磐梯山の帰路、噴火記念館に立ち寄ったところ、売店に世界の鉱石コーナーなるものがありました。各種宝石の原石などに混じって、なんと方鉛鉱を見つけてしまいました。そして黄鉄鉱も。電気石などというのもあります。1個300円程。思わず、数種類買い求めてしまいました。
ゲルマラジオ作りに夢中になってからというもの、いつか本物の鉱石で検波した信号を聞いてみたい、と、わざわざ鉱石探しに出かけたりもしたのですが、いまだ実現に至りませんでした。楽しみは後にとっておこうと。しかし、方鉛鉱を入手したからには、試してみないわけにはいきません。ということで、この度、探り式鉱石検波器を作製、ゲルマニウムダイオードを使わない本物の鉱石ラジオに挑戦してみました。
探り式鉱石検波器。時代を感じさせるレトロな響きです。探り式という名の通り、細い針で鉱石を突いて検波します。『ぼくらの鉱石ラジオ』には様々な検波器がカラーで紹介されています。それによると、日本ではJOAK東京放送局(NHK第一放送の前身)の本放送が始まる大正14年(1925年)頃から国産品が出回りはじめたとのこと。初期の頃は、鉱石に直接針を当てる探り式、その後ヒューズのような形をした固定式に変わり、ゲルマニウムダイオードへと変貌を遂げていったということのようです。
検波器自体は単純な装置なので、『ぼくらの鉱石ラジオ』の写真を参考に、材料はほとんどを有り合わせで作りました。
・真ちゅうの受け皿(直径2cm)
・真ちゅうのパイプ(長さ4cm)
・塩ビ仕切り板(100円ショップ)
・針
・ターミナル端子2個
・線材少々
・かまぼこ板
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材料一式
製作は、受け皿とパイプ、仕切り板をそれぞれ接着して、はんだ付けで配線するだけです。塩ビ板に針が通る程度の穴をあけておきます。針は微妙な調整ができるように、スプリングの付いた細い銅線にすると良いそうですが、今回は縫い針で、以前「クリスタル」というショップで購入したものです。
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完成
さて、いよいよ鉱石検波開始。実験用のゲルマラジオからダイオードを外して、探り式検波器に接続。用意した鉱石は4種類。
・黄鉄鉱
・方鉛鉱
・紅電気石
・正体不明の石(大蔵鉱山跡で拾ったもの)
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黄鉄鉱
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方鉛鉱
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紅電気石
はじめは黄鉄鉱。受け皿に石を置いて、そっと針を当ててみる。何度か当てるうちに、イヤフォンからガサガサというノイズが聞こえてきます。さらに慎重に当てると・・・一瞬、人の声らしきものが聞こえてきました。かなりクリティカル。針を当てる場所もさることながら、力の加減も難しい。しっかり当てれば良いというものでもありません。そしてついに、安定して聞こえる位置を探り当てることができました。なぜかその1点だけ突然大きな音で聞こえるのです。予想以上に明瞭。
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黄鉄鉱
続いて本命の方鉛鉱。縦横1.5cm程度の立方体。表面が艶やかで銀色に光る美しい鉱石です。針を当ててみると、こちらは始めから音声が飛び込んできました。しかも黄鉄鉱の数倍の音量。これはすごい。比較のために用意したトランジスター2SA100となんら遜色ないばかりか、こちらの方が大きな音が出る箇所もあります。表面がなめらかで、どこに針を当てても同じかと思うのですが、微妙に違うのです。急に大きな音声になったりして、ほんと、不思議です。
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方鉛鉱
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針の横に当てるだけでも聞こえてくる
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比較の2SA100 検波器として使用
紅電気石、正体不明の石は、どちらも検波不可でした。紅電気石というのは後で調べて分かったのですが、トルマリンのことだそうです。
今から80年以上前に登場した鉱石ラジオ。たいへん高価なもので、誰でも買えるものではなかったそうです。多くが自作もしたであろうと思います。入手困難な部品を集め、やっと完成したラジオ。皆が寝静まった夜。慎重に鉱石に針を当ててみる。すると意外にもそれは高感度で、ヘッドフォンからはかすかな、しかし明瞭な音声が飛び込んでくる・・・。そんな先人たちの興奮が少し感じられた気がしました。今はラジオと言ったら集積回路があたりまえ。でもこれは、石のみ。聞こえること自体に、素直に驚いてしまいました。