5年位前、近所にスポーツジムが開店した。糖尿病の持病を持つ私としては、医者から運動の重要性を指摘されていたこともあって、早晩入会するつもりをしていたが、家内が早速にも(もちろん、私の不承不承ではあれ承諾を得た上であるが)、「家族会員」の入会手続を済ましてきたことに驚くとともに、無駄遣いならないかとの懸念を抱いた。
しかしながら、当初はともかくとして、半年をすぎた時点で、一番多くジムに通うようになったのは、ほかならぬ、この私である。初期の段階では、ランニングマシーン、「自転車」さらには、筋トレのマシーンにも挑戦していたが、最近はもっぱらプールである。私のメニューは、プールで20~30分泳ぎ、ジャグジーで身体をぬくめ、そのあとお風呂に入り、最後はサウナて汗をかくという段取りだ。正味1時間ないし1時間半にすぎないが、心身ともにリラックスできるので、やみつきというか「人生の習慣」のようになってしまった。
なによりも、泳ぎ出すと、なにもかも忘れるのがいいかもしれない。大江健三郎は、泳ぎながら、イエーツの、スィフトは航行をおえて休む、そこでは野蛮な腹立ちも胸を切りさくことはできぬ、世の人よ、できうるものならば模倣せよ、かれは人間の自由につかえた、といった意味の短詩をよく思い浮かべるらしい(朝日新聞昭和61年8月9日夕刊「しごとの周辺」)が、私は詩歌はもとより、目下起案中の事件のことも忘れて、ただ泳ぐだけである。それでも、スタイルの素晴らしい女性スィーマーが同じコースに現れると、胸騒ぎものであるが、そのようなことはあまりないので、多くは忘我のうちに時間がすぎてしまう。水泳の効果は抜群で、血糖値を食べる割には危険値まで上昇するのを防いでくれるし、風邪もひかなくなった。昔は、自転車がなにより好きであったが、高齢化にともない、水泳が一番になってしまった感がある。
おそらく、これからも、水泳は、私の同伴者として、これからも寄り添ってくれるであろう。もちろん、水泳の難点がないわけではない。一番の問題点は、ひと泳ぎすると、どうしてもビールが欲しくなり、その誘惑に負けてしまうからだ。そして、ビールを飲んでしまうと、水泳で筋肉をつかっているためか、たちまちに、睡魔がおそってくるのである。お酒に弱くなったせいもあるが、缶ビール一杯で、「スィーマに睡魔」と洒落をいういとまもなく、寝入ってしまうことも再三である。でも、このときの、幸福感は、何事にもかえられないほどだ。後で、やらなければならない仕事が残っているのに気付くのだが、まさにあとの祭りである。これから先、このような形で「後のまつり」を何度祝うことになるであろうか。 (風船)
しかしながら、当初はともかくとして、半年をすぎた時点で、一番多くジムに通うようになったのは、ほかならぬ、この私である。初期の段階では、ランニングマシーン、「自転車」さらには、筋トレのマシーンにも挑戦していたが、最近はもっぱらプールである。私のメニューは、プールで20~30分泳ぎ、ジャグジーで身体をぬくめ、そのあとお風呂に入り、最後はサウナて汗をかくという段取りだ。正味1時間ないし1時間半にすぎないが、心身ともにリラックスできるので、やみつきというか「人生の習慣」のようになってしまった。
なによりも、泳ぎ出すと、なにもかも忘れるのがいいかもしれない。大江健三郎は、泳ぎながら、イエーツの、スィフトは航行をおえて休む、そこでは野蛮な腹立ちも胸を切りさくことはできぬ、世の人よ、できうるものならば模倣せよ、かれは人間の自由につかえた、といった意味の短詩をよく思い浮かべるらしい(朝日新聞昭和61年8月9日夕刊「しごとの周辺」)が、私は詩歌はもとより、目下起案中の事件のことも忘れて、ただ泳ぐだけである。それでも、スタイルの素晴らしい女性スィーマーが同じコースに現れると、胸騒ぎものであるが、そのようなことはあまりないので、多くは忘我のうちに時間がすぎてしまう。水泳の効果は抜群で、血糖値を食べる割には危険値まで上昇するのを防いでくれるし、風邪もひかなくなった。昔は、自転車がなにより好きであったが、高齢化にともない、水泳が一番になってしまった感がある。
おそらく、これからも、水泳は、私の同伴者として、これからも寄り添ってくれるであろう。もちろん、水泳の難点がないわけではない。一番の問題点は、ひと泳ぎすると、どうしてもビールが欲しくなり、その誘惑に負けてしまうからだ。そして、ビールを飲んでしまうと、水泳で筋肉をつかっているためか、たちまちに、睡魔がおそってくるのである。お酒に弱くなったせいもあるが、缶ビール一杯で、「スィーマに睡魔」と洒落をいういとまもなく、寝入ってしまうことも再三である。でも、このときの、幸福感は、何事にもかえられないほどだ。後で、やらなければならない仕事が残っているのに気付くのだが、まさにあとの祭りである。これから先、このような形で「後のまつり」を何度祝うことになるであろうか。 (風船)