枚上手という印象です。


黄鉄鉱


 次に、本命の紅亜鉛鉱。入手したのは直径1.5mm、長さ約3cmの小さな針状の鉱石です。磨いて宝石にされることもある美しい結晶。これで半導体??? 方鉛鉱や黄鉄鉱は、見た目にも金属という感じはありますが、これは透明感のある結晶そのもので、亜鉛が主成分といわれてもにわかに信じられない姿をしています。


半透明の紅亜鉛鉱


 折れないよう、そっと検波器に置いて、針を当ててみると・・・。なんと、なんと、感覚的には方鉛鉱の倍近い音量で聞こえてきました。不思議なことに、結晶のどこに針を当てても安定して検波できるのです。これぞ鉱石の神秘。

 続いて、『ぼくらの鉱石ラジオ』に紹介してあった、もう一つの方法。この紅亜鉛鉱の結晶を検波針として使う接合型鉱石検波を試してみました。結晶を慎重にミノムシクリップで挟み、方鉛鉱に当ててみたところ、音量アップが実感できました。安定感も良好で、スプリング針で検波が難しくとも、接合型にすると検波可能に。黄銅鉱との組み合わせがベストのようですが、方鉛鉱でも接合型検波の優位性を確認できました。ただし、黄鉄鉱ではうまく検波できず、相手の鉱石を選ぶようで、この辺りは課題としておきます。


紅亜鉛鉱と方鉛鉱の接合検波


 最後に、シリコン結晶。ケイ素単結晶はタテヨコ4cmほど、もう一つは工業的に純度を高めた直径3cm程の円盤型結晶。言わずと知れた半導体の主要元素。地殻中に大量に存在し、希少鉱物というわけではありませんが、結晶の現物を見るのは初めて。

 さっそく、針を当ててみると、どちらもたいへん良好に検波します。どこに針を当ててもほぼ検波可。安定度抜群。感度も今回実験した中では最も大きな音量で受信でき、ケイ素単結晶と高純度精製したもの、二つの違いはほとんど感じられませんでした。ケイ素の元素としての発見は古く、90年前にも既に精製技術は存在していたようですが、これを使えば、探る必要もほとんどなく、楽に受信できたのでは?


どちらも良好に受信



 1N60や1N270などのゲルマニウムダイオードには感度では及びませんが、放送が聞こえた時の感動は、探り式鉱石検波ならではのものがあります。空中の高周波信号と地中深くの鉱石、そして自分自身とが共振しているような・・・。異界に迷い込む楽しさ、そしてしばし異界に転んでみる、そんな感覚。いつか、自分の住んでいる県内産の鉱石を探して、そんな異界の声を聴いてみたいと考えています。




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ゲルマラジオ実験ボード

2015年09月13日 | ゲルマラジオ


 ゲルマラジオ作りに先だって、コイルを巻き終わった時とか、新たなダイオードを入手した時に、とりあえず回路を組んでみる、ということをよくやります。その際、ジャンク箱から部品とミノムシクリップを取り出し、以前に巻いたコイルとの比較だとか、ダイオードなら1N60との比較とか、試し始めると収拾がつかなくなります。また、耳で聞いて音量が大きい小さいだけでなく、視覚化もしたい、ということで、Sメーター付きのゲルマラジオ専用実験ボードを作ってみました。





 15cm×10cmの板上に下記のものを搭載しています。

・2連エアーバリコン 290pF 120pF 
・ポリバリコン    260pF
・電流計       100μA
・プッシュ式ターミナル端子 5個
・3Pスイッチ
・ステレオイヤフォン端子
・トランス 各種置くためのスペースのみ

 5個のプッシュ式ターミナル端子を使うことで、ダイオード、抵抗、コンデンサー、セラミックイヤフォンなどを簡単に交換可能で、倍電圧、倍電流はじめ、回路も自在に組めます。3Pスイッチはコイルタップ切り換え用で、ロータリースイッチにしようかとも考えましたが、タップに関してはあまりやる気がないので、これで良しとしました。ボードにコイルとイヤフォンを接続し、あとは、ミノムシクリップで配線するのみ。

 こんな簡単な実験ボードですが、けっこうできることはあります。

 ・コイルの性能比較
 ・コイルタップによる感度、分離の違いをみる
 ・ダイオードの性能比較
 ・トランスを使った場合と使わない場合のダイオードの適正比較(大きく異なる)
 ・バリコン容量との相性をみる。またエアーバリコンとポリバリコンのQの違い。
 ・電流計(Sメーター)での信号の視覚化
 ・トランスによる音量、音質の変化
 ・CR類による音量、音質の変化

  などなど。






 さっそく、大型バーアンテナをつないでみたところ、我が家の室内窓際では、電流計の針は最大で目盛1~2とわずかに振れるのみでした。耳ではメリット5なのに、この程度? ちょっとがっかりではありましたが、このSメーターを大きく振らせるコイルを作ってみたいものだと、意欲も涌いてきました。この他、ダイオードの代わりに鉱石検波器をつないでみるなども追々試してみたいと思います。



コメント (2)
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