日本裁判官ネットワークブログ
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 「気が置けない」とは,面白い表現だ。「気詰まりでない,気づかいしなくてよい」という意味である。「気が置けない友」というとき,「親友」とも少し違うように感じる。親友は,しゃれた上品な言葉であるだけに,なお幾分か気をつかう面が残る。「親しき仲に礼儀あり」とも言うではないか。
 私にも,気が置けない友がいる。小学校時代からの同級生である。やんちゃで結構悪ガキだった彼とは何回か喧嘩をしたこともあったが,中学,高校と進むにつれて,一層親しくなり,遊び友だちとして最高の男であった。今は,中小企業の親父として,何人もの従業員の生活が双肩にかかる身だ。面倒見のいい人柄は,昔のままで全く変わっていない。
 10年以上も前,私が刑事裁判を担当していたときのこと,甘い刑を言い渡したとして,新聞で皮肉っぽく叩かれたことがあった。気持ちが落ち込んでいるとき,たまたま,彼から電話があり,「落語の会のチケットがあるんだけど,行かないか」と誘ってくれた。喜んで一緒に行き,会場で多いに笑って,帰りに軽く飲みながら,いつものように,他愛のない話をして別れた。彼は,新聞のことなど一言も触れない。鈍感な私は,後になってようやく気がついた。「あれはオレへの励ましだったのだ!」
 子どものころから,互いの性格,行状を知り尽くしている二人に,構えるところは何もない。たまに,同級生達の噂話などを肴にして一杯飲む程度であるが,友だち思いの彼の話には,いつも心が温められる。彼との付き合いが,私の人生にとって,どれだけ励みと潤いを与えてくれたことか。
 彼から,「4月になったら,同級生を何人か誘って,琵琶湖に桜を見に行こう」と誘いがあった。うれしい話だ。
 老ジャッジにも春が待ち遠しい。(蕪勢)


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