JO7TCX アマチュア無線局

せんだいSD550  山岳移動運用 

1年ぶりの月山

2010年07月22日 | 奥山 移動運用


 まだ梅雨前線が東北北部に残って、不安定な予報となっていました。どの山にするか、当日朝まで迷った末に、日本海側に近い月山にしました。標高1984m。QTHは山形県東田川郡庄内町。この山の山頂からの運用は昨年8月以来です。


月山 山頂神社


 朝5時前に仙台を出て、笹谷トンネルを抜けると、前方に朝日連峰の稜線と月山が見えてきました。天気は心配なさそうです。姥沢の登山リフトに6時50分ごろ到着、ちょうど動き出したところでした。5月連休に姥ヶ岳で運用した時は、このあたり、まだ一面の雪原でした。今はいたる所、残雪のからの雪解け水であふれていました。ショウジョウバカマ、チングルマ、ウスユキソウ・・・・この山は、春と夏が同時に来るんですね。








 山頂には8時30分に到着。山頂部が広大なので、運用場所には困りません。神社の下、湿原を見下ろす岩場に陣取って、さっそく無線運用の準備を始めました。今回はHB9CVに導波器を追加した3エレを持参しました。バランスでも悪ければ、いつもの2エレにワンタッチで戻すことができます。リグはハンディ機DJ-S17に1600mAhのオプションリチウム。今日は、どのくらい持つのか、バッテリーが切れて空っぽになるまで使ってみるつもりです。


上が導波器


 ワッチしてみると、さすが月山。まだ時間も早いというのに、どこぞのローカル局がひしめいて、空き周波数がほとんどありません。なんとか空きを見つけて、ビーム方向南西に向けてCQを出してみました。岩手、山形、宮城、福島、新潟各局より応答いただき、途切れなく交信を続けることができました。北は奥州市、東は南三陸町、南は南相馬市、西は阿賀野市。ただ、レポートは良いのですが、どうも信号が今ひとつ伸びていかない感触です。小国町の移動局にお願いして、3エレの状態と、導波器を外した2エレの状態との比較レポートをいただいたところ、あまり変わらず、とのこと。受信は悪くないと思うのですが、送信が・・・・。もう少し研究の余地がありそうです。




 ここまで約1時間。気がつくと広い山頂もだいぶにぎやかになってきました。続々と登山者が登ってきます。いったん撤収し、山頂神社から離れた静かな南東斜面に場所を変えました。朝日連峰がよく見渡せる場所です。再度CQを出すと、会津背あぶり山移動局や新潟各局に続き、1エリア栃木県下野市固定局より応答がありました。姥ヶ岳でも交信いただいた局で、9エレ4列2段のFBなアンテナとのこと。おそろしくパワフルな信号でした。59-59。距離約250km。

 さらに「J・9・・・/9」のコールバック。富山県立山町移動局で浄土山山頂2831mからハンディ機とのこと。やっと雨が上がって登ってこられたようです。うっかりして相手局のアンテナを聞かないでしまいました。52-57。距離約350km.。カシミールで調べたわけではないので正確ではありませんが、もしかすると反射ではなく、完全な「見通し」なのかもしれません。59とまではいきませんが、Sも十分振って、不安なくQSOできました。9エリアは1局のみ、この日の最長記録でした。北方向は岩手県八幡平市、三石山移動局(ハンディ機)と57-55。この他、吾妻、栗駒、船形連峰など山岳移動も多かったようです。結局、約3時間半、山頂に留まり、31局に交信いただきました。




 いつも感じていることですが、とりわけ山頂同士の交信というのは、いくつもの偶然としか言いようがありませんね。たとえば、こちらがいくら天気が良くても、相手エリアが天候不良であれば登山でもないでしょうし・・・。どちらもWXに恵まれ、たまたま同じ時間に山頂付近でワッチし、しかも両方のエリアでその周波数の混信がない、その上コンディションとロケーションのマッチング・・・・。これらの条件を時としてクリアし、遥か遠方と交信できてしまうところが山岳移動の面白さでしょうか。


 さて、オプションバッテリーは、予想どおり、ちょうど3時間で空になりました。前回と違ってほとんど5W状態での運用だったためか、けっこう本体が熱かったです。想定外の強い日差しとハンディ機の熱とで、少々バテ気味となりました。帰宅後に知ったのですが、この日、東北でも梅雨が明けたそうです。








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オプションバッテリー

2010年07月13日 | 移動運用装備
 当局が使っているハンディ機DJ-S17(L)には、はじめからリチウムバッテリーが付属するのですが、容量が1100mAhと少ないのが難点です。その分、軽いので、常時セットして持ち歩くには良いのですが・・・。山頂で運用の際は、これでは非力で、付属の乾電池ケースにエネループ6本を装填して使うことが多いです。この場合、ニッケル水素電池なので電圧の関係で出力4Wに低下します。パワーとしては若干非力になりますね。ならば、純正オプションの1600mAhリチウムバッテリーならどうか、ということで試してみました。

《付属リチウムバッテリー》
・良い点 5W出力可
     薄くて軽い(ハンディ機本体にすっきり納まる)
     防水あり
・欠点  容量が小さく運用可能時間が短い(1100mAh)
     熱くなる

《乾電池ケース(エネループ電池)》
・良い点 容量が大きく運用可能時間が長い(2000mAh)
     熱くならない
・欠点  最高4W出力に低下
     厚みがあり重い(長く手持ちで運用すると疲れる)
     防水なし

《オプションリチウムバッテリー》
・容量は上の二つの中間(1600mAh)
・厚みも上の二つの中間
・5W出力可
・防水あり
・熱くなる?


上から付属リチウム、オプションリチウム、乾電池ケース


オプションバッテリー装着状態


 先日作ったロッド式3エレ八木のテストも兼ねて、蔵王地蔵山にて運用してみました。当日は、梅雨前線北上で午後から雨の予想、午前中だけでもなんとか持ってくれれば、と思いながら、いつもの山頂(標高1736m)に3エレを設置しました。バッテリーは上記の3種類各1個を持参しました。オプションバッテリーは初めてなので、最悪、あっという間に電池切れを起こすことも想定して、その時はエネループに切り替えるつもりです。

 乾電池ケースと比べて、手に持った感じがゴロッとした感触はなく、すっきりと納まってくれます。重みもグッと軽く感じますね。当局は訳あってスピーカーマイクを使いませんので、軽いのは助かります。その分、持続時間が心配ですが・・・。





 CQを出してみると、北は一関市栗駒山移動局、南は檜枝岐村の燧ケ岳移動局(共にハンディ機)、南会津町モービル局(半固定)、西は新潟市西区固定局の他、福島、宮城、山形各局より応答いただきました。59のレポートをいただいた局やこちらに59で届いている局の場合は、すかさず0.8Wに切り替えるというスタイルで交信を続けたところ、オプションバッテリーは意外なほど、粘りをみせてくれました。結局、3時間弱交信を続けましたが、バッテリー切れは起こしませんでした。また、ほんわか温かくなった程度で、さほど熱くもなりません。手持ち運用OKです。
 まずは5WでCQを出して、相手局に応じてパワーを切り替え、ここぞという時は5Wフルパワー、こういう使い方であれば、けっこう持ってくれます。山頂での運用なので、3時間持てば御の字ですね。

《運用可能時間 145MHz》
・付属バッテリー     1時間30分~2時間
・オプションバッテリー  3時間程度?
・エネループ       3時間30分~4時間

 あくまで当局の運用スタイルでの話ですが、感覚としては、メーカーのカタログ表示の4分の1と考えておけば、間違いないようです。また5Wで59の局とは0.8Wに落としてもレポート変わらずのケースがほとんどでした。



ロッド式3エレ


 さて今回、須賀川市の固定局から0.6Wでお声掛けいただきました。55で入感とのレポートを送ったところ、相手局よりQRPの実験をしたいとの申し出がありました。

「パワーをもっと下げてみたいのですが、よろしいですか」
「どうぞ」
「・・・・これでいかがですか」
「51に下がりました。Sメーターはまったく振れなくなりましたが、問題なく了解できます。むしろ聞きやすいです。何Wですか」
「30mWの送信です。このパワーで西吾妻とは繋がっていますが、蔵王は初めてですよ。須賀川から蔵王は見えないので、反射ですよね」
「目の前に熊野岳があるので、南方向の見通しはないです。反射+もしかすると山岳回折?」

 こんな感じで、興味深い交信をさせていただきました。須賀川までは直線で約100km。それにしても30mWの信号、弱いのに絶妙な安定感があって、そのままずっと聞いていたくなりました。以前にも数回出会ったことがありますが、細々としてかすかに、それでいて深く入り込んで丈夫に届く、とはこういう信号ですね。GPだそうで、よほどFBに調整されているんでしょうか・・・・見習いたいと思います。








コメント (2)
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黒いログペリELK 2M440L5

2010年07月05日 | ログペリアンテナ
 アペックスラジオのホームページを見て、以前から気になっていたVU帯の黒いログペリアンテナを購入してみました。ELKという米国メーカーの製品で、外国製は初めて。移動用や軍用アンテナを手がけている会社だそうで、輸入品なので時間がかかるかと思ったら、注文翌日には自宅に着いてしまいました。ログペリアンテナの現物を見るのも初めてです。

 Wikipediaによると、ログペリとはログペリオディックアンテナの略で、対数周期アンテナと訳されるそうです。「使用可能な周波数帯域が広く、鋭い指向性があり、多数のエレメントを持つアンテナである。インピーダンスと放射の特性は励起周波数の対数関数として規則的に繰り返す。八木・宇田アンテナと同じような構造で、隣り合うエレメント同士を逆位相に給電する。隣り合うエレメントの長さと間隔は対数関数的に増加している」。難解で理解不能。緻密な数値解析で設計されるアンテナのようです。八木と違ってすべてのエレメントに逆位相給電されるところは、HB9CVと似てますが、最大の特徴は広帯域という点にあるようです。今回の2M440L5も型番の通りアマチュアバンドの145と430の両方で送信できる仕様です。

 実際のところ、広帯域アンテナの用途って何なのでしょうか。受信用ならまだしも、送信も広帯域が必要な用途?何かの測定とか・・・?アマチュア的な利点としては、1本で多バンドOKなことや、バラツキが少なく安定的に使えるところでしょうか。山岳移動で指向性のあるアンテナを複数バンド使いたいというような時は、広帯域アンテナのメリットはあるのかもしれません。
 
《仕様》
エレメント 5エレ(上下分割で10本)
送信可能周波数範囲135-155MHz、400-530MHz
受信周波数範囲110 - 1100 MHz
ゲイン144MHz帯 8.7dBi、430MHz帯9dBi
F/B比20 dB
ブーム長約0.61m 
重量約 635g
耐入力200W (FM)
コネクタM型


ELK 2M440L5の一式


 パッケージには、給電部の付いた金属製ブーム、エレメント10本、マウント部品、手持ち用のポールが1セットになっています。ブーム長は61センチなので、少し大きめのザックでないと収納できません。重さはラディックスのデイパック3エレより少し重い程度。

 10本のエレメントは、黒いカバーで覆われたアルミ製で驚くほど軽量です。1本1本色分けされて、ねじ込むようになっており、組み立てで悩むところはありませんでした。


色分けされたエレメント

ブームにねじ込んで取付け

給電部

完成


 前方に給電部(MJコネクター)があります。並行した2本の金属ブームを通して各エレメントに給電される仕組みのようですが、それぞれのフェーズラインの構造は、今ひとつわかりません。上下各5本のエレメントは微妙に位置をずらしながら並んでいます。見た目でも八木アンテナでないことはすぐわかります。作りはいかにもアメリカ的で、よく言えばおおらか、どちらかと言うと自作アンテナに近いです。

 続いてELK独自のツイストマウント方式。水平、垂直どちらにも対応します。アンテナ本体の重量を中央で支えることになるので、バランスに優れ、三脚に設置した場合の座りも良さそうです。エレメントの取付け方法と言いマウント方式と言い、常設設置よりも移動運用を前提にしたアンテナと言ってよいと思います。ただ、マスト差込み口の直径が3.3センチあります。固定方法をいろいろ考えたのですが、この部分は三脚への取付けを考えて作り直すことにしました。


付属のマウント部品(上)と塩ビパイプで作り直したマウント(下)


《AA-200での測定》
 ベランダで測定したところ、予想外の複雑な波形になりました。中心も145に合っていないし、SWRもよくありません。広帯域という感じでもないです。コネクターが緩んでいるのでは?と思い、 点検しましたが変化なし。このアンテナ、調整する部分もないので、これではお手上げですね。



 ふと、水平設置ならどうだろうと試したところ、こちらはきれいな波形になりました。145MHzを中心でSWR1.1、+-10MHz程で2.0以下。送信可能周波数範囲135-155MHzの仕様通りでした。

 この時に、同軸ケーブルの引き回しによる変化があるのでは?と思い、垂直に戻して、実験してみました。英文の説明書には、引き回し方のイラストが載っています。またアペックスラジオのホームページにも設営時の写真が掲載されています。最初はこれを参考に、給電部から緩やかに曲げた上で、ポールに沿わせてみたのですが、上記の通りで、よろしくありません。結果的には、何もしないで、ぶらりと垂れ下げて接続するのがベストでした。給電部からある程度の長さを垂れ下げるというのがポイントのようです。この状態で、145MHzを中心にSWR1.2程度、+-10MHz程で2.0以下。これらは秋月電子の青いケーブルでの実験ですが、5DFBではさらに安定しました。ケーブルの種類でも多少違うようです。


この引き回し方はNG

こちらがベスト


上の状態でのAA-200の測定(レンジ違い上中下) 

(中)

(下)

 ちなみに、受信周波数は110 - 1100MHzとたいへん広帯域ですが、送信もこの範囲で可能というわけではなく、145から430まで通してSWRフラットというわけでもありません。それぞれのバンドで個別に同調するということのようです。実際に送信できる範囲は+-5MHz程でしょうか(145MHzの場合)。430についてはアナライザーが未対応なので、別の方法でそのうち試してみます。


《トリフィールドメーターでの測定》
 垂直設置でいつもの定位置から0.8Wで送信したところ、トリフィールドメーターの針は8まで振れました。先日作った3エレ八木やHB9CVと同等。見た目は5エレですが、ログペリというのは5本全てを一つの周波数に使っているわけではないので、利得は2エレ~3エレ程度と考えてよさそうです。この点は、仕様通りの性能が出ているように思いました。


《使用感》
 ベランダで簡易的に設置してIC-910につないでみました。ラディックスの3エレ(固定)と比較しながら受信したのですが、信号の強さは3エレがわずかに上、ログペリの方は信号が弱くともそこそこ了解できる印象です。夜遅く、酒田市鳥海山移動局と59-55で交信できました(相手局10W、当局30W)。

 翌日、設営の手順など練習のつもりで、大年寺山で運用しました。ログペリ本体はけっこう重みがありますが、重心が中央にあり、三脚でもなんとかOKです。さっそくRH770と取り替えながら聞き比べました。さすがに、ログペリの方がSで2~3つくらい違います。方角を合わせると、場合によっては42だった信号が57くらいまで振ってきます。一関市、石巻市などの移動局と0.8Wでも59-59で交信できました。


 簡単に考えていたのですが、同軸の引き回しなど、けっこう手ごわいアンテナでした。米国では水平偏波での使用が多いのでしょうか?






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